「新社会兵庫」 02月13日号
- 「地球儀を俯瞰する外交」。安倍得意のフレーズであるが、見下ろす目線の不遜さには虫酸が走る。丁寧な目配りといえないものか▼ところが、その高慢さが臆病に急変した。昨年秋、世界の人々の努力が実って、国連で核兵器禁止国際条約が締結された。人々の歓迎はその運動をノーベル平和賞に押し上げた。唯一の被爆体験国であるわが国の参加は、この上ない実質と力を与えるものとして衆目を集めた▼わが国は21世紀の歴史にとって最も光輝ある座を与えられるかもしれないこの機会を放棄して、疑惑と軽蔑の視線を浴びて、アメリカの傘の下へと逃げ込んだのである。核兵器禁止条約を成功させ、ノーベル賞を受賞した運動団体のベアトリス事務局長が訪日し安倍首相と会見を希望した時、首相はわが国で卑劣とされる「居留守」を使って逃げた▼なぜ参加しない、なぜ会わない、となぜなぜが続いた後、トランプ政権は核兵器をなくしていくどころか、使いやすくして使うという核戦略を発表した。安倍政権は支持を即座に表明した▼核兵器禁止条約が動き出した時代のアメリカの核の傘は穴だらけで生命を救えるものではない。俯瞰するどころか、地球儀上を逃げ回る姿を見ようではないか。
- 9条改憲案と軌を一にする 軍事費突出の今年度予算案
- 政府は1月22日、2018年度予算案を国会に提出した。予算案は約97兆7千億円で6年連続で過去最大だ。17年度補正予算と一対で計100兆円に迫る。
歳出では「人づくり革命」と「生産性革命」が2大看板だが、生活保護費の削減をはじめとする社会保障費など他の経費が軒並みマイナスとなる中で、軍事関連は聖域で、異様に突出している。防衛省分は6年連続増の5兆1911億円、17年度補正でも2345億円計上されている。
軍事費突出予算の特徴の一つは、現行中期防にない地上配備迎撃ミサイル「イージス・アショア」2基を当初プラス補正で計3千億円計上したことだ。今のミサイル防衛システムはイージス艦搭載のSM3で迎撃、SM3で撃ち漏らした場合、地上配備のPAC3で対処という2段構えだが、「イージス・アショア」はSM3を陸上の固定基地から発射するシステムだ。この2基は山口県と秋田県に配備されようとしている。
さらに、敵地攻撃能力をもつ3種類の長距離巡航ミサイルの取得にも踏み込んだ。このミサイルの射程は500〜900qで、沖縄に配備されているF15戦闘機に搭載される。那覇からでも中国の上海に達し、さらに北朝鮮の制空権内に接近することなくミサイル発射台などを狙え、日本海上空から北朝鮮のミサイル発射台を攻撃する敵基地攻撃が可能な射程を持ち、明らかに専守防衛に反する。これは自民党内でくすぶり続けてきた敵基地攻撃能力保有の議論を受けたもので、昨年9月には自民党の会合で中谷元防衛相は「憲法は『座して死を待つ』ものでなく、敵基地攻撃は可能だ」と政府に検討を要請している。
これに加え、安倍政権は、日本の軍事力のあり方を定める「防衛計画の大綱」を今年末に改定しようとしているが、その中で将来的に海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦で運用することも視野に、短距離で離着陸できるF35Bステルス戦闘機の導入を本格的に検討している。海上自衛隊最大のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」を改修し、F35B戦闘機を搭載するというものだ。中国の海洋進出に対応するためとしているが、護衛艦であってもF35B戦闘機を搭載すれば、軍事的には空母と位置づけられる。
また、敵のレーダー網を無力化する電子戦機(EA18Gなど)の導入案も取り沙汰されている。これまで政府は一貫して、自衛のための必要最小限度を超えるため、攻撃型空母の保有は許されないと説明してきたが、空母を保有すれば専守防衛の逸脱だ。
この他にも辺野古新基地など米軍関連経費も上積みされ、無人偵察機グローバルホーク、オスプレイなど米国製の高額な兵器の購入が盛り込まれている。
トランプ大統領は昨年11月の来日時、安倍首相との共同記者会見で「非常に重要なのは、日本が膨大な兵器を追加で買うことだ」とあからさまに兵器購入を迫った。
米国製兵器の多くはFMS(日米両政府が直接取引する有償軍事援助)で導入される。米側が見積もった金額を前払いしたあとに納入が始まり、納入完了後に精算して価格を確定させるというものだ。そのため後になって価格が上がることもあり、売り手が有利になる。2012年度に1380億円だったFMS調達は来年度は4102億円にのぼる。昨年、「イージス・アショア」の価格を当初、小野寺防衛相は1基800億円と答弁したが、その後1千億円弱と修正し、わずか半月で200億円も跳ね上った。
安倍首相は今年1月の年頭会見で、「従来の延長線上ではなく、国民を守るために真に必要な防衛力の強化に取り組む」と表明し、「今年こそ憲法のあるべき姿を国民にしっかり提示し、改憲にむけた議論を深める」と、年内の改憲発議を視野に入れた発言をした。 さらに、1月22日の国会召集日には自民党の両院議員総会で憲法改正を「いよいよ実現する時」と表明し、改憲議論を加速する構えを示した。自民党は党大会のある3月末までに党改憲案をまとめる予定だ。
専守防衛を逸脱し、他国を攻撃可能にする来年度軍事予算は、自衛隊を軍隊と位置づけようとする自民党の9条改悪案と軌を一にするものであり、北朝鮮問題の平和的な対話による解決に背き、北東アジアの緊張を高めるものだ。決して認められるものではない。
中村伸夫(憲法を生かす会・ひょうごネット事務局)
- “我慢と粘り”による楽しみな組織作り
