- 大内裕和中京大学教授が問題提起
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いまや「教育ローン」化した奨学金制度で年収の数倍の返済額を抱え、長引く不況や就職難で返済に困窮している若者が急増している。こうしたなか、「もはや奨学金問題を見過ごせない」と題する集いが3月24日、大阪市内で開かれ、早くから奨学金問題について問題提起と運動の提唱を行なっている大内裕和・中京大学国際教養学部教授の講演に学び、返済困難者の救済策や奨学金制度の抜本的な改善などについて考えた。 「2013緊急ゼミナールin近畿」で講演した大内さんは3月31日に結成された「奨学金問題対策全国会議」の呼びかけ人の1人で共同代表を務める。
「いま大学で一番学生が多く集まる場は文化祭ではなく、奨学金制度の説明会だ」―こんな切り出しで大内さんの講演が始まるほど奨学金の受給者は多く、2010年には全大学生の5割を突破した。だが、かつての日本育英会時代からは制度は著しく変化し、日本学生支援機構となったいまは有利子貸与型(第二種奨学金)が圧倒的に多く、無利子奨学金38万人、有利子奨学金96万人だ(12年度)。利率は上限年3%。07年からは民間資金が導入された。例えば、第二種奨学金を毎月10万円借りたとすると貸与総額480万円。利率が3%で返済総額は約646万円となる。月賦返済額が26914円で、返還年数が20年。問題は返済が滞ったときだ。延滞金が年利10%で、延滞金発生後の返済では、先ず延滞金の支払いに充当され、ついで利息、そして最後に元本と、返済の「蟻地獄」に落ち込む。現実に、大学卒業後の就職難の拡大に伴い奨学金返済の困難者が急増している。裁判所を使った「支払督促」の申立件数は11年には1万件と7年間で50倍に拡大した。
大内さんは、奨学金の現在の問題点として、卒業後の返済の困難さから大学卒業後の人生を左右し、結婚・出産・子育てにまで影響していると指摘。奨学金の課題として、@一定収入以下の人への返済猶予・免除、特に猶予5年の上限を撤廃し、本人収入基準にA有利子奨学金を無利子奨学金にB給付型奨学金の導入などを提起した。
そして、こうした課題の実現へ、返済困難者の救済や制度の改善のために奨学金問題を社会問題化しようと訴えた。さらに、この運動が反貧困運動、新自由主義批判の運動として、既存の社会運動(市民運動、労働運動)が若年層との接点をつくる意義と可能性を持つことも強調した。写真上:弁護士、自治体議員、活動家のほか生徒の保護者らも奨学金制度のあり方を考えた「緊急ゼミナールin近畿」=3月24日、大阪市
写真下:講演する大内裕和さん=3月24日、大阪市