「新社会兵庫」 6月24日号
- 「自転車操業」―。最近はなんでもネット、そこでウィキペディアによれば「操業を止めてしまえば倒産するしかない法人が、赤字状態でありながら操業を続ける状態」とある▼安倍政権というのも、いわばこんな状態なのではないかと思う。飽きもせず次々と新手を繰り出してくる。どんな歴代保守政権もやろうとしてできなかったり、いくらかためらってきたようなものばかりだ。集団的自衛権の解釈変更はその最たるものだろうが、そればかりではない▼1日の労働時間は8時間という人間労働を担保する法規制の否定、だれもが安心して医療を受けられるようにという保険制度に穴をあける混合診療の解禁、企業が自由に農業に参入できるためにJA全中の廃止、消費税アップの一方での法人税引き下げ…▼D・ハーヴェイは新自由主義を「資本家階級の権力回復運動」と言ったが、国民に対しても国会に対してすら理を尽くした説明もせず、行け行けドンドンの粗っぽい手法は、まさにハーヴェイの言説を想起させる▼迷走をはじめた自転車はいずれこける運命にある。とはいえ、暴走すればするほど他方の階級の被害は拡大する。われわれの手で自転車をこけさせてやらねばと思うのだが。
- 労働者派遣法の大改悪を許すな 常用代替防止の原則を放棄
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安倍政権は、集団的自衛権行使の容認に全力投球である。今通常国会に戦後の憲法体制を根底から否定する数多くの法案を詰め込んだせいか、労働法制大改悪の第一弾として3月11日に上程された労働者派遣法改悪法案は6月22日の会期末を前にしても厚生労働委員会での審議は始まっていない。
兵庫でも昨年10月のひょうごユニオン運営委員会での「安倍政権が衆参の安定多数の議席を背景に進める労働分野の規制改革に反対する運動と組織づくりが必要ではないのか」との問題提起と議論をきっかけに、今年1月、全港湾神戸支部、ひょうご労働法律センターなどとともに呼びかけた「労働法制総破壊に反対する兵庫県共同アクション実行委員会(略称=労働法制ひょうごアクション)」が結成され、学習会、統一街頭宣伝行動、デモ行進が取り組まれている。
労働法学者や弁護士などの危機感はたいへんなものだ。3月5日に神戸地区春闘などが主催した2014春闘講演会で西谷敏さん(大阪市立大学名誉教授)は冒頭、「労働法制改悪に対して労働組合は何をしているのか。ゼネストが起こっても不思議ではないのに、なぜ静かなのか、教えてほしいと真剣に思っている。労働法制改悪でどんなことが起こって、労働者の労働や生活にどう影響するのか。全体的な政治情勢とのかかわりで話したい」と少し怒り口調で切り出した。心ある弁護士も、ほぼ手弁当で小さな学習会にも出向いてくれる。何かに背中を押されているようだ。
労働組合の危機感は何故か薄い。連合も5月27日に47都道府県で残業ゼロなど労働規制の緩和に反対する集会を開催したが、全体の盛り上がりは弱い。企業別労働組合は自らの課題に目を奪われ、労働法制改悪など社会全体を考える余裕がないのだろうか。
労働分野の規制改革は5つの柱からなる。@労働者派遣法の見直し、A有期雇用の無期転換期間の見直し、B労働時間法制の見直し、C多様な正社員づくり(解雇の金銭解決制度)、D有料職業紹介の見直し。@とAは今国会に上程中、Bは6月の成長戦略に盛り込むとの新聞報道で、来年の通常国会に労基法改悪法案を上程する予定、Cは法制定や改定は必要なしとのことである。
さて、今回の労働者派遣法大改悪についてである。職業安定法44条には「労働者供給事業の禁止」が明記されている。日本国憲法の精神に基づく労働の民主化から戦前の人夫供給業、人入れ稼業など中間搾取や強制労働の封建的な雇用慣行は禁止された。雇用の安定は直接雇用の原則が支えである。1985年に制定された労働者派遣法は、直接雇用の原則を柱に、常用代替防止の観点から職業安定法44条で禁止されている労働者供給事業のうち高度専門業務のみを合法化して成立した。
派遣法は制定から幾度となく改悪された。対象業務や派遣期間の拡大など2004年には製造業への拡大で派遣労働者は急増した。それでも正規労働者から派遣労働者に切り替える常用代替を防止する原則は堅持され、政令26業務は派遣期間の制限はないが、その他業務の派遣期間は上限3年間としていた。
今回の派遣法改悪の最大の問題点は常用代替の防止という原則を放棄したことにある。建設、運輸、港湾、警備の派遣禁止業務を除くすべての業務について政令26業務とその他業務の区分をなくし、派遣期間の延長は3年毎に労働者の過半数代表からの意見を聞くのみで可能となる。これでは派遣先企業は無期限に派遣労働者を活用できるようになり、正規労働者が派遣労働者に置き換えられる。まさに「正社員ゼロ法案」と言われる所以である。労働者の貧困にもさらに拍車がかかる。
2008年のリーマンショックで明らかになったのは最も不安定な労働者は派遣であったことだ。不安定だけではなく、ワーキングプアでもある。武庫川ユニオンが2008年3月に尼崎市の住民票入力に携わる派遣事業の入札をめぐる無期限ストライキで「人間を入札するな」と訴えた。派遣元、派遣先にとって派遣労働者はいつでも取り替えのきく機械の部品のようなものである。労働者派遣法改悪など一連の労働法大改悪反対のたたかいは、労働者の尊厳を回復させ、労働者の生存権を保障させるもうひとつの憲法闘争でもある。
