「新社会兵庫」 7月8日号
 安倍首相は自らの目指す外交を「地球儀を俯瞰する外交」と言っている。つい、チャップリンの映画「独裁者」が連想される▼ヒトラーを擬した独裁者ヒンケルが地球の形に膨らんだ風船を、まるで世界を手中におさめたかのように、つき遊んでいる。もてあそびが過ぎて風船はヒンケルの顔前で破裂する▼首相も、ごく普通に世界の平和を目指すと言えばいいのに、たいそうに「地球儀を俯瞰」などと言うところに不遜を感じる。平和を語ると言いながら、自衛権という言葉で戦争ばかりを論じているように、首相の言葉遣いがおかしいのは、今に始まったことではない▼思考回路も変だ。相手を抑えつけておくことが平和だと考えて、「積極的平和主義」と言う。強い武力行使に腐心する。抑えつける平和は不安定で、発火点に向かって動揺する▼第1次世界大戦は勃発ちょうど100年になるが、こうして始まった。惨禍があまりにも大きく、戦争を犯罪とする考えを生みだした。しかし、「自衛」という免罪符をつくる輩もいる。「集団的自衛権」や「集団的安保」という文字を「自衛」の中に見出そうと虫メガネを覗く読解落第生もいる▼国民を支配しようとする政治は、威嚇や騙しの手口も露骨になる。
戦争への道を許すな 大きな歴史的曲がり角だ
 近代は、「国益」のためには「力の論理」がまかり通る時代であった。近代史は戦争史でもあり、戦争の残酷さ、悲惨さのゆえに繰り返し非戦の思想も浮上したが、実現しなかった。日本国憲法は、前文に明らかなように世界中の人々の平和的生存権のために、この近代史に、戦争放棄・戦力放棄で挑戦したのである。
 日本の戦後史は、この挑戦をサボタージュし、再軍備で強い日本(最終的には自主憲法制定)をめざす勢力と、憲法を守り、政治や社会に生かす勢力の攻防の歴史である。「冷戦」下、アメリカの占領政策の転換もあって、自衛隊の発足(1954年)を許してしまった。しかし、「自衛」隊であり、専守防衛に徹すると、自衛隊が海外で武器を持って殺し、殺される事態は許していない。保守・革新、右翼・左翼を問わず「日本国憲法のもとでは戦争はできない」と最高法規として憲法の権威があった。それは「平和(第9条)こそが土台」という国民の良識に支えられた戦後政治の攻防の結果である。文字通り「第9条」は、ノーベル平和賞ものなのである
 だが、安倍自民党は、第9条に対するクーデター(解釈で亡きものにする)を仕掛けてきている。揺れ動く世界情勢の中で、日米安保を「血の同盟」として、自衛隊が海外で米軍と肩を並べて戦う条件整備である。安倍の前のめりの姿勢は、時代錯誤の大日本帝国の復活を夢み、「アメリカにとって代わって、世界の警官になる」妄想患者のようだ。東シナ海で中国機の異常接近のニュースが続いている。偶発事件の危険性もあり、今の緊張関係では武力衝突に発展しかねない。
 そして忘れてはならないことがある。私たちは憲法を武器に、それを生かす闘い(=民主主義)を積み上げ、不十分で満足のいくものではないが、今日の人権、教育、労働、社会保障、地方自治……を築きあげてきたのだ。衆参選挙の圧勝を受け、第9条に限らず、安倍自民党は、それらを一挙につぶそうと、「お友達政治」(安倍独裁)を展開している。
 何としても安倍のクーデター計画、集団的自衛権の行使容認の閣議決定・関連法案の成立を阻止しよう。
 だが容易ではないのも事実だ。6月12日、「戦争をさせない1000人委員会」の日比谷野音の集会に参加した。約3000人の危機感あふれる集会だった。しかし、壇上の国会議員は、社民と民主の一部、共産の代表など圧倒的に少数だ。これが社会党・総評ブロック崩壊の結果・現実である。国会では翼賛体制が進む。安倍の暴走の背景であり、それを止めるには、大衆運動しかなく、政治を変えるため地方から共同戦線、統一戦線を積み上げていこう。今求められているのは、一人ひとりの決意と工夫である。
 解釈改憲に反対する闘いは、結局、「9条改憲」(自主憲法制定)をめぐる攻防だ。腹をくくった明文改憲阻止の構えも求められている。私は、その根本は労働組合、労働運動の再建が軸だと考える。
 資本主義はもはや国民経済の発展の役割を失っている。グローバリズム競争で、労働者・国民に譲歩するゆとりはない。消費税増税と法人税減税、企業の海外移転とロボット化による雇用喪失、市場(消費者)獲得のための労働力の安売り競争、福祉・教育など公的責任の放棄と民営化と商品化、その下での労働の劣化、東京一極集中と地方の崩壊……、典型は原発事故の収束の見込みもない中での原発再稼働と輸出、そして武器輸出の解禁(「死の商人」の復活)、沖縄差別・基地強化……。現代資本主義は、「1%」を肥え太らせるために“何でもあり”で、労働者、国民に犠牲を強いている。これが安倍流である。
 一方、労働者の団結・連帯の土台である「みんな仲間だ!働く仲間!」がつぶれている。失業、不安定雇用、正規・非正規、派遣、パート……バラバラに分断され対立させられている。安倍流は、戦後革新・左派の後退、その土台である労働運動の停滞の極だと考える。世界では「もう一つの世界」をめざす力強い動きがある。私たちは、「日本的な弱さ」を克服するために、世界に学ばなければならない。
