「新社会兵庫」 11月8日号
講演と職場報告で交流
 第15回働く女性の交流集会が10月22日、「立ち上がれ女性労働者!楽しく生き生きと働き続けるために」をテーマに兵庫県民会館で開かれた。主催は集会実行委員会。集会では、職場報告と中野麻美弁護士による講演が行なわれ、交流を深めながら、厳しい雇用・労働環境が押し付けられるなかで、人間らしい労働のあり方についてあらためて考えあった。

 集会では6つの職場報告が行なわれた。13年におよぶ裁判闘争を経て9年前に職場復帰した神戸ワーカーズユニオン恵泉寮分会の職場の状況。あかし地域ユニオンからはパワハラ、セクハラとの闘いの報告。自治労の病院職場からは、正規、派遣、パート、アルバイトと様々な雇用形態のなかで事前の準備やシミュレーションが不十分なまま業務が始まり、職員には疲労が続き、患者優先にはなっていない実態が報告された。ユニオンあしやは、LSA(生活支援員)というモデル事業をめぐり、正規職員、日給職員、臨時職員間で差別があるとして闘っていると報告。社保労連は、正規職員は3分の1以下という中で、非正規職員は書類審査だけでなく年金相談業務まで担いながら、それが習熟する頃には有期契約雇用でリセットされるという悔しい実態に、同じ職場で働く労働者として一つの組合で闘っていきたいと報告。加西市職員ユニオンは、雇用継続を実現させた経験をもとに組合の大切さを訴えた。
 これらの職場報告を受けて講演した中野麻美弁護士は、「皆さんのがんばりに励まされた」と述べながら、労働情勢の特徴としてまず貧困の深刻化を指摘。ある調査では可処分所得中央値は224万円で、その半分の年収112万円以下が世帯人員の16%になっていることや母子世帯の貧困率は65%と、アメリカにつぐ貧困率であることを紹介。さらに、非正規雇用の拡大による労働市場の二極化の問題を取り上げ、2000年代には年収150万円未満の労働者が、男性で10人に1人、女性では2人に1人にまでなっており、今では子どもの貧困化、教育の格差も深刻で、数年前は就学援助児童生徒が76万人だと問題になったが、いまや155万人にまで拡大しているとことも紹介した。
 最後に、いまの労働のあり方を考える上で、「大事なのは〝人〟だ。〝仕事を、雇用を〟というが、仕事ってなんだろう、と考えてほしい。しっかりした雇用主がいる。よい雇用主をつくるのは、労働組合の仕事。労働時間の規制を守らせ、労働のルールを守らせることが大事だ」と指摘。「労働組合にとって、職場をよくすることが不可欠。労働者が社会の主人公となるためには、政治的に力をつけなくてはいけない。もっと政治的なことや社会を変えることも勉強しなくてはいけない」などと訴えた。

