「新社会兵庫」 2018年12月11日号
 貧困と格差の拡大、社会の分裂、軍備増強と戦争志向の政治など今日の情勢に切り込み、今を問う2人の若手女性ジャーナリストの講演会が11月17日、18日と兵庫県内で相次いで開かれ、いま社会で起きていることを考える視点やそのことへの向き合い方など、示唆に富んだ発言が行われた。17日には東京新聞社会部記者の望月衣塑子さんの講演会が篠山市で、18日は西宮市でフォトジャーナリストの安田菜津紀さんの講演会が開かれ、それぞれと350人と170人が参加した。

今伝えたい真実 「民主主義の危機とジャーナリズム」
   望月衣塑子さん講演会 11.17
 市名の改名問題で揺れる篠山市で、11月17日午後、菅官房長官の記者会見で脚光を浴びている東京新聞社会部記者・望月衣塑子(いそこ)さんを講師に招いた「いま伝えたい真実〜望月衣塑子さん講演会」が四季の森生涯学習センターを会場に開かれ、350人が参加した。
 この講演会は、昨年9月に丹波市内で「木村草太さん講演会」を主催した実行委員会が名称を変更して開催したもの。参加者は、シンガーソングライター・川口真由美さんのミニライブと望月衣塑子さんのパワフルな講演に熱心に耳を傾けた。
「権力が隠そうとすることを明るみに出すことが自分のテーマ」という望月さんが、「民主主義の危機とジャーナリズム」と題して、身振り手振りを交えながら、予定時間を超えて熱く語った講演は、とても迫力があり、臨場感あふれるものとなった。
 講演では、安倍政権の下で進む武器輸出や兵器購入問題、森友・加計疑惑などについて自らの取材経験に基づいて詳しく内情が話された。
 報道の自由度ランキングによれば、日本は世界で67位となっており、安倍政権下、報道の自由度が低くなっていることも指摘された。
 望月さんは「ジャーナリズムとは、報じられたくないことを報じること。それ以外のものは広報に過ぎない」というジャーナリストの言葉を紹介し、これからも自分の五感を信じて、「権力と対峙する位置にいるか」「疑問や疑念は解消できたか」「力の弱い多くの人たちが幸せになれるか」等々をテーマに、ジャーナリストとしての自信と誇りを持って取材を続けたいと語った。
 参加者からは、「今まで聞いたことのない話だった。来てよかった」「とても早口だったが、報道の裏が詳しくわかった」「記者のエネルギーを感じた」「とても分かりやすかった」「ニュースでは流れてこない情勢がわかり、今の社会に危機感を感じた」「身振り手振りで白熱の講演。エネルギーと勇気をもらった」などの感想が寄せられた。
(川崎)
写真:350人の聴衆を前に手振り身振りを交えて熱く語った望月衣塑子さん=11月17日、篠山市民会館