労働法制改悪をめぐる攻防は、秋の臨時国会まで少々の時間ができた。労働者と労働組合の共同闘争を強め、広げることで労働組合の復権と労働法制改悪の阻止を実現しよう。
(6月13日記) 菊地憲之(ひょうごユニオン運営委員)
- 被災地とつながる想い
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私は8年前から宮澤賢治の作品を通して賢治さん(とあえて呼んでいる)の世界を読み解く読書会『賢治の会』を友人と月に1回のペースでしている。この間にメンバーが早期退職をして故郷の沖永良部へ帰ったり、親の介護で実家の鹿児島市へ転居したりと新しい生活に踏み出している。遠方にいても、賢治さんの心象を借りると同じ地球に暮し夜空を眺めているのだから、想いがあればつながっているからと読書会は続いていた。
この『賢治の会』で研修旅行と称して賢治の生誕地の岩手県花巻の旅を企画したのが3月だった。東北岩手に行くのなら、やっぱり東日本大震災の被災地も訪問しようということになり、旅程を花巻から釜石線の遠野駅で途中下車をして遠野物語=i柳田国男著)で知られる民話にふれてから、釜石へと向かった。
釜石市の宿探しでは平日なのに女性4人の予約がどこも一杯で困っていることを何回も東北の被災地へ行っているFMラジオ局の友人に相談して、釜石「明日へのかけはし女性の会」のMさんを紹介いただき、Mさんを通して宿を確保することができた。Mさんは3・11の被災翌年6月に神戸に来られて被災地の話をされたという方だった。そのMさんが雨の降る釜石駅に私たちを出迎えてくださり、釜石物産センターの2階フロアーでご自身の体験をお聞きすることに。大きな地震と30分後に来た津波の中を夢中で避難された様子やご自宅の3階まで津波がきたこと、自営業の酒屋さんの店舗が土台からそのまま津波に流されたこと。助かった後も避難所のお寺から友人宅を経てようやく仮設住宅に入れたことなど、忘れかけていた神戸の震災体験が甦った。今は店舗再建を断念され、仮設住宅内の仮設店舗で弟夫妻が酒屋をされていると知り、案内していただきお酒を土産に購入。
Mさんに見送られてタクシーで約20分、その途中で復旧作業に使われる膨大な土砂が海側に積まれて海が見えない道を進んで海沿いの旅館へ向かった。宿では翌朝早く出る私たちのために、普段は午前中に女将が行う震災体験と復興支援や釜石のこれからのことなどパワーポイントを使った話を特別に他の宿泊客と共に夜8時からしていただいた。
多くの命を奪った津波。住まいや地域のつながりが震災前と同じようにならないことは分かっていても、住民の合意ができないままに県や国の復興計画が進む状況を感じつつ、3年経っても先が見えないもどかしさを被災地は抱えていることを知った旅。「世界全体が幸福にならないかぎりは、個人の幸福はありえない」―彼の地で綴った賢治さんの想いは私の中にもつなげてくれた。
(I・T)
- ある日のビラ配りの風景から
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ユニオンあしやは、毎月の労働相談向けのビラ配布行動を3つの駅頭で行っているが、私は阪神甲子園駅の担当だ。
甲子園で試合がある日は、観客は皆、電車利用のため数万人が駅頭に殺到。巨人戦のときなどオレンジ色のゼッケン着用は自殺行為となる。
ホームランなどがあると、大歓声が球場から聞こえ、思わず振り返ることがある。
いつもビラの受け取りは悪いが、スマホの影響で最近は特に無視されることが多い。
たまに、本当にたまにだが、「ご苦労さん。頑張ってください!」と言われたときは本当に嬉しい。
映画「男はつらいよ」が最近、人気が出てきているようだが、こんなシーンを思い出した。甥の満男が寅さんに向かって、「おじさん。人間は何のために生きているの?」と問いかける。すると寅さん曰く、「あゝ生きてて良かったなと思うときのために生きてるんじゃないのか」というくだりだ。
ビラ配りをしていて良かったと思うことは少ないが、そういう出会いを楽しみにしている。
横で共にビラを配っているOさんの息子は大学を出ても非正規で、毎朝早く西宮から高砂まで通っているとのこと。今後何年もの期間、奨学金の返済もあって、親との同居が前提でないと生活が成り立たないという。
ところで、今回の労働法制の大改悪攻撃は、若者の人生を土足で踏みにじる内容だ。憲法27条の勤労権は一体どうなっていくのか?この国は若者をどこに向かわせようとするのか
私たちの方にも、若者の怒りを引き出すための、創意工夫のある努力をねばり強く続ける以外に解決の方法はない。
時あたかも、7月13日に西宮で開催される、宇都宮健児弁護士を講師に迎えた「憲法講演会」への参加をお願いしたい。宇都宮さんは長く貧困問題に取り組んでこられた弁護士だ。
貧困と戦争の問題について認識を深め合いたい。
大野克美(ユニオンあしや)
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