「新社会兵庫」 6月9日号
- 世の中の流れからはあっても不思議ではないが、ややもすれば見過ごしてしまいそうな報道がある。北朝鮮バッシングが珍しくもない状況で、京都府警等が「総連議長の次男逮捕」という見出しが目に飛び込む。容疑はマツタケの不正輸入。「ああ、またか!」。拉致や核実験への制裁で貿易を制限、それで外為法違反と想像はつくが、「待てよ、マツタケ輸入のどこが犯罪か?」▼一方では自由貿易の「原則」を大上段に振りかざして食の安全や農業保護その他もろもろの「主権」を放棄するTPPは推進しながら、ここでは主権、政治が優先される。何ともこそばゆい▼このところ、居心地の悪い「政治」が頻出だ。ドローンが落ちたといってはまさに泥縄で規制法を準備する。だったら、つい最近も事故をやったオスプレイの飛行規制のほうが先だろう、と私なんかは思う▼こそばゆさのきわめつけは、戦争準備のための法律に「平和」というように実体とは真逆の名称が冠せられる。始まった国会審議では、とにかく「言ったもの勝ち」のような安倍の発言がかつての国会のように議事が止まることもなくだらだらと続く。6月、県弁護士会が主催する統一の集会もある。それに続くたたかいに全力だ!
- 9条違反の「安保法制」整備 日本国憲法とは両立しない
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安倍政権は、昨年7月1日に閣議決定を行った集団的自衛権行使容認に基づく「切れ目のない安保法制整備」を内容とする「閣議決定」を5月14日に行った。
「日本を取り巻く安全保障環境の変化を踏まえて」として集団的自衛権「行使不可能」としてきた憲法解釈を「(限定的)行使可能」にすること自体、憲法上疑義があると、まず指摘したい。政府の憲法解釈権とは行政権を執行する上で法律(憲法も含む)の枠内に合致するか否かの政府の公定解釈である。その意味で無制限な解釈・判断は許されず、自ずと限界はある。したがって、憲法第9条や前文の平和主義の文言を一字一句改正することもなしに、「安保環境の変化」という社会的変化により不可能を可能にするというのは、法解釈論上許されるものではない。この点を踏まえて、この度の安倍政権の提出した「安保法制」整備法案を見ないと本質を見誤ることになろう。
その上で、安倍政権が国会に提出し、現在審議されている2法案について検討していく。
「安保法制」整備法案は、自衛隊法や周辺事態法等現行10法を束ねて一括して改正することを目的とする「平和安全法制整備法案」、国際紛争において他国軍の後方支援を、イラク特措法のように、毎回、特別措置法という形式ではなく、「恒久法」としていつでも行うことを可能とする新法「国際平和支援法案」からなる。「平和」という語が法案に付されていることについて様々な批判的論調がみられるが、「武装平和」という発想を起点とする立場からすれば、かかることもあり得るのかもしれない。しかし、私は両法案について国民からみて安全や平和とおおよそ無縁な「戦争法制」と指摘せざるを得ない。
何故そう言えるのか。それは法案提出理由や法案にも明記されている、武力行使の「新3要件」の問題に尽きる。「新3要件」とは、@国の存立が根底から覆される明白な危険(日本と密接に関係する他国への武力行使も含む)、A他に適当な手段がない、B必要最小限の行使である。@では、「存立危機事態」として他国への武力行使に関して自衛隊も参加できるようになる。それでは新3要件がすべて満たされる事例とはいかなるものなのか。中東の石油が滞り、国民に死活的影響を及ぼすような場合、発動される。ただたんに経済危機などではないと政府はいう。全く意味不明である。国会質疑や政府答弁書でも「個別具体的なことは一概にお答えできない」としている。あれこれ法案提出理由を政府はいうが、その内容の曖昧、粗雑さを含め、何故、いま必要なのか、説明になっていない。自公両党は、集団的自衛権行使も「新3要件」で明確な歯止めになっており、「限定的」であるというが、前述のように「歯止め」にもならないし、日本が「限定的」行使を行っても被攻撃国からは限定であろうがなかろうが「交戦国」とみなされることに違いはない。その意味では「限定的」「必要最小限」の名の下、際限なく拡張されていくことになる。
「自衛権の行使」と言いつつ、事実上、「戦闘行為(戦争行為)」に陥る危険性もある。中谷防衛相は他国領内のおける武力行使について日本に明白な危険性を及ぼす危険があれば敵基地攻撃、自衛のための先制攻撃等も公言している。政府も「新3要件」を満たす場合は、憲法理論上可能であると答弁している。
事態についての乱立、乱造であるといわねばならない。「武力攻撃事態」を「発生事態」「切迫事態」「予測事態」等、切り分ける。他国軍への協力を規定する国際平和支援法を発動する事態は「国際平和共同対処事態」、「重要影響事態安全確保法」では「重要影響事態」という。これらの「事態」も明確な線引きや判断のための基準も不明瞭である。以上のように、安保法制法案は論議が深まれば深まるほど不明な点、憲法上の疑義が露呈する。世論調査においても、こうしたことを懸念してか過半数が「反対」である。至極当然の結果である。
安倍政権は、米議会演説で日米同盟強化の一環として安保法制整備を掲げ、この夏までに成立させると明言した。これまでの安倍政権の姿勢からすれば、このような国会軽視などたいしたことではないのだろう。しかし、この度の法案の内容「いつでもどこでも、そこが地球の裏側でも自衛隊を送れる」は、明らかに憲法第9条違反の「違憲立法」である。このような法案が成立すれば憲法の平和主義、第9条の存在・規範性が失われていき、やがては明文改憲への道を開こう。現在の憲法第9条・平和主義は決して「武装平和」を容認していない。そのことを強く指摘したい。
