「新社会兵庫」 1月21日号
地域から草の根運動の一歩を
新社会党兵庫県本部 委員長 粟原富夫(神戸市会議員)
 昨年は「巳年」。「変革の年」の期待はものの見事に裏切られ、日本の政治は「決められない政治」から「やりたい放題政治」になってしまった。国会での圧倒的多数を背景に、安倍政権による傲慢な政治が際立つようになっている。今年は「午年」。本来は「飛躍の年」なのだが、そうは感じられないのは私だけだろうか。
 昨年、アベノミクスで安倍政権が参院選で大勝した。国民が期待したのは経済対策だったが、国会では特定秘密保護法案の強行採決、日本版NSC設置法案の可決・成立、そしていよいよ今年には集団的自衛権の行使を前提にした国家安全保障基本法案が出てくる。経済対策や東日本大震災への被災者支援、原発事故対策などは後回しだ。これでは、国民が政権に期待したものとは大きくかけ離れてきている。自民党の支持者からでさえ「『戦争のできる国』どころか、安倍さんが目指しているのは『戦争をしたい国』ではないのか」との懸念の声が上がっている。
 戦前を知る人々から「いつか来た道」への懸念が広がるのは当然だ。憲法を変えなくてもアメリカの戦争に日本が参戦できるようになるのだ。昨年暮れのスーダンでの韓国軍への自衛隊の銃弾の提供は、国会に諮られることなく、日本版NSC法の下、首相以下数名の大臣だけで決められた。アメリカからまで反発を招いた首相の靖国神社への参拝は、中国や韓国・北朝鮮との国際的緊張をさらに高めるもので、尖閣問題などで何が起こってもおかしくない状況だ。安倍首相が意図的に緊張をつくり出し、国民を扇動している。
 安倍首相の言う「積極的平和主義」とは国際紛争への積極的関与であり、世界のどこへでも自衛隊を派遣することだ。本来は、軍事力を過信した「積極的平和主義」でなく、非軍事に徹した「積極平和」で周辺国との平和関係を構築し、沖縄での米軍事基地撤去にこそ全力をあげるべきである。
 さて、4月からは消費税が8%になる。すでに、公共交通機関を中心に運賃への転嫁が公表され、郵便料金など軒並みの値上げ公表ラッシュだ。前回の消費税増税時は、公共料金への転嫁はかなり見送られた。それでも、空前のデフレ不況となった。とりわけ生活弱者へのしわ寄せは決定的だ。ところが、大企業には、復興特別法人税は前倒しで廃止した上に、交際費を大きく減税すると言うのである。いくら法人税減税を繰り返しても、これが勤労者の所得アップにつながるとは思えない。リストラ資金と大企業の内部留保金を増やすだけだ。将来の日本を考えるなら若者の不安定雇用や、高齢者の将来不安を解消する制度づくりこそが大切である。
 特定秘密保護法の成立過程を見ても、現在、国会の議論に期待することは難しい状況である。もう一度、地域からの草の根の運動を一歩からつくり上げてゆく決意の年にしたい。
写真:強行成立への怒りを忘れず廃止へ闘い続ける―。特定秘密保護法案の廃案に向けて取り組んだ座り込み行動=13年、12月4日、神戸市三宮
平和憲法を守る12.16兵庫県集会
 平和憲法を守る兵庫県連絡会(呼びかけ団体=自治労兵庫県本部、兵庫県医療労働組合連合会、全港湾関西地本、神戸新聞デイリースポーツ労組、平和のための市民行動の5団体)は12月16日、「平和憲法を守る兵庫県集会」を兵庫県民会館で開いた。約200人が参加した。
 集会では上脇博之(かみわきひろし)さん(神戸学院大学教授)の「安倍政権の憲法破壊と私たちの課題」と題する講演を受け、安倍政権・改憲勢力による今日の憲法破壊の流れを学び、今後の運動の方向性などについて考えあった。
 上脇さんは、「日本版NSC」設置や特定秘密保護法などが制定されたことによってアメリカの戦争に参戦するための統治システムが構築されたとして、次はアメリカの戦争への参戦を「合憲」する「解釈改憲」を進め、さらにアメリカの戦争への参戦のための手続きなどを定める「立法改憲」を行い、その次に96条明文改憲、そして最終的に9条などの明文改憲を目論んでいると指摘。
