「新社会兵庫」 12月22日号
 本紙前号(12月8日号)「おんなの目」欄に、筆者の済州島ツアー同行者がハルラ山を漢字で「漢羅山」と書いていたが正しくは「漢拏山」。曇って頂上が隠れたハルラ山を見ながら海岸沿いの道を歩いているときに聞かれてつい、漢字の「漢」、羅針盤の「羅」と間違った字を言ってしまった。読みながら「しまった!」と赤面した次第だ▼さて、そのチェジュ・ツアー、2001年に4・3事件の慰霊祭に参加して以来14年ぶりだったのだが、現在は4・3平和記念公園になっているあたりで多分、その慰霊祭は行われた。だが、現地に再び行ってみてまったく記憶がない。わずか14年前のことがこの様だから、人が70年前の戦争のこと、それ以前の植民地支配のことなど記憶の彼方にやってしまうのも故なしとしないが、少なくとも韓国は、政府が67年前に米軍とともにやった不法行為を公式に謝罪して記念館を建て、この記憶を後世に遺そうとしている。それをさせる運動があった▼安倍政権やその一味は70年前以前のことを意図的に忘れ忘れさせ、憲法違反の戦争法を準備したが、いまその支持率が回復しつつある。苛立つ現象ではあるが、再度、過去の歴史も見据え、戦争法廃止の運動を強めるしかない。
奨学金問題
給付制度の早急な導入を 深刻さ増す“奨学金地獄”
■「兵庫・奨学金の会」設立から3年目
 「奨学金問題と学費を考える兵庫の会」(略称=「兵庫・奨学金の会」)は11月11日、神戸市内で第3回総会を開き、新年度の課題などを確認した。
 同会は、「奨学金問題全国対策会議」が2013年3月に設立されたのを受けて同じ年の6月に設立、3年目に入っている。”奨学金問題“が最近でこそ社会的な問題としてマスコミ等でも少しずつ取り上げられるようになってきたが、全国対策会議や各県の会ができるまではほとんど皆無だった。もし全国対策会議がまだできていなかったら、ほとんどの人が“返済問題”を誰にも相談できずに、個人的な問題として抱え込んだまま解決できずにいただろう。そういう意味でも「兵庫・奨学金の会」ができたことはとても意義があったと改めて思える。「アベ政治」の結果、ますます広がる“若者の貧困問題”が深刻化する中、奨学金を返済できない若者がさらに増え、残念なことだが、会の必要性は増えている。
 運動の成果として、昨年4月の法改正で返済猶予期間が5年から10年、遡上適用も可能になり、延滞金の減額・解消が可能になった。また、延滞金の年利率が10%から5%になった。そのことによって、「兵庫・奨学金の会」でも相談の成果があがっている。
■相談活動
 この2年半で電話相談・ホットラインなどを取り組み、相談件数は50件を超えている。当事者よりも母親や父親からが多い。そこから問題の深刻さ、複雑さを感じる。
 5年、10年と溜まっている膨大な利子、延滞金を含めた借金の返済方法を見つけていくには、その様々な事情をまずは寄り添って丁寧に聞くことから始まる。会の事務局長、弁護士、司法書士が中心になって対応しているが、この取り組みはお互いの気持ちが通じ合うことが大切だ。また、日本学生支援機構とのやり取りにはかなりの労力を必要とする。機構は当事者が直接相談しても丁寧な対応はしてくれない。ほとんどの人はそこで止まってしまうことが多いようだ。その間にも延滞金はさらに上乗せされていく。残念ながら、昨年度の改正内容を知らない、理解していない人が多いのが実情だ。
■知識は力
 そんな現状から、借りる前に高校生、保護者、現場の先生方に少しでも正しい知識を持ってもらおうと、「兵庫・奨学金の会」では「出前講座」を取り組んできた。すでに8回実施したが、受講者にはとても好評で、「現状を知らなかった。知って良かった」との感想が多い。たいていは、今の奨学金制度の改悪が1980年代に始まり、特に2004年、小泉内閣の特殊法人改革により日本育英会が廃止され、日本学生支援機構となり、奨学金が完全に「教育ローン化」したことを認識していない。この10年間で保護者の平均所得が100万円も減っている経済状況の中では、大学・専門学校へ進学するには奨学金を借りざるを得ない。しかし、何らかの事情で返済に困ったとき、正しい知識があるのとそうでないのとでは全く違う。ただ困り果てるのではなく、何らかの手立てができる。「助けて!」とも言える。高校生や保護者には事前に知識を身につけて賢く上手に借りてほしい。
 相談者の多くの方は、困り果てた先にどうしようもなくなり、長いことそのままにしてしまったというケースが多い。延滞者の8割以上が年収300万円未満。返したくても返せないのが実情だ。本人、保証人、連帯保証人に督促状がきていたが仕方なくそのままにしていたとか、債権回収業者から一括請求がきて驚いて会へ相談とか、機構からの支払い督促に基づき裁判に入り相談とかいうケースが多いが、そうなる前に正しい知識を持ってほしい。ヘルプ知識を多くの人に知ってもらえるように、今年度、会のメンバーの尽力でホームページを立ち上げた。
■給付型奨学金制度の導入の必要性
 先進国ではほとんどの国が奨学金制度は日本のように貸与制度ではなく、給付制度だ。日本の教育への公的支出はOECD34か国中、5年連続世界最下位。大学授業料があり給付制奨学金がない国は日本だけだ。若者を奨学金地獄から救うには、今すぐにでも「給付制度」を早急に導入する必要がある。
 今後の活動は、新たな「奨学金被害者」を生み出さないために、出前講座を始めとする啓発活動に力を入れて取り組むことや相談活動の窓口を広げるために他地域での相談体制の強化を図っていくことなどが必要だ。
 経済的なご支援(カンパのご協力)も、下記口座へよろしくお願いします。

