「新社会兵庫」 2016年7月26日号
改憲勢力3分の2超へ
 改憲発議が可能になる、改憲勢力による3分の2議席確保を許すのか否かを最大の焦点とした第24回参議院選挙は7月10日投開票で行われ、自民、公明、おおさか維新、こころの改憲4党が非改選議席を加えて3分の2となる161議席(自民の追加公認1を含む)を獲得。これに改憲志向を持つ4人の無所属議員を加えれば165議席となり、衆参両院で改憲勢力が3分の2以上を占め、憲法はかつてない危機的な局面を迎えた。選挙戦では改憲問題をまったく封印し、欺瞞的な争点隠しに徹した安倍首相は今後、改憲の動きを一段と加速するのは明白で、すでに「憲法審査会で議論を進めて改正条文の収れんを図り、国民投票で問う」などと述べている。憲法改悪を阻止し、憲法9条を守る運動はまさに正念場を迎えることとなった。

 平和憲法が大きな曲がり角に立ち、選挙の結果によっては日本が「戦争する国」へと大きく歩を進める、いわば歴史的な岐路の選択ともいえる選挙だったにもかかわらず、安倍首相は、選挙に入るや、自らの悲願とする改憲のことはまったく語らず、「この道しかない」とすでに破綻しているアベノミクスの訴えと徹底した野党批判に終始するという異常な選挙戦を展開した。そして結果は、その安倍首相の欺瞞の手法が奏功したかたちとなり、自民が50から56(追加公認1を含む)へ、公明は9から14、おおさか維新も2から7へと改憲政党はいずれも改選議席を増やした。
 しかし一方、今回の選挙は野党共闘を市民が後押しし、市民と野党の共闘という点が大きな特徴となった。32の1人区すべてで野党統一候補が実現し、立憲主義の回復と戦争法の廃止を掲げて安倍政治との攻防を際立たせた。その結果、11の選挙区で野党統一候補が勝利し、前回では野党の勝利が2だった構図を大きく変えた。まさに市民が支えた野党共闘の成果であり、この点は正しく評価されねばならない。
 ただ、新社会党が全国的に比例区で支援した社民党は議席を1つ減らし、福島みずほ副党首の1議席だけにとどまった。


兵庫選挙区 改憲派の3議席独占許す
 兵庫選挙区では、自民、公明、おおさか維新の改憲政党が今回1増えた改選3議席を独占。新社会党が推薦し、連帯兵庫みなせんや各地のみなせんなど野党共闘を目指す市民も支援した水岡俊一候補(民進・現)、金田峰生候補(共産・新)は議席には届かなかった。
 だが、兵庫の地でもかつてない市民による選挙運動への主体的な関わりや野党共闘の気運が生まれた事実は否定されるものではなく、安倍政権の独裁的な政治を止めるためには今後の衆議院選挙にもさらに発展させて引き継がねばならないとする議論と運動はすでに始まっている。

写真上左:金田峰生候補の応援演説をする小林るみ子神戸市議=神戸市灘区
写真上右:緑の党の県議らと共に水岡俊一候補のモモタローを先導するつづき徳昭尼崎市議=尼崎市
写真中左:社民党の制作宣伝車のマイクを担当するあわはら富夫神戸市議=神戸市北区
写真中右:六甲道駅前でスタンディング
写真下:永井俊作明石市議、菊地憲之兵庫9区国政対策委員長らもスタンディング=明石市
第32回反核平和の火リレー 7.12に県庁前を出発
 毎年夏の時期、核廃絶を訴え県内を走り継ぐ反核平和の火リレーは今年で第32回を迎え、7月12日、兵庫県庁前を出発した。出発にあたり、午前9時30分から県庁1号館前で出発式が行われた。
 はじめに、主催者の平和友好祭兵庫県実行委員会の北村望実行委員長(自治労県本部副青年部長)が「恒久平和を願う先輩たちのこれまでの取り組みを今後も引き継いでいく」とあいさつ。
 その後、来賓として出席した自治労県本部、県職労、黒田一美県会議員、社民党県連、新社会党県本部、部落解放同盟県連、県企画財政局の7者からつぎつぎと激励や連帯のメッセージがおくられた。 各運動団体の代表からは、前々日の厳しい参院選結果に言及し一段と危機が深まった改憲攻撃に対する運動の強化をそれぞれに訴えるあいさつが続いた。
 新社会党を代表してあいさつした菊地憲之県本部書記長も「こういう時こそ、運動の基本に立ちかえり、核廃絶の意義を足元から仲間に広げていこう。私たちの覚悟が問われている」と訴えた。
 出発式では最後に、朝鮮総連から参加した第1走者の若者が持つトーチに「平和の火」が点火され、リレーは出発した。
 リレーは西回りで県内を回り、8月8日に神戸市役所前に到着する。
写真:8月8日神戸市役所前のゴールをめざして走るリレーの出発式=7月12日、兵庫県庁前
神戸市内8区目 残るは垂水区のみに 神戸平和マップをつくる会
 戦争遺跡や戦争被害のあった現地を訪ねることで、戦争の実態を少しでも知る糸口にしたいと、フィールドワーク用につくってきた「平和マップ」の最新版の北区版(東部、西部に分かれる)がこのほど完成した。
 2012年に兵庫区版を発行して以来、長田、中央、灘、東灘、須磨、西区と刊行を続け、残るは垂水区だけとなった。
 いずれも取材・執筆してきたのは、元小学校教員の小城智子さん。教員時代に生徒たちと戦跡を巡りながら戦争を考える平和学習に取り組んできた体験から、若手教員らがフィールドワークに使えるようなものをと、「平和マップ」の作成に思い至った。
 北区版では、難工事だった神戸電鉄敷設工事で亡くなった朝鮮人労働者の名前が記載された過去帳のある興隆寺大池聖天(有野町唐櫃)や、尼崎市の子どもたちが集団疎開していた多聞寺(長尾町宅原)、唐櫃小学校(唐櫃台)、有馬小学校(有馬町)、軍に徴用されていた有馬温泉の旅館群など41カ所が写真付きで紹介されている。
 A3判。東部、西部各250円。発行元は「神戸平和マップをつくる会」(共同代表=中田政子・神戸空襲を記録する会代表、飛田雄一・神戸学生青年センター館長)。問い合わせは神戸学生青年センター TEL 078-851-2760