 そして、今年の改憲情勢として、「解釈改憲」「立法改憲」が焦点だと指摘し、安保法制懇に集団的自衛権行使容認の報告書を提出させ、集団的自衛権を行使するための法的手続きを定める基本法である「国家安全保障基本法」の制定をめざすとした。さらに、自衛隊の海外派兵がいつでも可能になる「国際平和協力法」の制定も画策されていることを指摘した。
 また、秘密保護法廃止への展望として、こうした解釈改憲、立法改憲を今後の運動で阻止したならば、秘密保護法は不要になるはずと提起した。
 講演後は、緊急アピールとして「兵庫県弁護士9条の会」の羽柴修弁護士が秘密保護法廃止に向けた運動を呼びかけた。最後に「秘密保護法の廃止や国家安全保障基本法案に反対するたたかいを強め、平和憲法を守ろう」との集会アピールを採択して閉会した。
写真上:上脇博之神戸学院大学教授
写真下:安倍政権による憲法破壊の流れを見つめそれへの反撃を考えた集会=12月16日、神戸市
3.21に集団的自衛権問題で講演会
 「戦争ができる国」へ安倍・自公政権による憲法破壊=壊憲≠フ暴走に拍車がかかる。昨年の臨時国会で国家安全保障会議(日本版NSC)設置法、特定秘密保護法を強行可決・成立させたのち、年末には集団的自衛権の行使容認を視野に、「国家安全保障戦略」「新防衛大綱」「中期防衛力整備計画」を決定、いよいよ集団的自衛権行使容認への憲法解釈の変更で、9条の実質改憲へとつき進もうとしている。それを織り込んだ国家安全保障基本法案をめぐる攻防が大きな正念場になる。
 こうした動きに対抗できる運動を強めようと、兵庫県内の各地の「憲法を生かす会」がそれぞれの活動の強化を決意する一方、相互の交流や連携も強めながら運動の輪をさらに広げるためのネットワークづくりの準備を進めている。「憲法を生かす会・ひょうごネット」(仮称)の結成だ。
 各地域での「憲法を生かす会」の結成が広がったのは、2005年、結党50年を迎えた自民党が新憲法草案を準備し、9月の総選挙では小泉・自民党が圧勝、改憲発議が可能となる議席を与党で獲得したときを前後する時期だ。地域から草の根的な憲法を守り生かす大衆運動を広げ、改憲の動きに対抗する勢力をつくろうと新社会党の党員らが中心になって各地で結成が続いた。04年12月に垂水区で、05年3月には灘区、8月に須磨区、11月は北区で結成された。その後、地域の条件や力量に応じて学習会、講演会、街頭宣伝行動などさまざまな活動を積み上げている。
 さらに、4年前には西神戸地域の「生かす会」が「連絡会」を立ち上げ、その主催によって規模を大きくした映画会に取り組み、成果をあげた。
 こうした経験やそのなかでの成果も踏まえ、県下的なネットワークづくりの準備が始まった。昨年10月に第1回の準備会を開き、その準備会の主催で福島第一原発事故のルポを書いた神戸新聞記者の報告会を開催した。
 さらに準備会を重ね、3月には集団的自衛権問題に焦点をあてた講演会を開催し、この取り組みを踏まえて「ひょうごネット」を結成する運びだ。
写真:安倍政権の“戦争国家”への暴走に抗議
「憲法改正問題に関する懇談会
 2006年11月にワールド記念ホールに7500人が結集した集会「はばたけ!9条の心」を主催した5団体の呼びかけで「憲法改正問題に関する懇談会」が発足。12年秋から懇談を重ね、県下の平和憲法を守る運動についての情報交換などを行なってきているが、このたび交流会を呼びかけ、各地域での運動・情報を交流しながら憲法闘争の強化を図る。
●日時=2月9日(日)13時〜17時
●場所=あすてっぷKOBE・セミナー1・2号室
●内容=情勢報告と交流 @報告「安倍政権の壊憲路線と私たちの課題」(兵庫県弁護士9条の会・事務局)A「9条の会」他各団体からの運動の取り組み報告や意見交換
京丹後市で“人間の鎖”行動
