寝釈迦の渡し (たつの市新宮町)
 たつの市を流れる揖保川を少し遡上した嘴崎(はしさき)の地でJR姫新線の鉄橋が渡る辺りに、磨崖仏の彫られた屏風岩がある。古宮天満神社の登山口から鶴嘴山(263m)に登る掛かりに屏風岩の頂上を通る。この辺りの岩場から南を眺望すると、眼下に揖保川の清流が流れ、画のような風景が広がる。画の正面バックに連なる山並みが、お釈迦さまが仰向いて寝ている姿に似て、地元の人々は「寝釈迦」としてこの山容を拝んだようだ。山容の左端の龍野城がある鶏籠山をお釈迦さまの頭に見立て、両見峠が首、的場山から亀山にかけてのゆるやかな起伏が胸から腹にあたる。寝釈迦を拝めるこの赤色の高さ15m程の岩に2m、ほぼ等身大の地蔵菩薩が彫られている。この磨崖仏が風雨にさらされて摩耗により消えてしまうことを防ぐためにかつて架けられていた屋根の痕も残る。また、地上7m程の所に彫られているのも、対岸にある遥拝所からも拝めるようにしたためと言われ、対岸にはその遥拝所の跡も残る。人々の信仰の地であったようだ。昔、まだ橋が架かっていなかった頃、今ある嘴崎橋の近くに渡し場があった。そこにある石の碑文には、嘴崎が因幡街道の宿場町で、この渡し場で旅人は道中の平安を祈り、揖保川の流れの彼方に眺められる山塊がなす釈迦の姿に手を合わせたと記されている。
(嶋谷)
2019年8月27日号