写真:集会では中野麻美弁護士による講演のほか6つの職場報告が行われて交流を深めた=10月22日、兵庫県民会館
和田進・神戸大学教授が講演
 平和憲法を守る兵庫県連絡会(呼びかけ団体・自治労兵庫県本部や兵庫県医労連など5団体。57賛同団体)が呼びかけた「10・21国際反戦デー兵庫県集会」が10月21日、兵庫県民会館で開かれ、民主党政権下で昨年12月に決定された危険な「新防衛計画の大綱」について学んだ。
 昨年に引き続き今年も屋内での講演会として催された集会では、「専守防衛から動的防衛へ―新防衛大綱を斬る―」と題する和田進・神戸大学教授の講演を聴いた。
 従来の「基盤的防衛力構想」を否定して「動的防衛力」を構想、そのもとで自衛隊を「存在する自衛隊」から「機能する自衛隊」へと転換させようとする新防衛大綱は、憲法9条と自衛隊との「矛盾」が90年代以降の「日米同盟」の展開と自衛隊の質的転換によってもはや全面的に顕在化している今日の事態を、これまでの9条解釈を否定することで「解決」させようとする最終局面だ、と和田さんは解説。米ソ冷戦構造の終焉後の自衛隊の海外派遣法制の展開の変遷などをたどった。
 さらに、運動上の課題として自衛隊増強を受け入れる国民意識の変化についても言及し、あらためて軍事力を否定した憲法9条の原点を強調。自衛隊を本格的災害救助の専門部隊に転換させることの重要性や、「非核3原則」とともに戦後日本社会を支えてきた根源的なアイデンティティである「武器輸出3原則」の変更を許さない当面の闘いの重要性などを訴えた。
写真:「動的防衛」「機能する自衛隊」へと変質させる民主党政権の新防衛大綱を批判する和田進・神戸大学教授=10月21日、兵庫県民会館
2011社会主義ゼミナールin近畿
 「2011社会主義ゼミナールin近畿」が10月30日、大阪・PLP会館で開かれた。大阪府知事・市長のダブル選挙を前に、「橋下流『ハシズム』にどう対抗するか」のテーマで昨年に引き続き大内裕和・中京大学国際教養学部教授が講演した。
 大内さんは先ず、橋下支持の異常な広がりの背景として、政権交代への民衆の期待の崩壊と、全国ワースト3の失業率や一般会計の17%を占める生活保護費などに示される大阪経済の衰退の2点を指摘。橋下府政の特徴として、メディアを最大限に利用したデマゴギー政治であり、それを支えるのがパフォーマンスであるという点をあげた。
 さらに、ダブル選挙の争点とすることを意図して「大阪維新の会」が府議会に提出した「教育基本条例」「職員基本条例」の内容にも立ち入り、問題点を批判。そして、これらに見られるのは、強力なポピュリズム(大衆扇動主義)の手法で、教員と公務員を「敵対勢力」として設定、これを標的に仕立ててより不安定な状況に置かれた他の労働者の日常的な不満や嫉妬心を煽り、「分断支配」によって新自由主義の徹底的な推進を図るものであることを明らかにした。
 また、「大阪都構想」も地方分権に逆行するもので、ナショナルミニマムを否定し、憲法25条の生存権・社会権を否定するものだとした。 最後に、こうした「橋下独裁政治」への対抗として、橋下政治とその新自由主義がもたらす悪影響を広く徹底して訴えるとともに、憲法25条と9条を軸とする運動を構築していくことの2点が重要だと提起した。
写真:「橋下独裁政治」への対抗構想を提起する大内裕和さん=10月30日、大阪市
ひょうご憲法集会実行委(旧憲法闘争交流会)
 ひょうご憲法集会実行委員会(旧「憲法闘争交流会」)は、11月を憲法月間と位置づけ、今年も昨年に引き続き平和友好祭兵庫県実行委員会との共催で第2回ピースセミナー(2講座)を開催、平和運動の基礎学習や憲法にかかわる運動の経験交流を図る。
【第1講座】▼11月15日(火)19時~21時▼兵庫県私学会館▼テーマ「憲法と人権」講師=橋本貴美男・部落解放同盟兵庫県連合会書記長▼参加費=500円
【第2講座】▼11月22日(火)19時~21時▼兵庫県私学会館▼テーマ「平和運動と労働者」講師=青木昭憲・全港湾神戸支部副委員長▼参加費=500円
 06年11月3日の憲法集会を取り組んだ「11・3憲法集会を成功させる会」を発展させた「憲法闘争交流会」が、このほど「ひょうご憲法集会実行委員会」と名称変更した。事務局団体はこれまで通り、自治労兵庫県本部、全港湾神戸支部、憲法・兵庫会議、平和憲法を広げる兵庫県民会議、憲法を生かす会・神戸。
11月に新たな共同闘争体の結成
 韓国の最新の政治情勢の報告を聞き、日韓民衆の運動について考えようと、「韓国進歩政治の今」と題した「ハン・チュンモク韓国進歩連帯共同代表講演会」が10月18日、大阪市・エルおおさかで開かれた。
 韓国進歩連帯は、87年の民主化闘争以降の運動の発展のなかで生まれてきた、大衆運動を展開する全国的な連合組織。青年学生、女性、農民、民主労働党など各界・各層の団体が参加して07年に結成された。
 ハン共同代表は、韓国進歩連帯が現在闘っている様々な大衆闘争を紹介するとともに、活動の一環として、10月26日投票のソウル市長(補欠)選挙での野党統一候補の擁立作業と共同選対本部づくりの取り組みも紹介した(10月26日のソウル市長選挙では野党統一候補のパク・ウォンスン氏=無所属・弁護士=が与党ハンナラ党の候補を破って当選した)。
 さらに、今日的な重要課題として、反自由主義、反イ・ミョンバクの闘争の前進のための進歩勢力の統合と連帯の取り組みについて報告した。
 以下はその講演要旨。
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 これまで韓国進歩連帯には民主労総が正式に加盟していないが、いま民主労総の指導部と協議をしながら、民主労総も含めた新たな共同闘争体結成のための論議を重ねているところだ。11月13日の労働者大会の前日の前夜祭で新たな組織「民衆の力」の結成を発表する。進歩連帯や民主労総をはじめ、ほとんどすべての進歩的な大衆団体を網羅する「民衆の力」は、2012年の国会議員選挙と大統領選挙での勝利に向けて大きな役割を果たすことになるだろう。
 韓国では来年4月11日に国会議員選挙、12月19日に大統領選挙が行われる。民主改革勢力が勝利するのか、守旧保守勢力が勝利するのか、韓国にとっては歴史的な分水嶺の年になるだろう。この闘いに勝利するためには民主改革勢力と進歩勢力が一つに団結し、守旧保守勢力と1対1の対決構図をつくらねばならない。その一環が進歩勢力の党の統合だ。民主労働党と同党から脱退してできた進歩新党をまず統合し、その後に国民参与党も統合する「進歩大統合」を実現しようという方針だ。しかしこれは、最初の段階である民主労働党と進歩新党の統合問題で、進歩新党の党大会で否決され、失敗した。その結果、進歩新党は分裂、統合をめざすグループは「統合連帯」という組織をつくった。そして、9月25日の民主労働党大会では、国民参与党と統合連帯との統合案がわずかな差で否決された。進歩連帯としては、今後も民主労働党と緊密に協議をしながら、再び「進歩大統合」を実現するために努力をしていく。が、国会議員選挙に間に合わせようとするなら、11月末が期限だろう。ただ、どんな結果になろうとも、進歩勢力と改革勢力が団結して野党単一候補を擁立しないといけない。いま、民主党、民主労働党など4つの政党と進歩連帯など4つの市民団体で共同の公約づくりと候補の一本化のルールづくりの論議を進めている。強力な大衆闘争の展開も必要だ。
写真:講演するハン・チュンモク韓国進歩連帯共同代表=10月18日、大阪市
インフォメーション