写真:完成した「平和マップ」北区版
 衆参両院で3分の2超の議席を占めるに至った安倍政権は今後、改憲発議への動きを加速させるのは必至だ。安倍首相は、まるで改憲がすでに当然の前提であるかのごとく、秋の臨時国会から憲法審査会で議論をすすめ改憲項目の整理を図る、とその野心を隠さない。改憲の突破口として目論まれるのが、「緊急事態条項」の憲法への盛り込みだ。安倍首相が改憲の軸にすると公然と述べている自民党改憲草案にはこの「緊急事態条項」が創設されている。一見もっともらしく受け取られそうな「緊急事態条項」には、実はきわめて危険な内容が含まれていることは、多くの識者たちが指摘してきた。今後の展開次第では初めての憲法改正のための国民投票の対象となりかねない「緊急事態条項」について、改めてその危険性を考えあい、広げたい。2回に分けて報告する。【編集部】

(1)あいまいな緊急事態条項の規定
 ではまず、緊急事態条項とは何だろうか。2012年に発表された自民党の改憲草案に盛り込まれた「緊急事態条項」では、大きく分けて、@外部からの武力攻撃、A内乱等の社会秩序の混乱、B大規模な自然災害の3つのケースが「緊急事態」として想定されている。こうした事態に際し、首相が緊急事態を宣言すれば、内閣に大きな権限を与えて内閣が法律と同じ効力を持つ政令を定めたり、首相が地方自治体首長に必要な指示を出したりすることができるなど緊急事態への対処を定めたものである。これには国の指示への国民の順守義務、すなわち人権の一部制限も含まれる。 だがここで、この規定には大きな問題が含まれている。規定があいまいなのだ。同草案の条文では「内乱等による社会秩序の混乱」と“等”という言葉によって、内乱以外のことも想定されており、例えば、テロや大規模なストライキ、あるいは深刻な経済不安などで社会が混乱した状態も含まれるのではとの疑念は否定できない。 さらに問題なのは、条項の最後には「その他の法律で定める緊急事態」とも記載されていることだ。これは、法律でこの3つ以外のケースも作り得ることを意味しており、これでは政権の思い通りに「緊急事態」が定められるおそれがある。
(2)現行法でほとんど対応できるのに
 自民党は「日本国憲法改正草案」と併せてその「Q&A集」も発表しているが、その解説では、「緊急事態条項」創設の目的を「東日本大震災のような大災害のときに、政府が迅速に動けるようにする」とある。今年の熊本地震の直後にも、政府はいち早く「緊急事態条項」の必要性に言及した。しかし、実際には多くの自治体首長や法律関係者らから、現行の災害対策基本法や災害救助法の下で、都道府県知事や市町村長の判断でほとんど対応できると指摘されている。
 さらに、日本国内での有事の事態でも今の自衛隊法や警察法で対応は可能なはずだ。なのに、なぜ「緊急事態条項」がこれほど強調されるのだろうか。自民党が改憲の突破口に、と考えるように、その創設のために、一見、もっともらしい論拠が示され、自然災害への対応、そして、そうした時の国政選挙のからみが持ち出されてくる。たとえば、たまたま選挙の時に、大災害や外部からの武力攻撃があった場合はどうするのか、あるいは、そうした事態のなかで選挙ができないまま国会議員の任期が切れるときにどうするのかというような問題が提出され、憲法では任期延長の規定はない以上、それを法律で任期を延ばすことはできないとして緊急事態条項の創設という形で憲法に加えようとしている。
(3)憲法停止を意味する緊急事態条項=国家緊急権
 重大な問題点はまだある。自民党改憲草案では、「緊急事態が宣言、発せられた場合は内閣が法律と同じ効力を持つ政令を発することができる」となっており、国会での法律の審議すらすっ飛ばして、内閣で法律と同等なルールを作ることがきるようにされている。
(以下、次号)
インフォメーション
憲法ひょうご 第13回ピースセミナー
  • 8月23日(火) 19時〜
  • 神戸市勤労会館404
  • テーマ「緊急事態条項について」
  • 講 師:羽柴 修弁護士