- 但馬ユニオンは今年4月に結成8年を迎える。組織人員は少ないが、それでも少しずつ増えてきた。今は土台作りだと思い、この2年間、組織の拡大と分会作りに力を入れてきた。結果、2つの分会(豊岡短大、郵政)ができた。
両分会とも毎月1回の定例会議を開き、会議の中で学習会(豊岡短大分会は『コンパス21』、郵政分会は『月刊まなぶ』がテキスト)をしている。 豊岡短大分会は労働相談に始まり、団体交渉を経て、「不当な降格処分の撤回」と「パワハラへの損害賠償」を求めて一昨年11月に神戸地裁豊岡支部に提訴、法廷闘争の最中である。また、この闘いの中で「雇用継続」を求めて新たな団体交渉も始まった。
こうした一連の闘いを継続していくためには、何といっても組合員の意識の向上と分会の主体的な力量の高まりが必要だ。その一つが学習会だが、学習の必要性と定着には1年余りかかった。組合員の中には准教授、講師や助教がいる。「何で俺たちが学習?」と言われるのではないか等々、私自身も考えすぎて躊躇することもあった。もう一つは、法人への要求書を分会と一緒になって作ること。私らが原案を作れば、それを分会で討議して修正・補強する。その逆もある。今年の1月で定例会議は24回の開催になるが、団交と裁判ではその都度打ち合わせもしているので定例会議の倍近くの集まりをしている。
さらに、闘いを地域に広げるために闘争支援物販(メロン、リンゴ)の労組オルグや労大講座で講師になって訴えている。
郵政分会(OBと20代が中心の現役の○○人)は今年1月で25回の定例会議になる。しかし、勤務局、勤務時間の違いや居住地が但馬一円ということから集まることの困難さが多々ある。そこで定例日を設定しているが、全員揃うのは年に3〜4回だ。従って、欠席者には会議の決定を個別に会って報告したりもしてきた。また、親子ほどの年齢差もあるので、時には飲み会等の気配りもしている。
8年を通じた何よりの成果は、私自身にガマンと粘り強さができ、この先の楽しみを持てていることである。
但馬は広く、行動するにも時間と金がかかる。ましてや阪神間の諸行動となれば参加費は多額になる。それでも、いまの点を線で結んで職場・地域にユニオンの分会組織を作りたいと願っている。
岡田一雄(但馬ユニオン委員長)
- 『相手の立場に立つ』こと
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先日、88歳の母が「私は今日ここに泊まるんか?」と言った。自宅のベッドの上でのことだ。「ここはおばあちゃんの家やで。ほら仏壇あるやろ?」と言ったが、とうとう自分の家が分からなくなったらしい。私が会議等で遅い日は、夫も食事や着替えの世話をしてくれているのだが、たまに夫が先に帰宅した時に「よう来てくれた。良かった」と言ったらしく、「もう、オレのことが分からんみたいやな」と言った。「毎晩遅いから忘れられたんや」と冗談で返したが、母の認知症は進行している。
週3回デイサービスに通い、行かない日はヘルパーさんに1日3回朝昼夕と来てもらっている。が、一人で過ごす時間に転んで、ひっくり返った亀のように起きられなくなっていたことが2、3度あり、一人で居るのが心細くなっているのだ。幸い、訪問したヘルパーさんに発見され、起こしてもらい、今のところ大事には到っていない。
そんな母に向かって、夫は朝、私が出勤する時に、「あと30分ほどしたら私も出るから」と言う。なんのためのインフォメーションなのか?!短期記憶も無く、時間の感覚もなくなっている母にすれば、『ひとりぼっちになる』という不安だけが残るのだ。
認知症の1つの大きな症状である『記憶しておくことができない』ことはなかなか理解されない。母も夫に、デイサービスの迎えは「何時に来るの?」と何度も聞くので、夫はだんだんめんどくさそうな嫌そうな声になる。同じことを話したり、気になったことを何度も尋ねたりするのは、自分が話したことや答えてもらったことを忘れ記憶できないからだ。が、何度も同じことを答えた方は記憶があるのでうんざりし、つい「さっき言ったでしょ!」とイラッと言ってしまう。本人は初めて話したり聞いたりしているつもりなので、何故怒られているのか分からず不安になって、ますます介護者を困らせる行動に出てしまう。
双方がイラつかないちょっとした工夫はいろいろある。例えば字や時計が読める人なら「デイの迎えは〇時です」と書いた紙と時計を目の前に置いておけば聞かなくても見れば分かるので安心だ。
母はデイに行かない日は、夕方にヘルパーさんに食事をさせてもらっているのだが、私たち夫婦が遅い夕飯を摂っていると起きてきて、「私のご飯は?」と言う。夫は「ばあちゃん、もう食べたやん、ほら、ヘルパーさんの記録にも書いてあるし」と記録簿を見せたりする。母は「そんなことない!」と怒る。『説得』しても無理だ。一緒にテーブルに座らせ、ちょっとした物を食べさせればいい。柔らかい煮豆とかを小皿に出しとけば時間をかけて一粒ずつ箸で摘まんでいるので満足感があるみたいだ。『納得』してまた寝てくれる。『説得』より『納得』が肝心。
「これしてからするから待ってて」も『待つ』ことを忘れるので待てない。こちらのペースでなく本人のペースで本人の用を優先した方がやっかいなことが起きない。そのためには行動を予測して物品等を常に手近に準備しておくとよい。やはり肝心なことは、言い古された言葉だが、『相手の立場に立つ』ことだ。
これができるプロの介護職はもっともっと優遇されるべきだろう。
(菊地真千子)
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