■「祝の島(ほおりのしま)」たんば上映会

  • とき=11月21日(月)19時上映
  • ところ=ホップアップホール (丹波市氷上町・ゆめタウン)
  • 入場料=800円 ※小中学生無料
  • 主催=憲法たんば、ひょうご丹波憲法を生かす会 0795‐73‐3869

■教育労働講座2011

  • 日時=11月26日(土)午後1時30分~4時30分
  • 場所=新長田勤労市民センター・3階講習室(JR新長田駅南西・ジョイプラザ3階)
  • 講演=「生かされなかった教訓―東日本大震災と学校」/相沢瑞男さん(宮城県教員)
  • 主催=教育労働運動研究会078‐631‐6549

■東日本大震災支援 健康まつり

    11/27(日)
    午前 チャリティー・フェスタ
  • 10時~12時
  • ろっこう医療生活協同組合本部、灘診療所周辺
    午後 紙ふうせん チャリティ・コンサート
  • 13時30分開場 14時開演
  • 王子動物園ホール
  • 2000円・全席自由席(先着300席)
  • 主催=ろっこう医療生活協同組合078‐802‐3424

■新社会党公開時局講演会「世界経済の現状とTPPを考える」

    講師=伊藤 誠さん(東京大学名誉教授)
  • 日時=12月3日(土)14時
  • 場所=兵庫県私学会館
  • 参加費=500円
  • 主催=新社会党兵庫県本部 078‐361‐3613

■広瀬 隆さん語る
「福島原発事故の真相と放射能汚染の恐怖」

  • 日時=12月4日(日)13時30分
  • 会場=新長田勤労市民センター
  • 参加費=一般1000円 若者(30歳未満)500円
  • 主催=12.4平和集会実行委員会 078‐360‐4674