 京都府の北部にある京丹後市役所前の広場で「米も魚もおいしい経が岬に米軍Xバンドレーダー基地はいらない!」というシュプレヒコールが寒い雨空に鳴り響いた。
 航空自衛隊基地への米軍基地建設に反対する地元住民らが昨年12月15日午後、市役所を囲む「人間の鎖」を行い、周辺をデモ行進した。予定基地周辺の住民でつくる「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」が呼びかけ、京都府を中心に近畿各府県から約1000人が参加した。
 昨年2月に日米首脳会談で京丹後市の経が岬に米軍基地設置を決定、9月に市長も府知事も受け入れを表明、常駐の防衛省職員2人は地権者を札束で殴るように予定地借り上げに走っている。1反年1万円ほどの評価額の土地を30万円で借り上げる暴力≠ェ続く。
 Xバンドレーダーとは、アメリカ本土の弾道弾ミサイル防衛の目や頭脳となるもので、日本の防衛とは無関係である。イラク戦争で米軍戦闘機が最初に攻撃したのはレーダーであった。
 「有志の会」代表の三野みつるさんは「国や市は住民の求める環境評価や十分な説明を無視している。防衛大臣が来年の配備を明言するなど市民置き去りだ」と批判した。同会事務局長の永井友昭さんは「今日も機動隊で現地には入れなかった。土地もほぼ確保したと言っているが、国、府、市への反対を申入れ、説明責任を求めていく」と決意を表明した。
(K)
写真:近畿に新たな米軍基地はつくらせないと京都周辺からも行動に結集=12月15日、京丹後市
「労働法制総破壊に反対する共同アクション」を立ち上げ
 安倍政権は、改憲のみならず、労働法制の分野でも規制緩和を軸に改悪を進め、「働くものの権利・生活の破壊」へ暴走している。
 厚労省・労働政策審議会で昨年末には結論が出なかった労働者派遣法の自由化は今月中にその内容が明らかになり、今通常国会に「改正法」が上程されようとしている。
 その他、労働時間規制の緩和・撤廃、解雇の金銭解決、有料職業紹介の緩和、限定正社員の創設など矢継ぎ早な労働法制の全面的な見直しを画策、特定秘密保護法案と同様、与党多数の国会での強行採決も予想される。
 そうした状況のなか、ナショナルセンターを超えて「安倍政権の雇用破壊に反対する共同アクション(雇用共同アクション)」が昨年10月、中央段階で結成された。
 このような動きに呼応し、兵庫県でもひょうご労働法律センター、NPOひょうご労働安全衛生センター、ひょうご地域労働運動連絡会、全港湾神戸支部、ひょうごユニオンの5者が呼びかけて、「労働法制総破壊に反対する共同アクション」を立ち上げる。その結成総会は1月27日、神戸市勤労会館で開かれ、川口美貴さん(関西大学大学院教授)が記念講演を行い、派遣法の自由化を柱とする労働法制の大改悪の全容を明らかにし、労働者、労働組合の今後の取り組み課題を提起する。
 同実行委員会では、広範な労働者・労働組合へのオルグ行動、労働者に事態の深刻さを広げていく県下統一の宣伝行動、労働組合や地域での学習会の開催、労働法制改悪反対の署名行動、ヤマ場での反対集会などの取り組みを予定し、全力をあげる。
 労働法制大改悪に反対する労働者の声を、兵庫県内でもどれだけ大きくできるか、今年の大きな運動課題である。
(K)
西垣迪世(みちよ)さん(過労死を考える家族の会)にインタビュー
 昨年の臨時国会では特定秘密保護法案が強行可決されたが、過労死防止基本法は与党との手続きが遅れ、継続審議となった。過労死防止基本法制定実行委員がこの2年間で100万人を目標に集めた制定署名約52万筆を国会に提出、基本法制定を実現する衆参124議員による超党派の議員連盟が取り組みを進めている。
 実行委員会の構成組織である「過労死を考える家族の会」の西垣迪世(みちよ)さん(神戸市)に基本法制定の必要性や内容、今後の取り組みについて尋ねた。
(菊地)
―なぜ過労死を考える会の活動を始められたのか?
