「新社会兵庫」 12月24日号
 12月4日、アフガニスタンの救世主と言ってもいいペシャワール会の中村哲さんが凶弾に倒れた。あまりにもショッキングで悲しい出来事だ。現地の人たちの「許してください」という悲痛な声に悲しみは広がり、世界中で追悼の行事が行われたことが報道されている▼2001年、神戸であった中村哲さんの講演会の際、中村さんと並んだ写真を撮らせていただいた。中村さん著の『医者井戸を掘る』の本も買い、募金を呼びかけた。医師が重機を使い、大干ばつのアフガニスタンの地に水路を作り、緑の大地に変えた映像は何度見ても感動的だ。武力がなんの役にも立たないどころか逆効果であると訴えた▼同じ日、神戸では「軍隊を捨てた国」コスタリカから来たロベルト・サモラさんという若い弁護士の講演会があった。1949年、新憲法の12条に「軍隊の廃止」が盛り込まれ、軍の司令本部は博物館になったそうだ。軍隊を持たなくても平和的生存権は保障されている▼今秋来日したフランシスコ・ローマ教皇は武器を製造することも罪であると諭したが、アメリカから武器を爆買いし、身近な所で武器が製造されている日本。他国との友好に必要なのは信頼と尊重で、武器はいらない。
危険きわまる自衛隊の中東派遣は中止すべきだ
 政府は中東地域への自衛隊派遣について、国会議論を抜きに12月23日にも閣議決定をするという(その後、27日の閣議での決定となった)。
 そもそもの発端は今年5月、UAE沖で民間タンカーが何者かに攻撃され、また6月にはホルムズ海峡沖オマーン湾で日本とノルウェーのタンカーが吸着機雷攻撃を受けたことに始まる。
 7月にはアメリカがタンカー護衛のための有志連合を結成すると表明。3回の説明会を開催した後、11月に有志連合の司令部が発足し、「センティネル(番人)作戦」が正式に始動した。これには米国の他、英国、オーストラリア、UAE、サウジアラビア、アルバニア、バーレーンの6カ国が参加している。
 一方、日本は有志連合には加わらず、10月に安倍首相が国家安全保障会議(NSC)で自衛隊の独自派遣の検討を指示し、自衛隊内に対策チームを設けた。しかしながら、自民党外交部会では「事態が急変しない保障はない」「派遣目的や出口を明確にすべき」など、自衛隊員の安全を懸念する声が上がり、公明党・石田政調会長も「『調査・研究』は地理的な限定がない。様々なことを考えないと任務に携わる自衛隊員も大変心配」と発言するなど与党内からも派遣に慎重な意見が上がっていた。
 今回の中東派遣で、政府が想定する対応は、アデン湾の海賊対処に使っている哨戒機2機のうち、1機を転用するというもの。ただし、給油や補修のため、ホルムズ海峡近くに給油や整備拠点が必要と言われている。また、護衛艦については、日本から新たに1隻を派遣するというものだ。
 今回の派遣は、自衛隊設置法の「調査・研究」目的が根拠となっている。しかしながら、派遣へは大きなハードルがある。一つには、武器使用のルールなどを定める部隊行動基準(ROE)の検討だ。「調査・研究」目的の活動では、武器使用は正当防衛と緊急避難に限られ、法律の範囲内でできること、できないことを整理し、ROEに規定する必要がある。また、「調査・研究」目的の活動では日本関係の船舶防護はできない。政府は必要な場合、「海上警備行動」(自国の国に限って護衛でき、武器使用は一部OK、自衛隊法82条)への切り替えも考えられる(10・23衆院外務委員会/防衛政策局長)としているが、「海上警備行動」では外国船舶は守れないため緊急時に「見殺し」にしてしまうリスクもある。
 このような中、11月1日、憲法学者125人が派遣反対の声明を発表した。そもそも今回の危機は、イランと米・英・仏・独・中・露の「核合意」からトランプ政権が昨年一方的に離脱、制裁を強化したことにある。各国の調停も拒否し、原油の全面禁輸も世界に強制中だ。有志連合は、単独では対イラン作戦をしたくない米国による「多国籍軍」づくりであり、米国は核合意に立ち戻るべきだ。
 また「調査・研究」名目の派遣は、方法や活動範囲や期間が制約されず、事前に派遣地域を示す必要もなく、しかも国会承認もいらずに防衛大臣の判断だけで派遣できる。今回は派遣に慎重な公明党に配慮して、閣議決定を行うが、法的に「野放し」状態のままで自衛隊員が派遣されることになる。
 現在、日本関連タンカーへの攻撃が頻発しているわけでもなく、自衛隊派遣の必要性はまったくない。派遣すれば友好関係にあるイランを刺激し、有志連合の形をとらなくても、政府は有志連合と緊密に情報共有を進める方針で、実質的には米軍や他国軍と事実上の共同活動は避けられず、自衛隊が不測の事態に巻き込まれる可能性がある。さらに、一旦派遣すれば、米国の更なる要求で、日本の軍事的関与の拡大の可能性があり、米軍への攻撃があった場合、集団的自衛権の行使の要件を満たすものとして集団的自衛権の行使につながる。また、「現に戦闘行為が行われている現場」以外であれば、自衛隊はアメリカ軍の武器等防護を行うことができ、自衛隊が米国の戦争と一体化することにつながる。そのため、情勢によっては危険度が増す中東地域への派遣のため「危険手当」創設を検討しているという(11月14日、産経新聞)。
