「新社会兵庫」 8月13日号
 8月2日、日本政府は韓国を安保関連の輸出手続き上の優遇対象国(いわゆる「ホワイト国」、今後は「グループA」と呼ぶらしい)から除外する閣議決定を行った▼これにより、この間悪化の一途だった日韓関係はいちだんと厳しさを増している。韓国内では日本への旅行のキャンセル、日本製品の不買運動など市民も日本の「報復」へ反発を強めているが、日本政府は安保関連で「輸出管理制度の運用見直しをしただけ」と説明し、「報復」を否定する▼だが、だれもそうは信じていない。この問題、やはり根っこは日本による不当な植民地支配の歴史的事実だ。1965年の日韓条約、請求権協定で解決済みという主張を振りかざすだけではいけない。日本政府の真摯な反省と謝罪(賠償)が求められているのではないだろうか▼実は6月、韓国政府が、中国人強制連行裁判での和解(花岡、西松、三菱マテリアル)のように被告企業も拠出する基金をつくって被害者の救済ほかの事業を提案したことは案外忘れられている▼このような提案すら一顧だにせず、協定の条文「完全かつ最終的に解決」を金科玉条のように声高に叫ぶだけではいつまでも隣国との友好関係など望むべくもない。
参院選をふり返る 総選挙への中間総括となった参議院選挙
強まり、巧妙化した権力の選挙謀略
 先月行われた参議院選挙から1カ月が経とうとしている。国政選挙と言えば、従来は間を置くことなく直後に喧しく勝敗が論じられたものであるが、今回は違っていた。おかしなことに、前もっての予測でマスコミは早々と「改憲、与党の勝利」と確信ありげに報じたにもかかわらず、結果判明後は、「改選議席の過半数を制した政権・与党の勝利ながら、改憲発議をむずかしくした野党側に軍配」という曖昧模糊たる評価を述べ、それを破ろうとしなかった。
 透けて見えることは、次のようなことであある。政権は近年ますます巧妙に、執拗に、報道関係を(当然、国民意識を)統制、誘導、包摂する試みを(狭い意味の言論マスコミに限らず、芸能、お笑いまで含めて))続けている。そのテクニックは政治や選挙の分野に使われれば、世論調査が誘導目標にすり替わる。「選挙の結果は与党勢力の勝利」「改憲気運の強まり」等々が、それ以外にはありえない選挙結果として、到達点として投票前に光を当てられていたのである。
 ともあれ、投票前に政権、与党、マスコミ等々が飾り立てた造り物は十分な効果をあらわさなかった。少なくとも彼らが望んだ政治的力関係は大きくは変わらなかった。大衆が音を立てて彼らの方に移動していくことはなかった。
 すべては、第2ラウンドたる次の総選挙に持ち越される。
衆院選で共闘を前進させよう
 参院選の1人区は、衆議院の小選挙区と多くの類似点をもっている。参院選1人区のたたかいの教訓はただちに抽出され、次期衆院選に生かされなければならない。
 さまざまな教訓が、目の前に山と積まれているが、最も重視すべきものは人々の心に現れた波立ちである。
 20年以上になる衆院選・小選挙区制は政治の劣化を加速させ、どうせ自分達が挑んでみてもどうにもならんという悪しき空気を拡散させ、かつて多くの市民がもっていた自分たちが政治を変える主体という気力を壊死させんばかりになっている。
 今回の参院選で、1人区の争いでは10選挙区において(前回の11には及ばなかったものの)勝利を獲得した意味は、市民をむしばんでいた後退的政治態様を前進的なそれに転換させる契機にすることができるならば、きわめて大きかろう。3人区ですべて改憲派に占められた兵庫選挙区でも、改憲反対派の票を合体させることができたならば、1議席を掌中にすることは可能だったのである。
 いま大事なことは、壊死へと流されている民主主義の中に残っているどんな小さなものでもいい、生命力、生命体を蘇生させる努力である。その力を感じ取ってもらうことである。迫りくる衆院選では、ぜひとも護憲の共闘を成功させよう。市民、大衆の自信を回復させようではないか。
 「仏つくって魂入れず」という言葉があるが、共闘の魂は大衆運動であり、大衆の行動である。
 共闘を最大限に積み上げ、自分たちの力を最大限にしようと努力しない勢力を大衆は信頼するであろうか。また、共闘と称して票を大衆抜きの商取引のように扱う政治屋に心を惹かれるであろうか。共闘のキーワードは、大衆であって、冷やかしでもないし、商取引でもない。共闘を支える基礎工事に大衆の要求が流れ込まなくなれば、土台は干からびて崩れ落ちていく以外にない。
 参院選後、しばしば「れいわ新選組」の伸長が話題を呼んでいる。
 われわれは「れいわ新選組」を調査・分析し尽くしているわけではない。しかし、さまざまな勢力の中にあって、(全部ではなく一部であっても)魂や心を揺さぶると受け取られたアピールがあったとすれば、「れいわ新選組」のそれであったかもしれない。選挙演説に忘れて久しい、懐かしいものがあったとすれば「れいわ新選組」のそれであったかもしれない。
 参院選総括から衆院選への道のりで、いまひとつつけ加えなければならないことは、「心から出たものでなければ、心を打つことはできない」ということかもしれない。  
