「新社会兵庫」 2016年7月12日号
憲法を生かす会が呼びかけ
 改憲発議が可能となる、改憲派による3分の2議席確保を許すのか否かを最大の焦点とする参議院選挙の期間中、この選挙の重大な意義をより広げ、また、戦 争法廃止と立憲主義の回復への展望を考えようと、「選挙に行こう!戦争法は廃止! 憲法を生かす市民のつどい」が7月2、3日の両日、阪神(西宮)、東播 磨(明石)、神戸の3会場で開かれ、講演に学ぶとともに、兵庫選挙区の改憲阻止の立場の候補者からの支援の訴えも受けた。呼びかけたのは、憲法を生かす会 の当該エリアのネットワーク。連帯兵庫みなせんなどが協賛し、残りの選挙期間での奮闘を誓い合った。

 3日、連帯兵庫みなせんとアベ政治を許さない市民デモKOBEが協賛して、神戸市中央区のあすてっぷKOBEで開かれた「選挙に行こう!戦争法は廃止!  憲法を生かす市民の集いin神戸」には約150人が参加し、関西大学法学部教授の高作正博さんの「戦争法廃止と立憲主義回復への展望」と題する講演に学 んだ。
 講演に先立ち、来賓の新社会党兵庫県本部の菊地憲之書記長(兵庫9区国政対策委員長)は、「何としても野党共闘の勝利で改憲派による3分の2議席確保を阻止しよう」と呼びかけた。
 講演では、高作さんはまず、安倍政権はナチスの手法に学んでいるとして、①マスメディアの制圧、②経済政策による選挙での勝利、③国内外における「敵」 の創出、④憲法破壊などの特徴を上げ、これへの危機意識をもっと広げる必要があると提起。さらに、平和を壊し、憲法を壊す安倍政権の動向として、いよいよ 動き出す「安保法制」の日常生活にも及ぶ危険性と、緊急事態条項の危険性の2つを取り上げて解説。そして、この動きを止める手段としての民主主義の意義や それが持つ陥穽についても述べた。結びとして、「民主主義による立憲主義の回復は可能か」と問い、実践、とりわけ市民運動や労働運動による継続的な闘いの 意義などを強調した。
 集会には参院選候補のみずおか俊一候補(民進党)の代理と金田峰生候補(共産党)があいさつと支援の訴えに駆けつけた。また、連帯兵庫みなせん世話人の松本誠さんやSEALDs(シールズ関西)、神戸ワーカーズユニオンの仲間からも参院選にかける思いがアピールされた。

写真上:神戸の集会には約150人が参加し、高作正博・関西大学教授の講演委学んだ=7月3日、神戸市
写真下:高作正博さん

《西宮、明石でも集会》
 2日は、午後2時から憲法を生かす阪神連絡会が呼びかけた「憲法を生かす市民の集いin阪神」が西宮勤労会館で開かれ、約60人が参加した。みなせん@西宮・芦屋と安保関連法に反対するママと家族と有志の会@西宮へんらが協賛し。
 講演は、憲法カフェのほか、参院選に向けても連帯兵庫みなせんの代表世話人の一人として精力的に講演活動やアピール活動を担ってきた川元志穂弁護士(明日の自由を守る若手弁護士の会=あすわか=所属)が「戦争法廃止・憲法改悪阻止と参議院選挙」のテーマで行い、安倍政権による立憲主義の破壊の事態や、改憲の突破口として取り沙汰される緊急事態条項の危険性などを強調した。
 講演後、一色風子(いっしきふうこ)・西宮市議や教員の仲間が参院選へのアピールを行い、みずおか俊一、金田峰生両候補からのメッセージも紹介された。
 同日午後3時からは明石市の中崎公会堂でも約90人が参加して「憲法を生かす市民の集いin東播磨」が開かれた。川元志穂弁護士が西宮につづき掛け持ち で講演。自民党改憲草案を批判し、今回の参院選の意義を熱く語った。連帯兵庫みなせん@明石準備会代表、明石市職労委員長、あかし地域ユニオン委員長、脱 原発明石・たこの会代表による連帯アピールや、みずおか俊一、金田峰生両候補の代理からの支援の訴えが続いた。
写真:西宮集会(上)、明石集会(下)はともに川元志穂弁護士が講演=7月2日
写真中:川元志穂さん
 6月12日の憲法を生かす会・西はりまの結成に続き、但馬でも新たに憲法を生かす会・但馬が結成された。以下は、同会の事務局長に就いた島田斉さんからの報告。
 6月27日、豊岡市民会館で「憲法を生かす会・但馬」の結成総会を開いた。総会と合わせて行った憲法学習会では、「明日の自由を守る若手弁護士の会(あすわか)」の與語(よご)信也弁護士を講師に、日本国憲法の本質的な意義を中心に学習した。
 但馬では、これまで有志で京丹後の米軍Xバンドレーダー基地反対行動に参加したり、「戦争法の廃止を求める2000万人署名」を街頭で取り組んだりして きたが、こうした取り組みの積み重ねの上に、ようやく生かす会の発足ができた。小さな旗揚げだが、会員を広げるとともに地道な活動ができるよう頑張ってい きたい。
 Xバンドレーダー基地のある京丹後市は豊岡市の東隣りにあり、そのまた東には高浜などの原発が林立している。それらが攻撃されれば豊岡市も放射能による 被害は免れない。集団的自衛権行使容認と時を同じくして米軍との軍事運用面の連携強化が着々と進められている現実をつぶさにして、ただ沖縄・辺野古だけに とどまらず、私たちにも腹を据えた取り組みが求められているとの思いを新たにしている。
(島田)

