「新社会兵庫」 11月25日号
 立ち寄った道の駅で、ジャム用の完熟イチジクを買った。2キロ以上あったので大鍋を引っ張り出す。身を軽くつぶしながら、アクを丁寧にとり、焦がさないよう煮詰める。ガラス瓶を煮沸消毒して煮上がりを詰める準備。バタバタと過ごす日常の中でほっとする作業でもある▼嫌なニュースが多い。人間関係や生活の苦しさの解決にむけて、「悩みを話してみる」ことすら知らず、すべて自分の中で決着をつけるには「終わらせる」しかないと思っているのだろうか。命の尊さを教えるということは、「人間らしく生きる権利は普遍のもの」、その具体化は日常を保障する制度・政策にあることを、教育によって繰り返し教えていくことだ。明日も元気に働ける、家族や友人と語らう時間がある―、そんな当たり前のことさえ見いだせない。それが、現在の働き方、福祉の諸制度等々が生み出した結果である▼今年の師走は、一強与党が4年間やりたい放題するために仕掛けた総選挙になる。消費税再引き上げや労働者派遣法「改正」は先送るなど、ちょっと抵抗されそうなものは選挙後でよいとの判断だろう。われわれ庶民はもう一度みんなが人間らしく暮らすことの本質を考え、この選挙に臨みたいものだ。
労働法制の総破壊と闘おう
派遣法改悪、残業代ゼロ制度を許すな
 安倍政権は、労働者保護のための労働法規制が経済成長の足かせだとして、その緩和を推し進めている。その矢面に立たされているのが労働者派遣法である。先の通常国会では法案の不備から廃案となり、今の臨時国会に再上程され、10月末から審議が始まった。しかし、法案を所管する厚生労働大臣すら答弁を間違うほど、異常な法案なのだ。
 法「改正」の内容とは
 「改正」案の柱は、派遣先での派遣労働者受け入れ期間の制限撤廃である。現在、製造業や一般職への派遣は、同じ職場で3年以上派遣労働者を受け入れることはできない。なぜなら、派遣はあくまで「一時的・臨時的業務」であることが前提だからだ。これは、「3年経ってもその業務で人が必要なら、今まで働いてきた派遣労働者を直接雇いなさい」という制度だということを理解する必要がある。 安倍首相は、「改正案は柔軟で多様な働き方を実現するものだ」と説明するが、派遣労働者の正規雇用への道を断ち切る。つまり、「柔軟で多様な働き方」とは正規雇用から派遣労働への一方通行だというものだ。だから、野党は法「改正」によって派遣労働者が増加し、「一生派遣」という人たちが出てくるではないかと懸念を示している。
 戦後、派遣労働がなぜ禁止されたのか、現場で派遣労働者はどんなトラブルに直面しているのか、など本質的な問題をないがしろにして、「経済成長」=いかに企業が儲けるか、が労働者保護法「改正」の前提条件となっているのである。
 担当大臣もビックリ
 「改正」案には、正社員から派遣社員への置き換えを防ぐ目的で、過半数労働組合等からの意見を聴く義務が盛り込まれている。11月5日の衆議院厚生労働委員会で、野党からの「労働組合が反対しても企業が派遣労働者の受け入れ期間を延長した場合はどうなるのか」との質問に対して、塩崎厚生労働大臣は「(労働組合が反対しているにもかかわらず強行するのであれば)企業内の民主主義が成り立たず、労働局が指導をすることは当然だ」と答弁した。ところがこの答弁は間違いで、労働組合が反対しても「労働組合等からの意見を聴くだけでよい」のであって、派遣会社から「説明」さえすれば実施できるのであり、何の歯止めにもならない。担当大臣すらビックリの法案なのだ。
 野党共同提案の「同一労働同一賃金法案」
 労働者派遣法の「改正」に対して、野党が共同で「同一労働同一賃金法案」を提出した。日本では、雇用形態による身分差別ともいえる格差が存在している中で、差別をなくすとともに、置き換えによって労働者の賃金や労働条件を維持させようというものであり、派遣法とセットで議論を求めている。
 労働時間の規制緩和
 永田町では解散風が強まる中、労働時間の規制緩和に向けた動きが続いている。 11月11日の労政審労働条件分科会では、労働時間ルールのあり方をめぐり議論がなされた。議題は、「中小企業に対する時間外割増率の猶予措置撤廃」「時間外労働の上限規制」などだ。中小のトラック運送業では、手待ち時間を含めて長時間労働が横行しているにもかかわらず、月60時間超の残業に5割増し賃金が支払われていないことの是非について論議された。時間外労働の上限規制で、使用者側から、「一律規制は企業活動の柔軟性を損なう」「手待ち時間や人手不足など業界特有の事情があり、一律・強制的な規制は企業活動を阻害する。上向きかけた経済をデフレ経済に引き戻しかねない」などの意見が出た。
 労働側から、「手待ち時間も含め、労働時間が適正に料金に転嫁できていないことが問題」「競争の源泉はコスト削減ではなく創造力やイノベーションだ。長時間労働を是正し、労働者が十分な休息をとり英気を養うことがむしろ競争力を高める」などと主張した。
 次はいよいよ長時間労働抑制策と残業代ゼロ制度も焦点になる。
 ナショナルセンターの枠を超えた派遣法改悪反対の取り組み
