移情閣 (神戸市垂水区)
 山電で神戸への行き帰りの車窓から明石海峡大橋が見えてくると、その袂の松原越しに緑青色で建つ移情閣(孫文記念館)を見るのを楽しみにしている。
 明石海峡を背に舞子公園内に建つこの魅力的な中国式楼閣は、華僑の貿易商・呉錦堂の別荘「松海別荘」内に一九一五年に建てられた。「移情閣」の名は、窓から六甲山地、瀬戸内海、淡路島、四国と「移り変わる風情」を楽しめることから名付けられたとも、また呉錦堂が還暦を迎えた際故郷への思いを込めて名付けたとも言われている。
 辛亥革命の父と仰がれる孫文(孫中山)が日本に亡命していた一九一三年に神戸を訪れた際、神戸の中国人財界・有志が「松海別荘」で歓迎の昼食会をもった関わりで、孫文を顕彰する日本で唯一の博物館となり、館内には孫文の著作や遺品などの貴重な資料が展示されている。現存する日本最古のコンクリートブロック造建造物で八角形をしているが、楼閣の外観が六角形にも見えることから、地元では「舞子の六角堂」と呼ばれている。
 日中国交19周年を記念して県に寄贈され、海峡大橋の建設に伴い解体されて、南西に約200m移動して現在の位置に移築されて在る。
(嶋谷)
2013年5月21日号