蓮花寺(三木市)
 江戸山谷でのいわゆる「七分の壱の生命」裁判の3年後、三木でも「蓮花寺騒動」があった。この騒動は、蓮花寺の境内での芝居興業の際、芝居見物に来ていた部落の4人が、侮りの言葉を投げかけられた揚げ句の果て、殺傷されたという事件で、「皮多風情の儀にてこれしきのことは何事かあらん」「部落の人間七人を殺して我ら一人ゆえ、残らずたたき殺すよう」と役人が放言し、悔し涙をのんだというものである。
 この舞台となった蓮花寺が、三木から吉川への街道の中程で山の方に折れ、細い道をくねくねと山の中へ2`ほど入った山間の静寂の中にある。うっそうと樹木の覆いかぶさる30段ほどの石段を上がると、正面に本堂が荒れるがままといっていいほど放置された姿で佇んでいる。破れた板戸の隙間から中を覗いてみても、本尊の十一面観世菩薩立像らしきものも見えない。隣の鐘楼には県の重要文化財指定の室町時代初期の古鐘が吊るされているが、これも余りにも無造作に放置されている。
 本堂を取り巻く紅葉の鮮やかな朱が、見捨てられて朽ちる醜態に一時の華やかさを与えているかのようだった。久しくここを訪ねていないが、紅葉の時期が到来すると訪ねたくなる場所の1つである。