「新社会兵庫」 8月26日号
 8月6日朝、69年目の広島・平和公園での平和記念式典をテレビで見ていた。松井市長の平和宣言は7月1日に政府が行った集団的自衛権行使容認の閣議決定に触れなかったことが一定の議論を呼んでいるようだが、市長や子どもたちのアピールに続く内閣総理大臣のあいさつは、安倍の口をついて出てくる言葉と現実、彼の意図していることとのあまりにしらじらしい乖離に愕然とさせられる。第2次安倍政権が発足してからずっとこんな調子だ▼さて、6日に続き9日は長崎の平和祈念式典。広島市長とは違い、田上長崎市長は平和宣言で集団的自衛権行使容認に懸念を示した。広島市長と長崎市長の平和宣言、どっちがよかったかというような問題ではなく、その長崎市長の宣言に国会の自民党筋から批判が浴びせられている▼武蔵野市長も経験した土屋某が、「集団的自衛権うんぬんという具体的政治課題に言及すれば(核廃絶を語る)権威が下がる」「(平和維持の)政治選択について語りたいなら市長を辞職して国政に出ることだ」と、信じられないようなケチをつけた。人を見下す安倍の同類のようだ▼自治体首長が、首長でなくても市民が国政に意見を表明する。至極当たり前のことではないか。
改めてTPPを考える/労働運動の国際的連携が必要
 TPP(環太平洋パートナーシップ)については、日米2国間交渉が昨年末に締結ができず、さらに今春のオバマ来日前後も締結できないままに継続交渉となって、秘密交渉の雰囲気すら漂っている(参加国は秘密保持に署名し、合意後も詳細は4年間公表されない)。
 TPPを考えるにあたり、あらためてTPPの概略に触れておく。
 (1)TPPは2006年、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国間で発足した「環太平洋戦略経済連携協定」(4P協定)から生まれた。2010年にアメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアの5カ国が協定交渉に参加、2012〜13年にメキシコ、カナダ、日本が交渉に加わり、本年中での全体交渉の締結を目指している。
 1995年に設立された世界貿易機関(WTO)が貿易円滑協定を求めて、150カ国が参加したが、先進国と途上国とが折り合わず、そのためにTPPのように、各国間、地域別でのFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)の交渉に移行している。FTAは締結国間で関税や企業への規制を取り除いて自由な取引を進める。EPAは物流のみならず、人の移動、知的財産、投資、競争政策などさまざまな分野での連携を強化しようとする。FTAよりEPAが2国間ないし地域間の親密度ある協定と言える。
 (2)交渉分野は21項目の多岐にわたり、主なものを上げると、@物品市場アクセス A貿易円滑化B政府調達C知的財産D競争政策E金融サービスF電気通信G電子商取引き H投資I環境ルールJ労働K紛争解決……、である。財(物品)ばかりでなく、投資、サービス、知的財産、さらには経済政策にまで及ぶ協定内容であり、最終的に全体合意を取り付けて地域経済圏の確立を目的としている。
 APEC(アジア太平洋経済協力)が、TPPの加盟国に加えて中国、韓国、台湾、香港、ロシア等合わせて21カ国で定期的に協議が行われている。アメリカはEUとも環大西洋貿易投資協定(TTIP)の交渉を始めている。日本は昨年からEUとのEPA交渉に入っており、今年7月にTPP仲間のオーストラリアとEPAを締結し、同じ頃モンゴルとEPA交渉が大筋合意に達した。韓国はTPPへの参加表明を行い、TPP参加国の同意を得る交渉を行っている。いまや各国が世界中を縦横に貿易自由化に向けて奔走していると言える。TPPを捉えるには世界の動向に目を向けておく必要があろう。
 さて、TPPでは、各先進国政府が多国籍企業の支援、誘導に主眼があり、途上国は海外資本を呼び込み、技術導入を図り、産業発展の不均等を克服することにあり、TPPへの双方の思惑が一致する。国家と多国籍企業とが連携し絆を強めている。
 日本の主要産業は、銀行、鉄鉱、ビール・飲料、自動車、小売業等々は国内で寡頭体制を形成している。海外進出は当初の段階を終え、各分野で国際的にM&Aないし間接・直接投資を繰り返し巨大化して行く。日本企業も含めて世界の多国籍企業が世界ないし地域規模での独占を目指した競争が激化する。
 今後の注目点として以下のことがあげられよう。(1)途上国の経済成長は著しいとは言え、先進国からの投資リスクは避けがたく、EUでの南欧の債務問題のようなことがTPP内でも南北問題として起こりうる。(2)労働市場では、国内に海外の出稼ぎ労働者が流入する。家事労働、「3K」の労働を担うべく論議がされている。また、逆に国内が空洞化して、労働者は今以上に海外に職を求めねばならない事態が起こりうる。労働法制の改悪、労働状況の悪化は労働者に重くのしかかる。(3)最近、貿易赤字が出ているが、経常収支が黒字を維持しているのは、第1次所得収支(対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支)が伸びているからである。今後も第1次所得収支は増加するであろう。これは投資先の国民・労働者からの収奪と搾取の集計である。