写真で伝える、世界の子どもたち
   フォトジャーナリスト 安田菜津紀さん講演会 11.18
 テレビ番組「サンデーモーニング」のコメンテーターとしても活躍中のフォトジャーナリスト、安田菜津紀さんの講演会「写真で伝える、世界の子どもたち!」が11月18日、西宮市立勤労会館で開かれ、約170人が参加した。憲法を生かす阪神連絡会らでつくる実行委員会が主催した。
 川元志穂弁護士(あすわか兵庫)の司会で進められた講演会は、上原康夫弁護士(憲法を生かす阪神連絡会代表)の主催者あいさつにつづき安田菜津紀さんが登場。
 安田さんはまず、フォトジャーナリストという「写真で伝える仕事」を選んだ原点は、高校生のときにカンボジアで人身売買された子どもたちに出会ったことだと自己紹介。そして、「どんな社会を私たちはつくり、子どもたちにつないでいくのか」を、東南アジア、中東、アフリカ、そして被災地の福島で撮影した子どもたちの写真を使って伝えていきたいと述べた。
 スクリーンに映し出される写真には子どもたちの笑顔や家族と一緒の姿。だが、それを取りまく環境は、地雷の撤去にはあと100年はかかるというカンボジアの内戦の傷跡や、内戦で1200万人が家を失い、避難生活をおくるシリアの難民のくらし、そして貧困。だが、多くは人間の手で起こされた戦渦だ。そんななか、「ただ伝えるだけでいいのか」という“無力感”との葛藤にもふれ、「これも役割分担」と取材相手から諭された言葉の重みを語り、「それぞれの持ち寄り合える役割」のことを訴えた。それは、日本にいながら私たちに何ができるかということや、私たちの想像力の外への広がりを問い直すメッセージともなった。
写真:安田菜津紀さんは自らが撮影した写真を元に貧困や戦禍の中に置かれた子どもたちの姿を語った=11月18日、西宮市
神戸学生青年センター、兵庫社会労働センター、自立労連神戸支部の3者でつくる実行委員会が主催する第41回アジア労働者交流集会?神戸が、韓国から2人のゲストを迎えて11月28日、神戸市勤労会館で開かれた。
 韓国のゲストからは、金永宰(キム・ヨンジェ)がソソン里のサード撤去闘争の経過と現状を、李景子(イ・キョンジャ)さんが労働運動をめぐり、「弾力勤労制」の拡張という労働時間延長問題や新たな労働運動として注目されているライダー・ユニオンの活動や旗揚げに向けた取り組みなどを中心に報告した。
 金さんは、2016年7月に配備が決定され、翌年4月28日についに配備が強行された、韓・米・日MD(ミサイル防衛)構築のための韓国へのサード配備について、サードの強行搬入時の「決死阻止闘争」の状況などを生々しく報告。また、いまもサード撤去に向けて毎日のように展開されているソソン里の現場での日常闘争を画像を使って紹介し、たたかいの連帯を訴えた。
 李さんは、韓国で急増する配達(代行)分野産業に従事するバイク・ライダー(配達労働者)を組織する労働組合ライダー・ユニオンのことを紹介。11月13日から加入を受け付け、猛暑手当の要求や配達を拒否する作業中止権などを掲げながら来年のメーデーに旗揚げするなどと伝えた。
写真:韓国からの2人のゲストはサード撤去闘争の実情や労働運動のことを報告=11月28日、神戸市勤労会館
 I女性会議ひょうごと在日本朝鮮民主女性同盟兵庫県本部が共催する「2018平和の集い〜前川さんに聞く 朝鮮学校無償化除外問題」が11月24日、神戸市中央区の兵庫県私学会館で開かれ、オモニも含む236人が参加した。
 講師の前川喜平さん(元文部科学省事務次官)には人繋がりで今年の2月に講演の快諾を得ることができた。 I女性会議はこの間、オモニ会との交流会、朝鮮高校見学会、「蒼(そらいろ)のシンフォニー」上映会(朝高修学旅行ドキュメンタリー)、「モンダンヨンピルコンサート」(韓国のアーティストによる朝鮮学校支援コンサート)、そして今回の講演会と、女性同盟、オモニ会と一緒に取り組んできた。困難もあるが、これからも一緒に運動していきたいからと、I女性会議は在日女性の気持ちに寄り添うことを大事にしてきた。
 今回の企画は、朝高生やオモニの生の声を多くの人に聞いてほしいということが原点。前川さんのお話からなぜ無償化除外問題が起こったのかがよく理解でき、デイスカッションに繋がった。前川さんは「個人の尊厳に勝るものはない。国のために個人があるのではない」「日本に住むすべての子ども達の学習権の保障は日本政府の義務。母国語の学習の保障を」「朝鮮学校は他の外国人への先駆けだ」などと力強く語った。
朝高生やオモニからは、厳しい現状の中でも「多文化共生社会を作っていきたい」「日本人に関心を持ってもらえるように輪を広げたい」と前向きな発言があり、多くの方が涙していた。
 「明けない夜はない。出口のないトンネルはない。着実に進化している。くじけず粘り強くがんばりましょう」―。前川さんの最後の言葉に参加者全員が元気をもらえた集いだった。
(新原三恵子)
写真:(上)高校授業料無償化に関わった元文科相事務次官の前川喜平さんは朝鮮学校の無償化除外をめぐるいきさつなども語った、(下)前川喜平さんを囲んでのディスカッション=11月24日、神戸市中央区
 市民デモHYOGOは11月17日、「緊急事態条項はいらない!市民集会in神戸」を神戸市勤労会館で開き、自民党が9条改憲とともに改憲4項目の1つにあげている緊急事態条項の危険な問題点について、永井幸寿(こうじゅ)弁護士(日弁連災害復興支援委員会前委員長)の講演に改めて学んだ。
 永井弁護士は、阪神・淡路大震災から災害事案にかかわり「災害と法」に詳しく、『憲法に緊急事態条項は必要か』(岩波書店)、『よくわかる緊急事態条項Q&A』(明石書店)などの著者。各地で講演会や学習会などを開き緊急事態条項の危険性を訴えてきた。
 講演では、緊急事態条項とは国家緊急権を憲法に創設する条項であり、戦争・内乱や大規模な災害などの非常事態において人権の制限や権力の集中などを可能にする非常措置を取る権限のことと定義。かつてナチスが最も民主的とされたワイマール憲法下で国家緊急権を利用して独裁を確立した歴史がある。一方、日本国憲法は濫用の危険性から国家緊急権は憲法に規定せず、非常事態への対処には平常時から厳格な要件で相当細かく法律が整備されており、災害対策には国家の権力ではなく自治体の役割こそが重要だと強調。「災害をダシに憲法を変えてはいけない」と力説した。
写真:緊急事態条項批判の第一人者ともいわれる永井幸寿弁護士があらためてその危険性を指摘=11月17日、神戸市中央区
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新社会党兵庫県本部 2019年新春行事

 新社会党兵庫県本部(粟原富夫委員長)は、恒例の新春行事として公開講演会と新春のつどい(新年旗開き)を来年1月19日に神戸市内で開く。
 公開講演会は、「貧困・格差の是正のために〜私たちの課題」をテーマに、早くから奨学金問題やブラック企業問題などを通して貧困問題に取り組んできた大内裕和・中京大学教授を講師に迎える。いっそう深刻化する貧困・格差の実態を改めて認識しながら、その是正のためにはどういう運動上の課題や政策などが求められているのかについて問題提起を受ける。

 2019年新春公開講演会

  • 2019年1月19日(土)15時〜17時
  • ひょうご共済会館5F講堂
  • 講演「貧困と格差の是正へ〜私たちの課題」(仮題)大内裕和・中京大学教授
  • 参加費 800円
 2019年新春の集い
  • 2019年1月19日(土)18時30分〜
  • 兵庫県民会館11Fパルテホール
  • 参加費3000円
労働大学・まなぶ友の会
     2019旗開き・新春講演会
  • 1月27日(日)14時〜
  • 神戸市立総合福祉センター(JR神戸駅北)
  • 「今日の情勢と課題」川元志穂弁護士
  • 参加費 500円