「新社会兵庫」 2月24日号
 「安倍政権になってね、日本はブレーキのとれた暴走列車のように猛烈な勢いで下り坂を突っこんでいる。誰も止められない。マスコミも止められない」(作家・作詞家のなかにし礼氏「人生の贈りもの」/朝日新聞2月12日夕刊)―。まさにその通りのように、この政権、この人の暴走は止まらず、勢いを増している。ほんとうにこの人は戦争をしたいと思っているのだろう、と見てしまう▼とくに最近の言辞にはある種の高揚感が強く漂い、好戦的な響きが伝わる。日本人人質事件をめぐって、「テロリストたちを絶対に許さない。その罪を償わせる」と、外国のメディアをも驚かせた。「テロリストの思いをいちいち忖度して、それに気を配る、屈するようなことがあってはならない」という国会答弁も同じ文脈だ▼そんななか、自衛隊の海外での活動領域を拡大する安保法制の整備作業が進められ、来年の参院選後には改憲発議と国民投票の実施を目指すという明文改憲の道筋と政治日程がいよいよ明らかにされた。すでに役所には総務省作成の「憲法改正国民投票」を解説するビラも置かれている。自民党は改憲の賛同者を拡大する国民運動の展開も方針化した。戦後70年、日本の将来の岐路となる年だ。
許すな!労働者の使い捨て、使い潰しの「残業代ゼロ法案」
(1)現行法と長時間労働の現実
 いま、労働基準法では、「週40時間(1日8時間)を超えて労働させてはならない(同法32条)」という労働時間の上限が定められており、労働者代表と協定を締結しなければ残業や休日出勤をさせることができない(同法36条)。また、残業や休日出勤をさせた場合、使用者に割増賃金の支払いを義務づけている(同法37条)。
 そもそも「残業」は変則的な働き方であるのだが、低賃金から残業を求める労働者も少なくなく、企業にとっても人員増よりも安上がりにつくため、長時間労働が広がっている。
 残念ながら日本ではあらゆる職場で不払い残業がまん延し、違法状態が放置されたままにある。労基法違反は刑事罰まで科せられるとはいうものの、実際は、「未払賃金がばれたら支払って終わり」であり、それ以上のお咎めはないからだ。
 そのため、長時間労働が原因の「脳・心臓疾患(いわゆる過労死など)」や「精神障害」が多発している。2012年度の過労死などは2012件が認定され、精神障害は475件が認定された。精神障害は、前年比150件増で過去最多となっている。
(2)犯罪行為の取り締まり強化で労働時間の削減へ
 厚労省が昨年9月に設置した「労働条件相談ほっとライン」と11月の「過重労働解消相談ダイヤル」では、3422件の相談のうち、長時間労働・過重労働が444件、賃金不払い残業が588件であった。
 「労働時間は日報で管理しており、長いときは1か月200時間以上、最短でも1か月80時間の残業をしている。会社も次から仕事をもらえなくなるため、仕事を断れない(40代、トラック運転手)」、「1日5時間、1か月90時間程度の残業をしている。労働時間はタイムカードで管理しているが、毎月、36協定の上限(1か月45時間)を超えないように、残業時間の途中でタイムカードを強制打刻させられ、タイムカードどおりしか残業手当が支払われない(10代、自動車部品の製造)」など、ずさんな労働時間管理の中で、長時間労働や賃金不払い残業が横行している実態が労働相談に寄せられている。
 いま求められていることは、不払い残業という犯罪行為を取り締まり、社会全体で労働時間削減に取り組むことである。
(3)「時間ではなく成果で評価される働き方」はウソ
 ところが、安倍政権は働き過ぎ防止のための法整備として、「長時間労働の抑制」や「時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応え、その意欲や能力を十分に発揮できるようにするため」として、「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」を設けるという。「残業代の適用除外を拡大しよう」というのだ。
 すでに多くの労働者が成果主義賃金で働いている中で、「成果で評価される働き方」のために、新たな労働時間の適用除外を設ける必要はまったくない。
 また、使用者側は「残業代ほしさに長時間労働をしているから、残業代が支払われなければ、長時間労働をやめる。だから長時間労働の抑制につながる」と説明するが、それはあまりにも労働者を馬鹿にしている話だ。そもそも労働時間管理は使用者の責任であり、使用者がまじめに労務管理すれば足りる。連合総研の調査(2013年12月)でも、残業する理由は「人手が足りないから」46・8%、「突発的な仕事があるから」 42・6%、「残業を織り込んだ業務運営となっているから」27・2%となっており、残業を強いられていることは明らかだ。つまり、「新しい時間制度」導入によって労働時間短縮・長時間労働の抑制にはつながらない。また、「新しい時間制度」は、労働時間規制の適用除外を設けるだけで、使用者に成果主義賃金を義務づけるものでもない。