 10月29日、衆院議員会館前には6年ぶりに連合が国会前座り込みを行い、雇用共同アクションも参院議員会館前での座り込みと、事実上ナショナルセンターの枠を超えて労働者派遣法改悪反対の声を上げた。
 私たちはこの1年、兵庫でターミナルでの宣伝行動や学習会、デモや署名活動等に取り組んできた。国会解散で今国会での成立は断念されるだろうが、引き続き労働者保護法の改悪阻止に向けて、兵庫でも大きなうねりをつくっていくために努力をしていく。
(11月12日記)
塚原久雄(労働法制総破壊に反対する兵庫県共同アクション実行委員会)
友達と登った大山
 私の友達の旦那さんが亡くなって、今年の夏、7回忌を迎えました。こんなに辛いと思ったお葬式はないというぐらい、棺桶にすがりついて泣いていた友達の姿が今でも忘れられません。一緒にいってしまうんじゃないかと心配で、しばらくの間、毎月泊まりに行きました。数か月してから、やっと職場に旦那さんの荷物を取りに行けたと報告してくれました。
 亡くなった旦那さんは仕事に生きがいを感じてるお巡りさんで、友達自身も好きで就いた職場で知り合った2人でした。検診結果が悪くても忙しさから病院には行かず、結局わかったときには手遅れだったので、友達なりに夫は仕事に命をとられたと思っていたようです。なので、そんな職場に行くのが嫌だったことがその時わかりました。
 旦那さんの荷物の中に1冊の手帳が入っていました。開いてみると亡くなった年のスケジュール帳でしたが、その中に私の友達に告白された日やデートの日が何気に記されていました。結婚して10年以上になります。旦那さんのことをここで少しお話しすると、見た目はトミーズの雅さんに似ており、友達とは9つも離れています。友達の一目惚れでしたし、人柄も良く仕事一途な方でした。そんな旦那さんが思いもよらない書き込みや財布に彼女の写真を持っていたことを後に知り、友達の気持ちは嬉しさと驚きと、そしていっそうの寂しさと、まるで映画や小説みたいやなぁと言い合ったものです。
 そんな友達が最近、遊びに行くたび、「大山に登ろう」と言うので、今年は友達と、友達の言葉を借りると「忘れがたみ」の友達の娘と3人で登りました。お葬式の日、すでに旦那さんによく似て背が高く、泣き崩れる友達の体を頭一つこえて支えていた中学生の娘も大学生になりました。文字通り、この娘がいたから友達は生きているんだと思います。「大山」は、まだ娘が赤ちゃんの頃に旦那さんと登った山だそうで、結局、体力があった友達が娘を抱いて登り、旦那さんはついて登るという懐かしい思い出と共に大らかで雄大な「大山」が友達には旦那さんに見えるんでしょう。山頂についてから、私達より重い荷物を入れた20キロもあるリュックサックを下ろし、お湯を沸かしてくれました。「山頂でラーメン食べよう」。
 友達と出会ったのは高校生の時で、友達の中では一番可愛く、猫のように人になつかない友達でしたが、いろんなものを乗り越え、強くたくましい人になりました。そんな彼女の気持ちが嬉しくて、今まで食べたラーメンで一番美味しく、いつもはおしゃべりな私が一人黙って感動して食べました。
(S)
定期監督の75%が労基法違反
 今年9月の労基署交渉(西宮・神戸東)の中で2点について質問を行ったが、そのことについて報告したい。
 ユニオンあしやへの労働相談は最近ほとんどないが、今回、交渉前段に兵庫労働局から提出された資料を見ると、2011年以降、総合労働相談件数は減ってきている。しかし助言・指導の申出および紛争調整委員会によるあっせん件数は同年以降、右肩上がりの状況となっている。
 このことは何を意味するのかと尋ね、私の見解も述べたが明快な回答は無かった。
 今年8月、兵庫労働局は、昨年定期監督を実施した県内事業者(5037件)の75%で労働基準法や労働安全衛生法の違反があったと発表した(3792件)。違反率を公表するのは初めてとのこと。
 業種別では、飲食店を中心とした「接客娯楽業」の違反率が85%と最も高く、小売店などの「商業」、病院や介護施設などの「保健衛生業」が80%と続く。違反事項別では「違法な時間外労働」26%、「割増賃金を適正に支払わない」が17パーセントと続いている。
 私は神戸東と西宮の両労基署交渉に出席したが、過去の資料と見比べると、この4年間で適用事業場の労働者数は西宮では1万人の増だが、神戸東では11万人の増となっている。
 前述の「違反率」の業種などを考えると、郡部よりむしろ都市部の方に問題があるのではと思い、いわゆるブラック企業対策について神戸東署の対応者に尋ねたが、一監督署で対応できるものではないとの回答が返ってきた。まだまだユニオンへの労働相談には至っていないが底流では凄まじい実態があるのは想像がつく。
 その実態を浮き彫りにしていくためにも日常活動の活性化が問われてくる。しかし、なかなか全体的に元気が出てこない状況があるのではないだろうか。それをどう克服していくのか。そのことが今、ユニオンに求められているのではないだろうか。
大野克美(ユニオンあしや)