「新社会兵庫」 10月09日号
 折角、源平の名残をとどめる神戸に住んでいる。一強が喧伝され、安倍3選となった自民党総裁選挙に触発されて、福原や一ノ谷を訪ねてみようかという気が起こってくる▼栄華を極めた福原の管弦は翳りをはらみ、4年後には落魄(らくたく)の公達(きんだち)の宴に流れる「青葉の笛」の音となる▼安倍3選にはかつてないほどの権勢の騒音が響いた。その昔、聞いたことがあるような「……にあらずんば人にあらず」。秋葉原の演説会は、秘書や党員・支持者によって公道の通行遮断が行われた。警察が行う交通規制ではなく、批判的な空気を近づけないためだったという▼普通、選挙後というものは新しい支持や期待が起こるものであるが、今回は歓呼も拍手も感じられない。足元はと見れば、森友・加計という薄氷はそのままである。総裁選が安倍にとって、再起動どころか、下り坂プロセスのスタートとなったことは間違いないようだ。新内閣が国民の目をひくことはあるまい。新版アベノミクスは誰の期待も呼ぶまい▼世論調査の「他の内閣より良さそう(翻訳すれば、面倒くさい、やらせとけ)」という細い糸も、もう限界だろう▼面倒くさがらずに、その糸を切るのが、統一地方選、参院選だ。ヨーイドンだ。
社会保障制度 社会保障費の抑制ではなく
       大企業の巨額の富に目を
労働力人口減少に「もっと働け」
 昨年10月4日、財務省の財政制度分科会で慶應義塾大学前塾長の清家篤氏が「社会保障制度を将来世代に伝える」をテーマに語った。経済成長を維持するためには、働く能力のある者は「もっと働け」というのがひとつの結論である。問題提起の内容は、@人口減少に伴う労働力人口減少をどう食い止めるのか、そのための年金制度、税制度、雇用制度の改革が必要、A社会保障給付の急増と医療介護の重点化・効率化という2本柱であった。
 労働力人口は現在の6600万人から2030年には5800万人になる。労働力人口×労働時間×付加価値生産性であるGDPが大きく制約され、労働力人口減少による消費減退で経済成長も制約される。よって社会保障制度はこれを支える労働力人口の減少により維持できなくなる、と清家氏は警告する。
 さらに、女性と高齢者には「もっと働け」と勧める。30代女性の労働力率を現在の約70%を2030年には85%に、60歳〜64歳男性の労働力率を同じく約78%を90%に、65歳〜69歳男性の労働力率を同じく50%強を70%に引き上げよう、と提言する。年金受給資格を得た後に働くと年金支給額が抑制される年金制度、専業主婦や給与所得が一定以下の女性労働者を配偶者控除で優遇する税制度、65歳定年が標準となっていない雇用制度など大胆な見直しが必要だ、と提起する。
 この「健康寿命までもっと働け」という提言は、労働者や市民の要求ではない。財界は企業利益の源泉である労働者の減少には大きな危機感を抱き、労働力人口の増加、長時間労働の拡大、生産性の向上などによる利潤の最大化のみを渇望している。私たちは、改めて人間らしい暮らしや働き方を優先とした人口減少社会のあり方を考えなければならない。
「財源に『打ち出の小槌』はない」
 社会保障制度改革は、「どこにも打ち出の小槌はない」という財源論に縛られたものだ。社会保障給付費は2015年度で115兆円、団塊世代が後期高齢者になる2025年には約150兆円になる、と危機感を募らせている。後期高齢者の増加により給付費が急増する介護・年金に比べて年金問題は解決に近づいていると語り、高齢者中心の社会保障制度から、とくに子ども・子育て支援、幼児教育の無償化など、若者への給付を充実した全世代型社会保障制度への転換の必要性を強調している。
 医療保険では75歳以上の後期高齢者医療制度を支える財源の確保に大きな問題が生じている。国内2位の規模である人材派遣会社や日生協などの健康保険組合が高齢者医療制度への拠出金などに耐え切れずに来年4月で解散することを決めた。
 私は最近、国民健康保険に加入したが、医療と介護の保険料に加えて後期高齢者支援金分保険料として月6800円を神戸市に収める。世代間連帯という美名のもとに高い負担を求められているが、これでは共倒れか、世代間の対立を招くのではないかと危惧する。