西垣 7年前、神奈川県でシステムエンジニアとして働いていた息子が27歳で亡くなった。授業中(当時、教員)に知らせを受け、病院に駆け付けたが、息子はもう冷たかった。息子は専門的技術が高いため地デジシステムの開発事業の即戦力に。納期のプレッシャーにより深夜はもちろん、早朝まで37時間連続勤務を強いられた。睡眠障害からうつ病になり、休職、復職を繰り返していたが、過量服薬で亡くなった。
 人間扱いされていないという思いから多くの方々に支えられた裁判により労働災害認定を勝ち取った。裁判すべきか迷った折に「家族の会」に支えてもらった。今は後に続く遺族を支えながら、命より大切な仕事があるのかと考えさせられ、過酷な職場で働いている若者たちの過労死・自死をなくすために過労死防止基本法制定を求めて活動している。
―基本法とはどのようなものか。臨時国会での取り組みは?
西垣 私たちが求める基本法は、@過労死はあってはならないことを国が宣言する、A過労死をなくすための国・自治体・事業主の責務を明確にする、B国は過労死に関する調査・研究を行うとともに、総合的な対策を行う、ということが柱となっている。
 超党派の議員連盟は昨年12月3日、総会を開き、民主党など野党6党で翌4日に法案を衆院に共同提出した。法案は継続審議とし、通常国会では与党の自民、公明との修正協議により成立をめざしている。自民党はワーキングチームで経団連、厚労省などへのヒヤリングを行い慎重に対応をしている。
 
私は昨年10月下旬から12月上旬まで法案提出などの活動のために東京に常駐していた。 ―兵庫県ではどんな活動をしているのか?
西垣 「家族の会」は、過労死のない社会をめざして過労死防止基本法制定100万人署名の取り組みを進めてきた。連合兵庫など労働組合にも協力を要請した。隔月第4金曜日に三宮駅、元町大丸前、神戸駅などの街頭で署名活動を続けてきた。兵庫では約7万人の署名を集約した。
 また、基本法制定の地方議会での意見書採択の取り組みも進めている。一昨年10月に神戸市、昨年6月に兵庫県、10月に篠山市、12月に姫路市、西宮市、芦屋市、三田市と採択できた。全国で74自治体となる。今年は3月に豊岡市と新温泉町での採択をめざしている。
―今年の制定の取り組みに向けた意気込みは?
西垣 この基本法は、そのうち成立すれば良いという法律ではない。過労死・自死の正確な人数は政府も調査はしていないが、過労自死は20代、30代の若者が約半数を占めている。基本法の制定に向けて今後も100万人署名の拡大、賛同する議員の拡大、地方議会での意見書採択、宣伝活動により世論を高める取り組みに全力をあげていきたい。息子の死を無駄にせず一人でも多くの方の命を救うためにも一刻も早く法を成立させたい。
写真上:インタビューに答える西垣迪世さん
写真下:基本法制定を求める署名行動の西垣さん
憲法を生かす会・灘が開催 12.20
 憲法を生かす会・灘は昨年12月20日、神戸大学大学院教授の山内知也さんを招き、「フクシマいま見えてきたこと」と題した講演会を神戸学生青年センターで行った。
 山内さんは原発事故後、福島市や二本松、伊達などの放射線量を調査。「屋根の葺き替えが必要」など個別のアドバイスも重ね、「子どもや妊婦は避難を」と呼びかけている。山内教授の調査と提言も1000日となる。
 講演では以下のことなどを報告、指摘した。
・いま、毎日300億Bqのセシウムとストロンチウムが太平洋に流出している。
・福島の子どもの甲状腺がん検査で、悪性・悪性疑いが58人。だが、受診率は73・6%で、単純比例計算では78人に。100万人あたり326人の可能性がある。
・処理ができず「放出検討中」のトリチウムとは放射性水素で、水の分子と一緒に細胞の奥深くまで入り込み破壊する。米国の市民団体の調査では、原発の日常的運転で周辺から子どもの脳腫瘍や白血病が増加している。
 講演会では、和田山での保養キャンプに参加し、いまも母子避難の子どもに神戸から勉強机を贈っている田中英雄さん(ちびくろ保育園)から呼びかけがあり、参加者は賛同カンパを託した。
(I)
写真:福島の放射線計測にもとづいて「放射能から子どもを守ろう」と運動にも取り組む山内和也神戸大学教授の講演会=12月20日、神戸市