新原三恵子(「奨学金問題と学費を考える兵庫の会」事務局)
※郵便振替口座:00940-8-172801 新原三恵子
止まらない社会の劣化
 「若者のひろば」ということですが、若者とはもう思えない年齢が近づいています。でも、今の世代の平均並みに、まだ子どもは小さいです。育メンできるほどワークライフバランスを実践できていませんが、毎日少しずつ、そしてあっという間の成長を見ることができているのはうれしいことです。
 でも、この子たちの将来、いや、それよりももっと近い将来ですら、決して明るくないのは悲しいところです。この数年、とくに現政権の政治で進んでしまったことは、確実にこの国や一般の人の生活にとっては取り返しのつかないことだったと思います。その状況を、国民が(という言い方は好まないのですが)どれだけ理解しているのか?とも思います。理解していても止まらないのか、理解していない人のほうが多いのかは分かりませんが、政治家の劣化だけでなく、日本人全体の知性のようなものが低下していっている気がします(「若者」なので過去を知ってるわけないんですが……)。
 極端ですが、たとえば最近気になるのは、一昔前なら通勤時に新聞を読んでいただろうサラリーマンが、今や朝からスマホでゲームにいそしんでいます。とは言っても、新聞も、すでに若者に限らず読まない人が多いようですし、新聞自体も、“会食”につられてすでにおかしいようですが。
 これからの子どものことで考えると、教育も気になります。自分の子どもはまだそんな年齢ではないので実感できないですが、歴史認識や教科書問題、道徳教育などが取り上げられているように、少しずつ歪められたり、骨抜きになっているのではないかと思います。今の政権に取り立てられている人たちも、どこで受けた教育だとこんな認識や発言ができるのか、と驚くことがしばしばですが、これからは普通に教育を受けてもそういう認識の世代が少しずつ増えていくのでしょうか。自分の子どもには、そんな中でも自分で考えて判断できるように正しく伝えたいと思っていますが。
 子どもの貧困や格差も拡がっていると言われています。教育を受ける期間についた格差は、その後の格差の固定化につながると思いますし、さらにその次の世代にも固定化していきます。怖ろしい負のスパイラルだと思います。
 ステレオタイプに暗いことばかり書いてしまいましたので、少しくらい明るいことでも書かないと、と思って探していたのですが、原稿締め切りの直前に、3万円給付で参院選“買収”とか軽減税率拡大のニュースが飛び出してきました。冒頭で「知性が……」と書きましたが、さらにカネを積まれるなら、やはり今の政権がまだ当面続くようで、明るい話題を探すどころかの気分で締め切りになってしまいました。

(森人 39歳)
悔しいが和解を選択
 豊岡自動車教習所に勤務していた田中秀和さんは、今年9月20日付で退職をした。昨年の5月にはパワハラ問題で、その後は休職後の職場復帰を求めて会社に団体交渉を申し入れて闘いを進めてきたが、体調の問題等で和解をせざるを得なくなった。大変残念で、悔しさと会社への怒りは抑えることはできない。
 この闘いの総括は組織としてはまだだが、1年余りにわたる団体交渉を中心とした闘いだったが(田中さんは5年余り)、闘いを進めるにあたって留意したことや学んだことの一部を報告したい。
 一つは、私ひとりが問題意識を持つのではなく、皆で共通認識を持って取り組まなければならないと思ったことだ。そのために交渉ごと(6回)に資料を作り、その交渉の意義や課題、要求の根拠と獲得目標などを意思統一して交渉に臨んだ。それでも交渉は相手があるからなかなか思うようには進まないが、交渉に参加した組合員が会社にを正式に立ち上げて初の交渉だったから交渉日の前はうまく交渉ができるのか、不安で寝つき一言でも発言できたことは今後に繋がると思った。こうしてできるだけ丁寧な取り組みを積み重ねていく以外に組織は強くなっていかないと思った。私自身もユニオンが悪かったのを覚えている。
 もう一つは、労働基準法など労働者保護の法整備が大変遅れていると思うことである。田中さんは入退院を繰り返しながら治療を続け、主治医の「3月21日以降、職場復帰は可能」との診断書を会社に提出したが、会社は会社指定の医師の診断、さらにサードオピニオンを求めてきた。ユニオンは、このような会社の行為は不当だと但馬労働基準監督署に行き相談したが、労基署は「法的には問題はない。交渉で歯止めをかけたら」との回答。しかし、会社は次で終わるとは言わず、これからも続くことを仄めかしていた。労基署の指導を要請したが、「労基署は中立の立場。法を守っているかどうかだ」と会社の行為を容認した。これでは組合未加入の人には相談にもならない。中立とはこの社会では強い者の立場に立つことを意味する。労働者保護の法整備を進めるには政治の力が必要だ。そうしたことも一つひとつ学んでいけるユニオンでありたいと思う。この間のご支援に感謝します。

岡田一雄(但馬ユニオン委員長)