鈴田 渉(憲法・政治研究者)
- 真の世界遺産とは
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5月4日、「明治日本の産業革命遺産」にユネスコ世界文化遺産登録勧告が出た。昨年の富岡製糸所は「野麦峠」の製糸工場とは違い、官営工場で士族の娘たちを中心に模範的な工場だったのかもしれないが、どんなに多くの女性の命で製糸産業が進められたのか知ってほしいと思った。今回の世界遺産登録も、日本人労働者や朝鮮人、中国人労働者の過酷な労働があったことがあわせて説明されなければ納得できないし、おそらく韓国や中国からも反対の声があがるだろうと思った。
昨年9月、長崎の軍艦島ツアーに参加したとき、世界文化遺産に登録申請したので見学できるようになったと、女性ガイドが炭鉱労働の大変さと三菱の偉大さを本当にわかりやすく紹介した。しかし、朝鮮人労働者や朝鮮、中国からの強制連行で働かされた人々の状態について、どこに住み、どうやって働いたのか、何人ほどいたのかなどを聞いても分からなかった。唯一、中国人が連れて来られて住んだ場所は、警察がある場所のそばの空き地に建てられた木造の建物だと教えてくれた。
岡正治記念長崎平和資料館にも行ってみた。長崎駅から5分、NHK放送局のすぐそばだ。ここには軍艦島(端島炭鉱)の調査結果が展示されていて、1944年には朝鮮人500人、中国人205人、日本人1603人が働き、死者は朝鮮人15人、中国人8人、日本人64人とあった。また1925年からの21年間で死亡した中国人は15人、朝鮮人123人とあった。証言をたどると、中国人住居はやはり木造で周りに柵があり、朝鮮人はアパートの1階部分に詰め込まれた、とある。軍艦島は大雨や大風では大波がかぶさり1階部分などは水に浸かってしまう。劣悪な環境の中で、事故死だけでなく、病気で亡くなる人も多かった。そして、三菱鉱業は戦前も戦争中も戦後も利益を上げてきたが、強制連行や中国人、朝鮮人の労働の状況、犠牲者の状況については事実を明らかにしていないし、補償もしていない。
ガイドの滑らかな語り口を思い起こしながら、三菱の偉業をたたえ、戦後の軍艦島の労働者の生活が豊かだったことや、閉鉱時も労働組合との話し合いで一人も路頭に迷わせることはなかった、という説明はやはり一方的で、一部分しか伝えていないものだと改めて思った。負の部分を語ることなく世界文化遺産だと若い世代に語り継ぐのはどうなのかと思う。
これまでも登録されてきた世界遺産は、巨大な権力者の力で作られ、その建設造営には多くの民衆の犠牲とすさまじい労働がつきものだった。私たちが何を次世代に伝えていくのか、どのように伝えていくのか、と考えさせられる。「侵略戦争ではない」「従軍慰安婦はなかった」「南京大虐殺は嘘だ」などと、過去の歴史に向き合わないでいく日本は一体どういう国になっていくのか、恐ろしく思う。
今年6月には来年からの中学校教科書の採択が行われる。検定結果も酷かったようだが、あまりにひどい育鵬社や自由社の教科書を子どもたちに渡したくはない。教科書展示会に行き、ぜひ手に取って意見を書いてほしい。負の歴史も正しく伝え未来を創り出していく社会にしたい。
(K)
- 後を絶たないパワハラ、イジメの相談
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パワーハラスメントやイジメの相談が後を絶たない。一時期減少していたが、最近増えている。
4月末、大学を卒業したばかりの22歳の女性から相談があった。先輩女性からの厳しいイジメだった。
なかなか就職が決まらず、西区にある機械部品製造会社に3月に就職が決まった。社長から「4月で辞める社員の仕事を引き継いで欲しい」と言われ、3月9日からアルバイトで働き、4月から正社員として採用されることになっていた。事務の仕事が初めてで覚えられないことも多くミスもあった。周囲は最初のうちは親切にしてくれていたが、3月末には態度が変わり、仕事を教えてもらえなくなっていった。
先輩の女性社員は「○○さん、やる気あるの?」「○○さんじゃなくてもいいねん。もっとできる人ごまんとおるわ」「電話も1回で取られへん。数は数え間違える」「そういう人、会社にいらんねん」「ものにならない人雇ってる余裕ないねん」「全然努力してないやん」「パソコンとにらめっこしとったらお金になるんやろ」と毎日のように追い込んだ。ゴミ袋の縛り方、台ふきんの洗い方までチェックし、親のしつけがなってないと家族のことにも話が及んだ。
相談女性は4月末から会社に行けなくなり、現在は医師の診断で休職している。いじめている先輩女性は、過去にもイジメで退職に追い込まれた社員がいたという。
私自身を振り返ると、仕事ができずに厳しい指導をされたこともあった。もう辞めたいと思うこともしばしば。それでも続けられたのは、指導してくれた先輩も回りで聞いていた先輩も、ちゃんとフォローしてくれたからだ。なぜ怒られたのか、厳しく言われたのか、今度はどうすればいいのかなど、仕事が終わった後にも付き合ってくれた。だから、つらいことも乗り切れた。最近の相談にはそうした人間関係がない。
相談女性は退職を希望しているが、このまま自分から退職するのは悔しいという。これからはユニオンに加入して交渉を始めるが、相談女性が必要なことは、イジメに対応する力と人間関係を作る方法を身につけること。ユニオンでも「いじめられっ子講座」が必要なのかもしれない。
木村文貴子(神戸ワーカーズユニオン書記長)
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