 安倍流は「人間らしく生きる」反撃を必ず生み出す。事実、無数の闘いがある。手をつなぐ可能性が深まっている。今日の攻撃は、「戦争する国」へ向けて、労働者・国民から反撃の武器(憲法・労働法など)を奪う先制攻撃でもある。退くわけにはいかない。余りな右傾化、社会の破壊、人間破壊……その中で「みんな」が考え、動き出している。手をつなごう。その軸に労働者部隊が坐ろう。
松枝佳宏(新社会党委員長)
TPPの恐ろしさ
 一昨年、TPPについてTVで報道された内容に驚きました。日本の産業全般、私たちの暮らし全般が、TPPで大きく損なわれ、今までとは全く違った社会になってしまうと危機感を感じました。長田の女性たちに呼びかけ、この問題の学習会や街頭でのシール活動に取り組み、今は岩波のブックレットで学習会をしています。
 TPPは、米国の人口の1パーセントしか占めない40パーセントの富を握る巨大企業のための協定です。国の政策・制度は、本来、お互いに助け合い支え合う社会を形成するためにあるのに、1パーセントの人々の富の拡大にとってはそのことが邪魔で、企業利益に合わないものは根こそぎ変えてしまおうという乱暴なものです。米国の民間保険会社が日本でシェアを拡大しようとすると、国民健康保険が邪魔、米国の製薬会社の利益拡大には薬価を低く抑える公定制度が邪魔、米国農産物の輸出増加には日本の安全基準が邪魔、それをやめないならISD条項で日本政府を国際投資紛争仲裁センターに提訴して損害賠償させ、撤廃に追い込むというとんでもないものです。
 実際に、米国はNAFTAでメキシコやカナダに対して、人々の命を守る安全基準や環境基準を自由な企業活動を邪魔するものとして損害賠償を要求し、制度の撤廃に追い込みました。国際投資紛争仲裁センターで勝訴しているのは米国企業のみだそうです。
 いま第2章まで読み進めています。そこでは食の問題が扱われていて、グローバリズムの中で日本でも食べ物の安全性が大きく損なわれつつあるということです。食品企業が輸入食品に飛びつくのは値段が安いからであり、その結果、地域で作られていた独自の産物が輸入ものに押されて失われていき、食の安全が損なわれているのです。
 私たちは、最近いかに安い加工食品が出回っていることかと話し合いました。たとえば、家で作るよりずっと安くお弁当などが販売されています。非正規で、多忙で、低賃金で働かされていると、つい安いお弁当に目が向いてしまいます。
 でも、肝心の食材の安全性はどうなのか。スーパーなどで加工食品の表示を見ると、いかに多くの添加物が使用されていることか。
 また、最近、砂糖とブドウ糖果糖液糖と表示されている異性化糖とを比較した論文が出たそうですが、後者を多く食べている人の方に糖尿病が多いそうです。異性化糖というのは、大半はコーンスターチから作られたものであり、100パーセント米国から輸入されています。米国のコーンは、遺伝子組み換えの物がほとんどであり、その影響も大きいと思われます。ブドウ糖・果糖といえば、一見、砂糖より健康的に思えますが、実は健康を害するものだというのです。
 安さの裏側には私たちの健康を奪うものが隠されていることに今さらながら気づかされました。関税を撤廃し、安全基準を引き下げるということは、こういうことなのだと思うのです。
(M・M)
“スラップ訴訟”には負けられない
 学校法人重里学園が経営する環境学園専門学校(尼崎市)で、専任講師の雇い止め問題から2012年1月、3人で武庫川ユニオンの分会を結成し闘いを進めてきた。
 この学園は重里國麿理事長のワンマン経営で、講師の解雇だけではなく、人事異動をとめてほしいと嘆願書を提出した学生を停学処分にするなどが行なわれてきた。ちなみに、ユニオン結成後、労務担当者は2年半で4人目、校長は3人目、弁護士も3人目というように理事長の意に沿わないと首を切ってしまう学校だ。
 こうした重里学園にとって武庫川ユニオンの結成は驚きであったことだろう。結果、12年3月末の雇い止めを撤回するなど、12年7月で和解が成立し、正常化に向けて労働基準法違反の是正など進めてきていた。
 ところが、13年4月1日から専任講師であった組合員の2人を専任講師から事務員への配転を強行した。この配転に対し、@職種限定契約であること、A仮に職種限定契約でないとしても権利の濫用であること、B組合活動を嫌悪した不当労働行為であること、と大阪地裁に提訴した。また、大阪府労働委員会にも救済申立てを行なった。
 学園側は14年2月、武庫川ユニオンと組合員2人に対し、数千万円という損害賠償請求訴訟を起こした。宣伝活動や法人本社への抗議行動、ホームページの記事によって重里学園並びに重里國麿の社会的信用や名誉が著しく低下するという被害を被ったというのだ。
 経済的に力のある団体などが原告となり、訴えを起こした弱い立場の個人に恫喝を加え、嫌がらせのために行なう訴訟をスラップ(SLAPP)訴訟という。映画「標的の村」にもあったが、沖縄県東村高江地区での在日米軍ヘリパッド建設反対の座り込み運動の15人に沖縄防衛局が「通行妨害仮処分」を申し立てた。被告には子供まで含まれていた。高江の人々は脅しに屈せず闘い続けたが、重圧があったのは事実だ。今回の重里学園の行なった損害賠償訴訟も組合活動への嫌がらせを目的としたスラップ訴訟だ。
 絶対に負けるわけにはいかない。支援をお願したい。次回の裁判期日は7月14日午後3時30分大阪地裁809号法廷。
小西純一郎(武庫川ユニオン書記長)