写真:総会と合わせて「あすわか」の與語信也弁護士を講師に憲法学習会を持った=6月27日、豊岡市民会館
堤未果講演会に1060人 6.19 神戸
 『ルポ・貧困大陸アメリカ』などの著者であるジャーナリストの堤未果さんの講演会が6月19日、神戸市中央区の神戸芸術センターで開かれ、会場を満席に する1060人が参加した。毎月の「19日行動」に取り組むアベ政治を許さない市民デモKOBEも講演会実行委員会に加わり、6月の「19日行動」として 参加態勢をつくってきた。
 「戦争は作られている?!」と題した講演で、堤さんは、自らが直に体験した米国の同時多発テロ以降の状況を伝えながら、どのようにして戦争へのステップ がつくられていくのかということを具体的な事例を挙げながら説明。そのステップとして、まずは情報統制であり、つづいて言論統制、さらに法律の改正、そし て教育、医療、福祉の切り捨ての4段階をあげた。さらに、過酷な奨学金問題や派遣労働の問題も取り上げ、「生活のために戦争へ」という「経済的徴兵制」が 進んでいくことにも言及した。
 こうして、21世紀の戦争は民営化され、戦争がビジネスになっていると総括し、今の日本が「9・11」以降のアメリカと似ていると指摘。そして、戦争を つくらせないためには、過去を見つめ、誰が儲かるのか資金の流れを見、法律に注意し、マスコミ報道を鵜呑みにせず、政治家から目を離さないことだと述べ た。
 講演後は、講演会のテーマである「未来を選ぶ」のアピールが、シールズ関西の学生や安保関連法に反対するママと有志の会@兵庫のママさん、さらに参院選を目前に控えたみずおか俊一さん(民進党)、金田峰生さん(共産党)ら6人からが次々と行われ、会場の共感を呼んだ。

写真:堤未果さん
安全保障関連法に反対する関西圏大学有志の会共同集会 6.26 西宮
 昨年、戦争法案反対のために各大学で立ち上げられ、その後も同法廃止へ活動を続けている関西圏の22の大学の「安全保障関連法に反対する有志の会」(名 称は大学ごとに異なる)が共催し、「この国に未来を築こう」実行委員会が主催した「この国に未来を築こう―安全保障関連法に反対する関西圏大学有志の会共 同集会」が6月26日、西宮市の関西学院大学上ヶ原キャンパスで開かれ、313人が参加した。
 実行委員会事務局の岩佐卓也さん(神戸大学)の開催あいさつで始まった集会の第1部は白井聡さん(京都精華大学専任講師)による「『永続敗戦レジーム』を終わらせよう」と題する講演。
 白井さんはまず参院選にふれ、「何と言っても争点は改憲への道。安倍首相は強い意志と執念で、まさに自民党改憲草案を内容とする改憲を目指して3分の2 議席確保をねらっている。これを止めるためには安倍首相を上回る強い意志を形成するしかない」と強調。その安倍政治が立脚する今の時代認識として、福島第 一原発事故をめぐるような、劇的で全面的な劣化が表面化し、「平和と繁栄」から「戦争と衰退」へと時代は反転していることを指摘。その根底に、政治学者の 丸山眞男が説いたような「無責任の体系」の上に敗戦をあいまい化し、否認することによって成り立たせてきた戦後があり、戦争への責任や反省がないまま“負 け続ける”「永続敗戦」があると述べた。そして、安倍首相の言う「戦後レジームからの脱却」の内実は敗戦の否認の徹底化であり、その集大成こそ戦後憲法の 3大原則を否定する改憲だとして「永続敗戦レジーム」を倒す勢力の形成をと訴えた。
 第2部はリレートーク。シールズ関西、安全保障関連法に反対するママと有志の会@兵庫、甲東平和の会の代表を皮切りに、参加した19の大学の有志の会の代表からそれぞれの活動報告や訴えが続き、最後には集会アピールを採択して4時間半を超える集会を終えた。

写真上:参加した19の大学の有志の会や市民が次々とアピールした=6月26日、西宮市
写真下:白井聡さん