 結局のところ、2007年に破綻したホワイトカラー・エグゼンプションの焼き直しでしかなく、「残業代ゼロ法案」との批判を避けるために名前を変えただけに過ぎない。この制度によって、労働者は携帯電話と同じ「定額使い放題」とされるのだ。
 今通常国会には、こうした内容の制度が法案化され、上程されようとしている。労働者を使い捨て、使い潰すこんな法律は絶対に許してはならない。

塚原久雄(労働法制総破壊に反対する兵庫県
共同アクション実行委員会・事務局)
新たな世代がすべきこと
 若者は語る?何を語る?若者を騙る?若者をめぐる言説には胡散臭さがつきまとう。「若者」は礼賛される。その可能性(人的資源として)、感性に(新たな消費ターゲットにはぴったりだ)、そして身体そのもの(性産業と軍隊は若さを賛美する)。そのような「若さ」は動員されるべき資源として欲望されるのだ。ファッションとポップカルチャーと低賃金労働において「若さ」は陳腐な賞賛をうける。
 その一方で、若者は政治的領域においては奇妙なほど存在感をなくしているのである。若者の自律的空間であり政治運動の場であった大学は、管理教育の度合いを高め、就職予備校と化した。若者は奨学金で借金漬けになりながら、商品としての自己を「高く売れる」ようにすることのみを方向づけられる。このような社会は極めて強いストレスとフラストレーションをため込んでいる。自己実現や楽しむこと、幸せになることを義務づけられているかのようですらあるからだ。
 日本における若者の自殺率は高い。引きこもりや精神病なども、そこに消極的な抵抗、無意識の内のシステムの拒絶、離脱への傾向を見ることも可能だ。
◇              ◇
 1968年は政治の季節だった。そのころに28・5%いた若者人口はいまや15・2%ほどだ。若者は少ない。受け継ぐべき過去の遺産(負債?)は重くのしかかる。それは左派の運動においても変わらない。伝統的(左翼的!)な言葉づかいから活動家的身振り、輝かしい古典的理論から教条主義まで、そして会議・会議・会議。これらを身に着け、再演するだけで消耗する。新しい言葉、確率されていない概念、いま形作られようとしている問題意識、認識。それらの萌芽にとって、過去の伝統は重苦しい。
 成長時代の黄昏を象徴するオイルショックとインフレの時代は40年ほど前の話だ。あの時代は学校から工場やオフィスへ、画一的な労働、団地に象徴される画一的生活によって規律・訓練される「労働者」の時代だった。今や、非正規労働と失業・反失業の若者で満ち溢れている。70年代の正規労働者の裏面であった期間工や日雇い労働者が若者の雇用形態の前面に躍り出たのだ。われわれの生が二次産業をモデルとした「労働者」というアイデンティティでは回収できないものに、従来の社会主義的な概念では表象しきれないものになった。今ある多様な抵抗を認識し、多様な解決策を考案することは若者のもっとも重要な任務である。そのためには過去の継承と断絶を共におこなうことだ。
(森野 一・35歳)

※今号から始まった新コーナーです。若者からのメッセージの場です。今後、隔月で連載の予定です。【編集部】
アスベストユニオンへの相談
 アスベストユニオンの大会が1月18日に広島県呉市で開かれた。前日には呉でアスベスト相談会が取り組まれ、住友ゴム分会の正木分会委員長らと相談を受けた。相談会には、広島のアスベスト弁護団からも全面的に協力をいただき、面談13件、電話4件の相談に対応した。
◆労災請求時効の相談
 相談を受けたひょうご労働安全衛生センターの西山事務局長は「どうしたらいい?」と、相談スタッフに投げかけた。すると一斉に、「団体交渉しかないで!」「働いてきた会社に補償を求めたら」と声が上がった。今後、アスベストユニオンとして交渉をしていくことになった。
◆退職者の団体交渉権
 交渉による解決は、労使ともにメリットが大きい。ひとつは、双方にとって経済的負担が小さいことだ。また、労働者にも「お世話になった」という思いもある中で、会社がすぐに謝罪することで被害者感情も和らぐ。さらに、いずれにしても支払うことになる補償を早期の話し合いでまとめればそれに越したことはない。
 残念ながら、住友ゴムとは団体交渉で解決ができず、いま損害賠償訴訟を争っている。遺族は、そんな住友ゴムの姿を見ながら、「残念だ」と思い続けるのだ。
塚原久雄(ひょうごユニオン事務局長)