- 安倍改憲阻止のため「壊憲」政治を厳しく問う1年に
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大阪労働学校・アソシエ講師 鈴田 渉■不十分なのは市民生活を守る「安全保障」
恒例の1年を表す漢字一字は、昨年は「災」。主催する漢字検定協会に寄せられた字の中で最も多かったそうだ。北海道胆振東部地震、大阪北部地震など各地の地震、西日本集中豪雨をはじめとする風水害、土砂崩れ被害など数えきれないほどの自然災害が発生した。
発生自体は現在の科学でも食い止めることはできないが、被害を少なくすることは減災・防災対策により可能だ。市民生活における「有事」に対し、発生後の復旧・復興政策を含めて、いかに取り組むべきか、国や自治体は問われる。すなわち、被災市民の願いである従前の平穏な生活を取り戻すことを一刻も早く実現させることだ。
今年の「年頭所感」の中で安倍首相は「被災者の皆様が1日でも早く心安らぐ生活を取り戻せるよう、政府一丸となって復興を進めてまいります」と言った。私を含めて誰しもこの言に異論はないだろう。問題は、口先だけで全く実効性に乏しいという事実を反省していない点だ。福島、熊本についての言及はなかったが、ただ、「被災地は力強く復興を遂げつつあります」とは言った。おそらくこれらの地域を念頭に入れたと思われる。
それでは、本当にそうなのかと問いたい。福島では原発避難地域の人たちが故郷を離れて全国各地で生活をしている。東日本大震災をはじめとするすでに生じた災害ですら十分に対応していないにもかかわらず、年頭所感でよく言ったものだ。これからも大規模自然災害がないともいえない。実際、新年早々、熊本県において震度6の地震が発生した。安倍首相は「安全保障」というフレーズをよく使うが、眼前にある、迫っている自然災害にいかに備えるか、本当の意味での「市民生活を守る安全保障」については念頭にないようだ。
■「全世代」の福祉水準の切り下げか
さらに「年頭所感」では「全ての世代が安心できるよう、社会保障制度を全世代型へと大きく転換してまいります」と言った。冒頭、指摘した被災者対応も、喫緊の課題としての社会保障政策が求められるものである。それさえ置き去りにする安倍政権が「全世代の安心な生活」へ取り組むというのは甚だ疑問である。
安倍政権がこれまで行ってきたことは、国会審議もおざなりに与党の数を背景に力づくで生活保護・医療介護、障がい者福祉政策など最も社会的に弱い立場の人に、さらに鞭を打つ制度改悪を強行したことだ。
所感では「女性も男性も、若者も高齢者も障害や難病のある方も誰もがその能力を発揮できる『一億総活躍社会』が本格始動いたします」とも言っている。つまり、「全世代型(世代間の分かち合い)」という美名の下、今度は全世代の福祉水準を切り下げるという決意を言明したということだろう。
その意味で、安倍首相の言葉の「すり替え」「論点外し」は絶妙だ。しかし、このような人物が一国の首相であることは、百害あって一利なしだと指摘したい。
■嘘とごまかしの安倍政権に審判を下す年
今年はこの嘘とごまかしの安倍政権に対する審判を下す年でもある。4月は統一地方選、7月には参院選(場合によっては衆参同時選が行われる可能性も)がある。
紙幅の関係で詳しくは触れられないが、昨年末の外国人材活用法案(改正入管法等)のように、目を覆わんばかりの国会審議の状況だ(外国人技能実習制度による来日外国人の動向調査のでたらめな政府対応、本年4月施行のための強行採決、あわせていえば与党議員の質問時間の途中放棄など)。さすがに拙速な法案成立に反対の多数世論もあってか、衆院採決にあたり、大島衆院議長が「法案の成立後、法律の全体像が明らかになった時点において政府は国会に対して説明を行う旨」の議長斡旋をした。法律の内容も詰められていないにもかかわらず、国会へ法案提出し採決成立を求める政府は一体何を考えているのか、本末転倒ではないか。
また、この間に水道民営化法案も成立させた。欧米では民営化したものの、水質問題や料金の高騰等により再公営化の流れである。日本はこうした流れに逆行して強行成立させた。このような政府与党の強引な国会運営はこの国の民主主義の危機である。たんに政治家の劣化や政治の質の低下で済ましてはいけない。
かかる状況の中で、仮に「明文改憲」の本格審議が実施され、私たちに国民投票での賛否を問われることとなれば、いかなる結果をもたらすことになるか、私はたいへんな危機感を覚える。「改憲国民投票法」の広告規制等を含む改正問題も放置できないが、こうしたことを梃に憲法審査会を始動させることは改憲勢力の思うつぼだ。
■安倍改憲阻止へ市民と野党の共闘の前進を
これを阻止するためには、来る自治体・国政選挙において、前述のような安倍政治の内容(明文改憲を射程に「壊憲」政策を遂行する、内から憲法を崩していく政治)を厳しく問い、安倍政治に終止符を打つ(=安倍改憲を阻止する)ことを必ず実現させる1年にしなくてはならない。
そのためには本気の「市民と野党の共同」は必須である。立憲野党間でも選挙政策において様々な思惑や譲れない独自政策もあり、いま選挙協力が進展していない。しかし、これまで触れてきたように安倍政権の存在そのものが、市民生活にとって取り返しのつかない害悪をもたらすという「大局的視点」に立って安倍包囲網を形成してもらいたい。 また私たち市民も傍観者ではなく、安倍政治終焉のための参画者にならなければならない。その意味で、市民と野党の共闘によって、新たな時代の幕開けとなる1年になるよう切に望みたい。