あかし地域ユニオンが開く
 あかし地域ユニオン(西山和宏委員長)は12月15日、結成15周年を記念するパーティを明石市内のホテルで開き、組合員をはじめ、お祝いにかけつけた来賓や他の地域ユニオンの仲間ら約60人が参加した。
 集いの冒頭、西山委員長があいさつし、「1999年2月に10数人の組合員で出発、この15年間に約700件の相談があり、約500人が組合に加入した」と15年を振り返るとともに、「15年の歩みをしっかり総括し、次への前進を図りたい」と決意を述べた。
 来賓の明石地労協人権平和センター、ひょうごユニオン、コミュニティ・ユニオン全国ネットワークの代表のあいさつののちに乾杯。テーブルごとに和やかに歓談が行なわれるなか、15年の歩みを振り返る映像が映し出された。これまでのストライキや抗議行動などの懐かしい映像が流れ、改めて「15年は闘争の歴史であった」ことを再確認。三線と沖縄の歌の演奏やラフター・ヨガの「心身体操」も登場し、場をいっそう盛り上げた。
 県下の各地域ユニオンや全港湾神戸支部などからも連帯のあいさつが続き、東亜外業分会からは勝利的な和解で結着した闘争の報告と支援への感謝が述べられた。
写真:15年間で約700件の相談があったとあいさつする西山和宏委員長=12月15日、明石市

東亜外業分会が和解 12.15に闘争報告集会
 不当な整理解雇の撤回を求めて闘っていたあかし地域ユニオン東亜外業分会の裁判闘争は、念願の現職復帰は叶わなかったが、昨年11月12日、大阪高裁で和解という形で結着。同ユニオン結成15周年記念パーティに先立ち、その闘争報告集会が持たれた。集会では「支援する会」から闘争の経過報告や総括、代理人の上原康夫弁護士からも解説的な報告があり、出席した支援者らからは感想などを含めて連帯と労いの言葉が贈られた。
強まる国家主義教育への流れ 愛国心の強要と愛国者の育成だ
労働大学副学長 今村 稔
今村稔さん
 よく目立つ「国」「競」「強」等の言葉
 最近、新聞でお目をかかる語に「国家」「競争」「強」等が多くなったように感じる。気のせいだろうか。安倍首相がさかんに使うからだろうか。
 産業競争力会議、国家安全保障会議、国家戦略特区……、はては国土強靭化。国土強靭化などは、無理矢理「国」と「強」を入れたかったのか、仰々しい。われわれが日常接する漢字の中でも、これらの文字はそこに含まれる語意ともども、知らず知らず間に身体に沁み込んでしまうのではないかと思われる。
 そのようなことを考えると、昔聞いたアメリカの映画館の話がふと浮かんでくる。
 まだフィルムで映写していた頃であるが、映写する連続フィルムの間に「○○ジュース」と書いた一コマを、ある間隔をおいて入れこんでおく。「○○ジュース」は定期的な間隔で瞬間映写されるが、人間の目には感知できない。しかし、脳はその刺激を受けている。休憩時間に「○○ジュース」は普段以上に売れたという。見たという自覚(認識)はなくても、瞬時の「○○ジュース」の映像は、脳髄を刺激し蓄積されていたのである。
 心理学には特別の術語があるのであろうが、このやり方は、耐えられないほどの負担を脳に与えるということで禁止されたという。これほどではないにしても、われわれも「国家」とか「競争」等の言葉に、日常的にことさらの警戒なしに接していると、それらは肯定、親近的なものとして脳裡に焼きついてしまうかもしれない。
 歴史学の変遷
 文科省(下村大臣は格段の安倍派)は、高校の教科で日本史を選択から必修に変える方向で動いている。まだ日本国憲法が学校教育で輝いていた5、60年前、日本史は選択科目であったが、戦前戦中の皇国史観の垢を洗い流し、戦争の反省をしっかりとし、平和を希求して進むことに誇りをもたせる教科であった。歴史を学ぶことは進歩を希求することというのが常識となっていた。高校でも大学でも、そして学会でも歴史研究会(歴研)は社会科学研究会(社研)と並んで、科学的真理を求めてやまない学究や学徒の集まりであった。
 選択科目を必修科目に変えるということは、学ぶことを生徒に強制することということであるが、文科省の意図はもちろん5、60年前の歴史研究の勢いを延長しようということではない。今、安倍や自民党が壊憲・国家主義の流れをつくりだそうと懸命であることをみる時、文科省の狙いはそこに棹さそうとするものであることは明らかである。
