多木浜洋館(加古川市別府町)
  山陽電鉄別府駅から真直ぐ南に下ると住吉神社の裏手に銅板で葺いた緑青の屋根と黒い壁板が魅力的な「多木浜洋館」がある。多木久米次郎が創業した多木肥料所(現多木化学)の賓客の接待に使用した多木家を象徴する迎賓館で、銅板屋根からあかがね御殿とも呼ばれた。15年の歳月をかけて1933年に完成した贅を尽くした4階建の洋館の内部は、大理石敷、壁面赤漆塗、彩色彫刻やステンドグラスなどの華麗な装飾がなされているという。国の登録有形文化財になっている。
 久米次郎はこの地で人造肥料の製造に乗り出し、化学肥料の需要の高まりの中で多種の肥料を製造し、朝鮮半島や中国大陸にも輸出を伸ばす一方、日本の植民地支配下にあった朝鮮の各地に広大な農地や山林を買い付け、農場経営にも乗り出していった。多くの朝鮮人小作人を使い収穫を伸ばし、産米を大阪、神戸で売りさばき財を成した。衆院議員を5期務めた後、貴族院議員にも列せられた。
 隣接する住吉神社の境内に銅像が立つが、台座に自ら名乗っていた「肥料王」と記した。後になって「王」の頭に点を加え、「主」として今在る。銅像は戦時の金属供出により今は無く、台座のみが存する。近くに、久米次郎自らの好みにより、朝鮮から取り寄せた黒色の墓石を使い、慶州にある新羅の国王のものを参考にして造った墓碑が、夫婦で海を背に立っている。
(嶋谷)
2019年3月26日号