- 改憲問題・今年の展望
安倍政権に終止符を打つための「国民的共同」を -
大阪労働学校・アソシエ講師/憲法・政治学 鈴田 渉■「国民的共同」の大運動に活路を
安倍政権再発足より4年余り、私たちは平和で安心して暮らしていける日々を得たであろうか。東日本大震災における福島の状況、あらゆる世代に及んできた格差と貧困の問題、戦禍に及ぶことを回避するため他国に武器をもって赴くことを禁じた憲法の平和主義・第9条を蹂躙しての安保法制(戦争法制)の強行成立、実質審議抜きでのカジノ解禁法制定と、悪政ここに極まれりというのが率直な感想である。
「暴走する安倍政権」がこの勢いを維持していけば、「明文改憲」に手が届くのはもちろんのこと、この国の行方は危いことになるだろう。それ故に、市民と安倍政治に反対するすべての政党との「共同」が必要だと指摘したい。それは単なる政党間の足し算的「野党共闘」ではなく、政治的立場を超えて安倍政治を終焉させるという一致点、すなわち「憲政の危機」を打開するために「国民的共同」の大運動に活路を見出す時ではないか。
■今後の憲法動向 今後の憲法動向について若干の私見を述べたい。与党である自公両党に加え、維新や日本のこころ等で「改憲勢力3分の2」確保とメディアで報じられているが、安倍首相の思い通りにはいかないと私はみる。安倍政権に対する支持率は確かに過半数を超えているが、個別政策的にみれば、原発問題、安保政策、景気への実感度等ことごとく否定的世論が多数である。要するに「民主党政権にはこりごりだ」、だから安倍政権支持へという世論が形成されている。したがって、改憲問題で国民の権利の制約、あるいは戦争法のごとき「違憲立法」制定(壊憲立法)を露骨かつ矢継ぎ早に行うと、一つ間違えれば政権崩壊に向かうだろう。その意味では、今年は「天皇譲位関連法」等を政争もなく成立させ、来たるべき総選挙に備えていくのではないかと思われる。そこではいうまでもなく改憲を公約に掲げてくるだろう。
■改憲の具体的標的
それでは何が改憲の標的にされてくるのかということである。自民党は「改憲草案」丸ごとから、いわゆる「お試し改憲」に矛先を変えたと考える。報道によると、自民党憲法改正推進本部(保岡興治本部長)では優先事項として以下のものをあげている。@参院選挙区の合区解消A緊急事態条項創設B環境権創設C私学助成の支出合憲の明確化D財政規律条項創設である。憲法9条は、「国会にこれを持ち出すと改憲論議が止まる」ということで、安倍首相の意向に反し外すようだ。
これらをどうみるか。率直にいって当たり障りのない項目のどさくさ紛れに、緊急事態条項や、社会保障や教育予算切り下げのお墨付きを与える財政条項など「劇薬」を仕込んでいる。この2つについてはあわよくばといった感もある。
この中で最も狙われやすいのが参院選挙区の合区解消のための改憲と私はみる。昨年の全国知事会アピールにおいても参議院には合区を解消し各都道府県の選挙区代表を配置してもらいたい、そのための抜本的改革(草案段階では改憲を含めてとあった)を要望している。「鳥取・島根」、「徳島・高知」両選挙区の投票率が芳しくなかった事例や知事会という「地方の声」を背景に一気呵成に攻勢を強めてくるおそれが多分にある。
この点について若干指摘したいのは衆参両院とも「全国民の代表」であって「参議院は地域代表の院」であるというのは誤りである。各都道府県すべてに議員を配置するなら選挙区選出議員の増員あるいは選挙制度そのものの改革により解決を図るべきである。
■危機的政治状況の認識の共有化を
締め括りにあたって何より求めたいのは、今日の危機的政治状況の認識の共有化である。野党間の選挙協力問題も一部で難航しているようであるが、果してそのようなことをいっている状況なのかと思う。かつて絶えず保革対立を繰り返してきた沖縄が、普天間基地撤去・辺野古新基地建設反対・米兵による犯罪等で「オール沖縄」体制を構築し、国政選挙では自公勢力に勝利し続けている。まさにイデオロギー対立を乗り越え、暮らし・平和・生命を守るための結集の成果といえよう。これは沖縄にだけあてはまることではない。日本全体も同様ではないか。その意味で護憲・暮らし・平和のための「国民的共同」を形成し、安倍政治に終止符を打たなくてはならないと強く思う。
- 通常国会に「共謀罪」法案
安倍政権が4度目の提出を決める -
安倍政権は、今月20日から始まった通常国会で、組織的な犯罪を計画した段階での処罰を可能とするいわゆる「共謀罪」法案を提出し、その成立をめざすことを決めた。
ただ、今回の法案では「共謀罪」を「テロ等準備罪」と名前を変え、適用対象を4年以上の懲役・禁錮の犯罪の実行を目的とする「組織的犯罪集団」に限定し、犯罪の計画を話し合うだけでなく、具体的な準備行為があってはじめて罪に問うとしているなど、成立要件を絞った形で、組織犯罪処罰法の改正案としての提出となる。
しかし、その対象となる犯罪がテロ行為だけでなく、強盗や傷害、公職選挙法にいたるまで幅広く676に及ぶもので、犯罪の実行行為がなくても処罰を可能とする点で本質的にはこれまでの「共謀罪」と何ら変わることがない。
「共謀罪」法案はこれまで小泉政権時代の2003、04、05年に計3回、国会に提出されたが、捜査当局の拡大解釈による人権侵害を生む恐れがあるなどとして、野党や世論の反対でいずれも廃案になっている極め付きの悪法だ。
今回は2020年東京五輪などでのテロ対策を強調して国民の反発を弱めようとしている。
- 通常国会に「共謀罪」法案