 今後の問題点については、農業、混合医療、知的財産等多面にわたってあるが、ここでは紙面の都合で述べられない。
 私たちは、TPP反対の声を上げ、労働法制の改悪を阻止する運動を強化せねばならない。労働運動は韓国をはじめ国際的な連携を模索する時期にあるだろう。
菅沼祥三(憲法を守る会・垂水)
私、着付け師になりました。
 職場の退職から11年、「候補者」を卒業して13年。「職場」というものを持たず、働いて何がしかの対価を得る生活から遠のいていたが、最近年に数回、働いてその対価を得る機会を持つようになった。きっかけは少々説明が必要で……。
 13年前、自分で決断したことではあったが、今日から仕事がないという状態は、心身を疲労のどん底に落としたような気がしたものだった。起き上がれず、眠れず、目標が持てず……。そこから救い出してくれたのは水泳の練習だった。先輩に背中を押されて自分に出来ない(カナヅチだった)ことを克服しようと、おばさんにもブクブクパーから懇切丁寧に教えてくれる教室に通い、肉体的に疲労困憊すれば嫌でも眠れ、少し泳げるようになると長年の付き合いだった肩こりが消えており、お腹がすく、美味しく食べる、便秘も解消と良いことが増え元気になっていた。
 その勢いで、朗読ボランティアを始め、「ぴぃぷる」で使ってやるというので意気に感じて関わり、友人が仕事を辞めてでも高齢者住宅をつくりたい、人間らしく暮らせる社会の何か具体的な運動をしたいという決断に失敗させられないと一緒にやってきた。
 動き出すと次々新たな出来事が生まれる。県本部の皆さんと旅した奄美大島で一目ぼれした大島紬を一反購入。着物に仕立てたはいいけれど実は着物は着たことがない。着たいときすぐ着られるように習うしかないと教室通いを始めた。宣伝文句では3カ月で着られるはずが、週1回の練習ではまったくダメで、何より不細工な着方で表に出るのは自分が許さず、もう少し、もう少しと4年間習い続けた。おけいこ事は何でも同じらしいが、いつの間にか「自分が着るから人に着せる」へ授業内容は変わっていき、上のクラスに上がるためには認定試験があり、お安くない認定料を払ってお免状をもらう。よけい途中で辞められず、その間仲良くなったおばさん仲間4人で「いずれ仕事にして少しでも稼ごう」と野望を持つまでになった。卒業時に面接を受けたブライダル会社や自主勉のつもりで誘われた教室が成人式の着付けなども引き受けていたことから、今年の成人式には振袖の着付けの一員で仕事し、初めて報酬を得た。
 人間正直なもので、仕事として着付け対価を得るともっときれいに着せたい、喜んでもらいたいと素直に思う。成人式の朝の3時起きや結婚式場の留袖着付けは体力次第だが、タンスに寝ている着物を楽しみたい人に役立つ着付けなら長くできそう。おばさん4人はグループで仕事を探そうと名刺まで作ってしまった。
 さて、今の課題は、自分で着られるようになったら県本部に着物を着ていく約束をいつ実行するかという事。何年かかっているのですかと笑われている。
(岡崎宏美)
継続した運動の力を信じて
 7月1日をもって日本は「戦前」になってしまった。日本国憲法には明確に「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永遠にこれを放棄する」とあり、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とある。つまり「武力の行使」どころか「武力による威嚇」さえ、また「陸海空軍」どころか「その他の戦力」の保持までもが禁じられている。それなのに、「集団的自衛権」が閣議決定され、「戦争ができる国」が誕生してしまった。
 安倍政権が暴走しているように見える。しかし、私は、暴走ではなく、綿密で周到な計画の元に実行されてきていると思う。今年の6月には第1次安倍内閣で成立した新たな教育委員会制度の関連法がすべて整い、民主教育を旨とした戦後の教育委員会制度が完全に消滅した。来年からはマイナンバー制(国民総背番号制)が施行される。昨年末には特定秘密保護法も強行可決された。さらに、原発の再稼働と輸出、TPPへの参加、年金の削減、消費税10%後のさらなる増税、労働法制の全面改悪等々、一口で言えば、新自由主義を貫徹するために、労働者からの搾取を一層強める構図だ。
 しかし、民衆は反発しないのか。安倍の祖父・岸の時には、民衆の反発を招き、労働運動を高揚させてしまった。そこで、50年の歳月をかけて労働運動を沈静化させ、護憲勢力を分断させた。大手の労働組合のほとんどが、官製春闘にも抗議をせず、「会社あっての労働組合」と公言するようになった。今がチャンスと安倍はお座敷の掃除に乗り出したのだ。
 私達は、何もできないまま大きな波に飲み込まれてしまうのであろうか。
 6月5日、姫路駅前で労働法制改悪反対の街頭行動をしていると、一人の女性が話しかけてきて、6月19日の神戸での緊急デモにも参加してくれた。また、6月16日にはホームページで見たと、組合加入者が事務所を訪れた。小さい出来事かもしれないが、継続した運動の力を信じ、労働運動の再生に力を尽くしていこう。
森山容光(姫路ユニオン委員長)