 戦前、「歴史学」は科学であることを許されず、つねに国家の下僕であることを強いられてきた。学問研究の最高峰であるはずの帝大系の各大学では、日本史学科とはいわれず国史学科、つまり栄えある(日本の)国家の歴史を研究するものとされてきた。国史という呼び方は小学校(戦時は国民学校)にいたるまで共通であったし、副読本は「国の光」であった。ご丁寧にも「光」までつき、国家は光り輝かなければならないと教えられた。
 民主主義を柱とした日本国憲法は、立憲主義の立場に立ち、国民は国家の下僕という明治の大日本帝国憲法から、国家は国民によって縛られなければならないことを明らかにした。歴史学も国家の下僕であることから解放され、国民、社会の歴史を研究するという学問本来の立場に立つことになった。
 「国に誇りを持て」
 安倍首相は、国(国家)に誇りを持ち、国を愛する国民をつくりだすことが教育の本義であると、ことあるごとに発言しているが、日本史を高校において必修にしようとすることは、そのためのひとつの扉を開くことである。日本史を必修にするということは、選択か必修かの問題にとどまるものではない。日本国民としてのアイデンティティを持て、つまり、人間や個人の尊厳ではなく、国家の一員であることに誇りを持てということである。国家のすばらしさを日本史で学べということである。また、そのための必修(強制)となるであろう。
 阪神・淡路大震災から19年が経つ。
 県や各自治体が20年契約で民間から借り上げた復興公営住宅の契約期限切れが2015年から始まるが、多くの行政は住み続けたいという入居者の思いを無視し、新たな選別を行いながら住み替えを迫ろうとしている。災害復興住宅の高齢化率は49・2%と過去最高を記録しており、多くが終の棲家として入居し、このまま住み続けたいと考えている。仮設に入るときにも選別され、復興住宅に入るときにも選別され、そのたびに心に大きな傷を受け、またもや選別されるのでは被災者にはあまりにも過酷である。希望者全員の継続居住を認めるべきだ。
 さらに、復興市街地再開発事業でも多くの問題が浮き彫りになっている。新長田南地区再開発事業は保有床の処分が進まず、起債償還もままならず、失敗に終わっている。また、管理方式をめぐり、区分所有者たちの反乱で、開発者である神戸市は有効な対策をとりえていない。神戸市は地元住民の意見を十分尊重しながら事業のあり方を見直すべきだ。
 まもなく東日本大震災から3年を迎えるが、いまだ多くの被害をもたらし続けている原発災害は、原発と人類は共存できないことを示した。しかし、安倍政権は被災者の苦しみに耳を傾けず、海外へは原発輸出を進め、国内では再稼働につき進んでいる。今こそ原発に頼らない社会・経済構造の実現が求められている。
 また、阪神・淡路大震災の教訓や運動をもとにつくられた「被災者生活再建支援法」は、対象者は全壊・大規模半壊のみで、半壊以下世帯の救済は盛り込まれていない。さらに一定基準以下の小規模災害には適用されず、その見直しは支給金額も含め今後の大きな課題として残されている。
 今、安倍政権は「新防衛大綱」などで軍事費を大幅に増やし、憲法解釈変更による集団的自衛権行使容認を画策、いつでも自衛隊を海外に派兵できるよう目論んでいる。
 地球温暖化の影響などで、世界中で大規模自然災害が相次ぐ中、昨年はフィリピンの台風被害で6000人以上が犠牲になった。いま日本がやるべきことは、戦争をするための憲法改悪や軍事力増強ではなく、海外にも緊急展開できる大規模・総合的な消防・救助能力を持つ、非軍事の「災害救助隊」の創設である。
 来年は震災20年という大きな節目の年だ。新社会党は今後も被災者の立場に立った震災復興の再検証を市民とともに進め、脱原発社会の実現、くらしの再生をめざし、多くの皆さんと手を携え全力で奮闘する決意である。
2014年1月17日
新社会党兵庫県本部
インフォメーション

■講演会
 「国家安全保障基本法」と「集団的自衛権問題」を考える

  • 3月21日(金・祝)13:30(予定)
  • 神戸市勤労会館 308号
  • 講師:高作正博 関西大学教授
  • 主催:憲法を生かす会・ひょうごネット(準)