坂越浦(赤穂市)
 JR赤穂線の坂越(さこし)駅から南に千種川を渡るとすぐに石畳を敷き詰めた町並み保存道路になり、江戸時代に人々の往来を取り締まったという木戸門の跡を過ぎ、緩やかに下ると道の両側に白壁造りの蔵や屋敷など都市景観大賞にも選ばれた伝統的建造物群による江戸時代の風情が残る古い町並みが続く。江戸初期から続く造り酒屋奥藤酒造の郷土館、坂越まち並み館、赤穂藩主の休憩にも使われた坂越浦会所の先に、生島(いきしま)の浮かぶ坂越湾が広がる。鬱蒼と樹木の生い茂った生島の原生林は国指定の天然記念物。 坂越は播磨灘に位置する天然の良港で、瀬戸内往来の重要な中継地として栄えた。
 秋の勇壮な船渡御で有名な秦河勝を祀る大避神社を過ぎ、8世紀に行基が開いたという妙見寺の観音堂を一番に四国八十八カ所の観音石仏を辿り登って行くと茶臼山、宝珠山に達する。ドウダンツツジやサザンカ、ヤマモモなどが覆いかぶさるトンネルを抜けると、眼下正面遙かに家島群島、手前に生島、海上に点々と牡蛎の養殖筏が浮かぶ長閑な坂越湾が眺められる。白砂の弓状の海岸は美しく整備され、いぶし銀の屋根がまぶしい。