今村 稔(憲法を生かす会・灘 共同代表)
賃金未払い問題で提訴
 加古川市にマエダフーズ株式会社がある。弁当・仕出し料理・惣菜等の調理、清涼飲料水・飲料水の製造・加工、事業所等の給食業務の受託等を業とする会社である。
 その会社で、2018年12月から2019年2月までの賃金の未払いが発生した。2人の女性は、加古川労働基準監督署に相談し、監督署からは社長に対して支払いの指導がされ、社長からは従業員宛てに「給料日支給日について」と題する文書が送られてきたが、賃金は支払われなかった。
 2人は、2019年2月の退職まで介護老人保健施設サンライズで給食業務に従事していた。未払いが発生して、社長に直談判したが解決はしなかった。
 2人は2月18日、はりまユ二オンに相談。はりまユニオンは翌19日に賃金の支払いの要求書を提出して、28日までに回答を求めたが、返事はなかった。そこで、事務所に行って団体交渉での解決を求めたが、「回答は後日する」の繰り返しの姿勢に終始したので、ユニオンは「裁判での解決」を通告し、4月8日、姫路地裁に未払賃金請求事件として訴状を提出した。
 2人は2018年12月、19年1月、2月分のタイムカードの写しを所持していて、これに基づいて月額給与の未払い分と時間外労働の分を算出した。2人の合計金額は、224万7481円になる。時間外労働の割増賃金も1時間あたりの賃金は支払っているものの、割増賃金(0・25増分)は全く支払っていない。
 労働条件も入社時に雇用契約書を締結するが、1人の方とは締結していたが、もう1人の方は労働条件は口頭で説明されたという。締結した雇用契約書による労働条件は、始業時刻は午前5時00分、終業時刻は午後3時00分、休憩時間は12時から13時までの1時間とされている。これでは1日の所定労働時間が9時間となり、労働基準法第32条違反になる。
 その後、地裁で2回の審理が開かれた。最初の審理のなかで、2018年11月以前のタイムカードの提出を求めたが、会社は2回目の審理では「探しているが見つからない」と答弁し、全く誠意を見せないどころか、証拠隠しさえ諮った。
  訴状提出後、ネットでマエダフーズの「倒産」が流れた。悪質な社長、前田陽平を許すわけにはいかない。  
岩本義久(はりまユニオン)
憲法カフェに取り組んで
 長田では、「憲法カフェ」の開催が19回になりました。憲法を生かす会・長田とI女性会議・長田が主催しているものです。
 初めは、私自身あまり乗り気ではなかったのですが、党の仲間と手探りで、「平和マップ」を使ってのウォーキングをしたり、あすわか(明日の自由を守る若手弁護士の会)の弁護士さんの話を聞いたりしながら、若い人たちと繋がっていきたいと取り組みました。私たちが憲法カフェを始めた頃は、ちょうど安保法制が問題になっている頃で、憲法の話を聞くことが何よりも大切だと思って取り組みました。
 その中で、恥ずかしい話ですが、立憲主義とは憲法によって国家権力の手を縛るということだと改めて知りました。憲法の9条を護らなければならないという思いはありましたが、まだまだ知らないことがあったということ、若い人たちから教えてもらうことがあることに気づきました。それからは、2、3か月に1回というペースで憲法カフェを開いています。 憲法カフェを開くにあたって大変なのが、タイムリーなテーマを決めること、そして講師を探すことです。初めのころは、憲法の話を聞くことに重きをおいていましたが、たくさんの人に来てもらうためには、その中身である日々の私たちのくらしそのものを考えることだということに思い至り、最近では水道民営化について考えたり、消費税について考えたりと、生活に基づいたテーマに広がってきています。
 次に宣伝の仕方です。まずチラシを作ることですが、幸い長田には絵の上手な仲間がいて、毎回どうすればたくさんの人に訴えられるかを考えてチラシを作ってくれます。「最後の一滴まで」の上映会では、たくさんの人に来てもらうことができました。チラシを配ったり、ポスターを貼ったり、知人に呼びかけたりしていますが、結構効果があるのが、新聞社に毎回ファックスを送って紙面に載せてもらうことです。憲法カフェをどこで知ったかというアンケートには、毎回のように紙面に載った小さな欄を見て、と答える人があり、まだまだ新聞の影響力は捨てたものではありません。そして「カフェ通信」を発行し、参加者や支持者に送っています。おかげで、憲法カフェに定着してきた人もいます。
 憲法カフェを続けていてよかったことは、いろんな講師の話を聞けること、そして繋がっていけることです。最近では、ロスジェネ世代の講師の話も聞けて、若い人は低賃金、非正規労働などあまりにも余裕のない実態の中で立ちすくんでしまっているのだと分かりました。
 また、あすわかの弁護士さんには、よく相談にのってもらっています。安倍政権が続く限り、腹立たしいことが多く、テーマはたくさんあり、次回はどんなテーマを取り上げようかと考えています。
(M・M)