 自衛隊員の命を危険にさらす可能性もある危険な中東派遣は中止すべきで、イランと友好関係をもつ日本は仲介役に徹し、関係国との対話と外交努力により中東地域の緊張緩和を図るべきだ。
中村伸夫(憲法を生かす会・ひょうごネット事務局)
契約社員の退職金差別で団体交渉
 姫路市内在住のトレーラー運転手Tさんから今年4月に労働相談を受けた。当時、彼は59歳、半年毎に契約更新する契約社員だった。今の勤務先に雇用されて6年間、無事故・無違反で仕事ぶりには自信があったが、正社員との格差が著しく、月例給や賞与、休暇制度等の点で差別があり、60歳定年時に契約社員には退職金が支給されないのは不合理だと申し立てた。
 「正社員しか担当が回ってこない研修リーダーも務めたことがある。しかし、正社員には支給される功労金が自分には支給されなかった」というTさんの話を聞いた時、会社はTさんを「便利屋」として使っていると感じた。実質的に正社員と同じ仕事をさせているにもかかわらず、契約上の身分関係を盾にとって労働条件に差をつけることは不合理であると、ユニオンは会社に格差是正を申入れた。
 実はこの件で、姫路ユニオン内部における意見は分かれた。Tさんの訴えに対し、「雇用契約を結んだ時点で正社員と異なる労働条件を了解したのだから、格差はやむを得ないのではないか」とする意見があった。これに対し、「私たちは法廷で争おうとしているのではない。ユニオンとして団体交渉を行い、Tさんの要求を会社に認めさせることに全力を挙げるべきである」といった反論があり、熟議の結果、彼の主張に寄り添い団体交渉を会社に申し入れようとの結論に至った。
 団体交渉は2回行ったが、予想通り会社は契約を盾に取って正社員と同一の扱いはできないと強弁した。その上、「規定により、定年後は運転手から構内作業員に配置転換することになる」と言い渡されて、運転手として働き続けることを希望するTさんは会社を去る決意をした。
 退職条件の引上げをねばり強く求めた結果、会社は私たちの要求を一部認め、正社員と同じ水準で算出した退職金相当額の解決金+αの支払いを提示してきたので和解することとなった。
細川雅弘(姫路ユニオン委員長)
「当たり前」を疑う
 今の職場で働きはじめて6年目、労働組合に加入して6年目となります。
加入したきっかけは、入庁してすぐに労働組合の加入の勧誘があり、職員全員が加入しているとのことだったので、あまり深く考えず、入らなければならないものとして加入しました。
 加入はしたものの、3年間は単組の定例行事に参加するぐらいで、労働組合が何をする団体なのかなど考えることがありませんでしたし、特に職場で困っていることもありませんでした。
 しかし、入庁して3年目のとき転機が訪れました。私の職場は、仕事量が他の部署と比べて多く、全体として職員数を削られ、毎日がぎりぎりの状態であったにもかかわらず、急きょ休職者が出たため、パンク状態になってしまったのです。もともと係員が私を含めて4人しかいない中、ベテランの1人が休職してしまい、係員は上司と私と入庁したての新人職員の3人になってしまいました。3年目にして、上司を除いて私が一番年長になりました。それからは毎日仕事に追われ、半年間の残業の1ヶ月平均は80時間を超え、ひどい時には、月100時間以上の月もありました。また、年休も1年間で1日しか行使することができませんでした。しかし、この頃の私は職場のこのような状態が「当たり前」と考えており、「おかしい」ことであるという認識がありませんでした。
 それから4月になり、別の部署に異動することになりました。異動した部署は、比較的仕事量が少なく、毎日定時で帰れるようになりました。さらに年休についても、月に1、2日行使できるほどの余裕がありました。余裕が生まれたことで、他のことに関心を持つようになり、たまたま1泊2日の県本部の行事に誘われ、参加したことが私の組合での初めての活動でした。懇親会などで他市町の人と職場の話をしたとき、自分の職場のおかしさについて認識することができ、それをきっかけに組合活動に対して興味が湧きました。もっと他の職場の実態などを知りたいという思いから、県本部の役員への道を自ら進み、2年間、色んな場所を訪れ、職場実態を話し合い、どのように解決していったかなど多くのことを学びました。その結果、私が今まで「当たり前」と思っていたことが「おかしい」と思えるようになりました。
 私は、労働運動で大切だと思うことは、まず「当たり前」という認識をなくすことだと思います。そうしないと、自分の職場の実態や課題などをいつまでも見つけることができず、その結果、何も変わらないからです。
 私は、後輩の組合員に「何でも当たり前と思わず、古い悪しき慣習など一度振り返ってみて。『これはなんでなん?』と普段から疑問に思うことが大切だ。その疑問を解決するために、考えることはいうまでもないが、1人よりも多くの人と共有しながら考えた方が解決しやすい。そのためにも、多くの仲間が集まる交流会などの組合行事に積極的に参加しよう。どうせ参加するなら楽しんで一緒に考えよう」と言っています。
 自分の置かれた職場の実態を客観的に判断するいい機会なので、いろいろな人と出会い、いろいろな意見を聞くためにも交流会に参加し、労働環境改善に繋げましょう。
(Y・F/28歳)