大企業の巨額の富を取り戻そう
 「健康寿命までもっと働け」の大合唱や「打ち出の小槌はない」という社会保障の財源論の認識には大きな異議がある。
 アベノミクスにより労働者には貧困が押し付けられる一方、大企業は2018年3月期に売上高560兆、純利益も29兆円。そして今年9月3日に財務省が発表した企業の内部留保は446兆円強。どれも過去最高である。内部留保は前年比40兆円の増加だ。だが、この現実を清家氏は見ようともしない。
 少子化・人口減少の原因は、若者に結婚し、子どもを生み育てられる賃金が払われていないことにある。労働運動に元気がないと嘆くよりも、最低賃金の引上げの闘いなどにより8時間働けば人間らしく暮らせる社会を取り戻そうと、「声をあげる」ことから始めよう。
 さらに、所得の再配分という立場から、税と社会保障の一体改革による消費税引上げではなく、社会保障制度の財源を大企業の巨額の富から捻出する政治を実現しよう。国家財政は、大企業を優遇するためにあるのではなく、国民生活を豊かするためにある。かつての民主党政権による財源確保のない「コンクリートから人へ」の多くの政策は国民から見放された。この反省から社会保障費抑制ではなく、大企業の巨額の富という「打ち出の小槌」を活用した財源確保の明示による政策提言や野党共闘の実現を図るべきだ。
菊地憲之(安心と笑顔の社会保障ネットワーク代表)
プラスチックごみ問題
 ごみ問題は今に始まった事ではないが、最近、問題視されているのがマイクロプラスチックだ。2012年発行の『プラスチックスープの海』と題した本によると想像以上に海洋汚染が拡がり、北太平洋にプラスチックの巨大ごみベルトができている。世界各地で海鳥の胃の中から消化不能のレジ袋やボトルキャップが出てきた写真をよく見るが、今年の5月にタイで死んだゴンドウクジラの胃の中には80枚のレジ袋があり、餌と間違って浮遊しているプラごみを食べてしまったのではと言われている。余りにもショッキングなニュースである。
 5ミリ以下のものをマイクロプラスチック、1ミリ以下のものをマイクロビーズと呼び、東京農工大学の高田秀重教授がこの問題に熱心に取り組まれている。東京湾での調査でもカタクチイワシの8割の消化管から様々なプラスチック片が出てきている。内臓をアルカリ液につけて1週間するとプラスチック片だけが浮いて残っているそうだ。
 プラスチックを製造する過程では様々な物質が添加剤として使われていて、ビスフェノールA(BPA)など、内分泌かく乱物質「環境ホルモン」が健康に影響するそうで、「いつしか溶けだした環境ホルモンが人の心と体を蝕んでいく」と警告するのは山田豊文杏林予防医学研究所所長だ。専門的なことは解らないが、魚が重要なタンパク源の私たちにとって食物連鎖の問題くらいは理解できる。9月3日の神戸新聞には13か国で水道水などに微小プラが含まれていたという記事が掲載され、埋め立てたプラゴミからも環境ホルモンは浸みだし地下水を汚染するなど、水道水の汚染も懸念される。
 使い捨ての代名詞のようなプラスチック。私たちも「安い、軽い、洗わなくていい」などの理由でどれだけ使っているだろう。容器包装リサイクル法がつくられて約20年になるが、自治体が回収し分別・保管を受け持ち大きな負担となっている。リサイクルするからいいでは済まされない。プラも混入している可燃ごみ、高温処理やバグフィルター設置でダイオキシン対策は万全なのか。プラスチックが厄介なごみであることをもっと知らせる必要がある。
 溢れるプラスチック用品の現代社会のなかで、すべて使わない生活は不可能。日々、台所から出すプラスチックごみの多いこと。私は買い物時、できるだけ早く「袋は要りません」と言うようにし、エコバックを持ち歩く。飲料の自動販売機はどこにでもあり、進む少量化や、夏は冷たく冬は温かいペットボトルは本当に便利だが、水筒持参を心がける。調味料等はRのマークの付いたリターナブル瓶を利用するなどしている。便利のツケは大きいということを考えよう。
(加納花枝)