「新社会兵庫」 2月11日号
 齢のせいか、あっという間に時は過ぎ、新しい年を迎えたかと思うと、すでにひと月が流れている▼この1カ月、ホッとしたというかうれしかったのは、名護市長選。石破幹事長に無理やり普天間基地の辺野古移転を認めさせられた沖縄出身自民党国会議員団と自民党沖縄県連。仲井真知事は自ら求めた沖縄振興費にさらに上積みした予算額を安倍から提示され、ついに県民を裏切って辺野古埋め立てに承認を出した▼そうして迎えた名護市長選は二分されていた保守陣営を一本化させ、最終盤に名護入りした石破は唐突に500億円の名護振興基金で住民の頬をひっぱたく。とんでもない政権与党の横暴の中を4千票の大差で稲嶺現市長が勝利したのは、とりあえず喜ばしい▼反対に何ともいえず腹立たしいのが、籾井NHK会長の妄言。だいたいが安倍の息のかかった連中を委員に送り込んだ経営委員会、その委員たちが選んだ格好の会長だ。安倍政権の意向は十分に汲まれているだろうから、衆目が注視する中での案の定の妄言は何をかいわんやであるが、それにしてもお粗末な人選だったと言わざるを得ない。それくらい会長職が軽い。やりたい放題の安倍政権の暴走ストップは、今年最大の課題だ。
新基地建設反対は沖縄の民意
沖縄の怒りを日本全土の怒りへ
稲嶺市長再選は辺野古移設反対の意志表示
 1月19日、投票箱が閉じると同時に琉球新報、沖縄タイムスの2社は「稲嶺氏再選確実」の号外を配布した。兵庫にいる私のところにも8時になってすぐに現地の仲間から連絡があり、驚きの声をあげた。接戦が伝えられる中での大差の勝利にこれまで名護の人たちが受けてきた屈辱とも言える扱いに対する怒りの答えであることは明らかだ。
 今回の名護市長選挙は辺野古新基地建設の動きが明らかとなった1996年のSACO合意後、はじめて「反対」「推進」が明確に分かれた選挙であり、新基地建設反対の取り組みを進めてきた者にとってはどうしても負けられない選挙であった。
 全国の仲間が注視する中で執行された名護市長選挙は、熾烈なたたかいの様子が伝えられていた。政府・自民党は、閣僚や党幹部が現地入りし「カネ」で米軍基地を受け入れることを迫った。しかし、沖縄地上戦や銃剣とブルドーザーによる土地接収などの悲劇を経験してきた沖縄は、これを拒否した。「アメ」を配れば住民を納得させることができると考えている政府の傲慢さが良識ある名護市民から「ノー」を突きつけられた。
 普天間の返還合意から18年。名護市民は国策によって分断され、地域社会は破壊されてきた。普天間から辺野古に基地が移ったからといって危険性が除去されるわけがない。ただ、被害に遭う住民が変わるだけである。国策によって地域住民が犠牲になることはあってはならない。今回の市長選の結果を受けて、改めて民主主義が問われることになる。
基地撤去・新基地建設反対は沖縄の総意
 県民の総意を無視し、普天間基地の県内移設を押しつける安倍自民党政権の悪政や、選挙公約を反故にし、県内移設を容認した県選出自民党国会議員、自民党県連、仲井真知事の相次ぐ裏切り行為に対する県民の怒りが名護市長選挙での稲嶺勝利の原動力となった。
 とくに仲井真知事は昨年12月27日、政府が申請をした公有水面埋立法に基づく辺野古沿岸部の埋め立てを承認し、10年の知事選で自らが掲げた県外移設の公約を破った。安倍首相が示した沖縄負担軽減策を「驚くべき立派な内容」と絶賛したこととあわせ、沖縄県民を「カネで売った」との批判が続いた。
 沖縄県議会は、こうした知事の態度に対して名護市長選挙告示前に辞職要求決議を可決し、不信任を突きつけた。仲井真知事が全面支援した推進派が落選したことで今年11月に予定されている知事選を前に不透明な情勢が続くことになる。
地方からの反撃を 沖縄を孤立させるな
 「政府は辺野古移設に固執しているが、県内移設はダメというのが県民の総意だ。辺野古の埋め立てを前提にする手続き、協議に関してはすべてお断りする」―。大差で再選を果たした稲嶺進名護市長は辺野古基地建設に反対、阻止していくことを明言した。普天間県外移設の声は沖縄全体のものであり、大きな建設阻止行動になっていくことは明らかである。
 しかし、政府は、選挙戦の最中にも「新基地建設は名護市長選の結果に左右されることはない」「基地の場所は政府が決めること」など、地方の民意など全く認めない発言を繰り返し、選挙直後の20日には政府・与党協議会において菅義偉官房長官が「辺野古への移設は粛々と進めたい」と発言、移設関連の入札公告を21日には実施することを明らかにし、実行した。こうしたことからも、辺野古新基地建設をめぐっては混乱が続くことは明らかである。
 沖縄は戦後68年にわたって朝鮮、ベトナム、湾岸戦争をはじめアメリカの戦争の前線基地として機能し、その中でさまざまな基地被害にさらされて来た。とくに女性に対する暴行事件は後を絶たなかった。敗戦から半世紀以上、日米安保の負担を否応なしに背負わされてきた。改めて米軍基地の全面撤去しか沖縄で起きている基地被害を無くすことはできないことは明らかだ。沖縄の問題としてではなく、平和に生きることを高らかに詠った平和憲法を持つ国の人間として基地全面撤去のたたかいを進めていかなければならない。
 沖縄の人たちは、「人殺しのための基地はどうしても認められない。これは、沖縄だけのたたかいではなくすべての人のたたかいである」とし、「基地撤去のたたかい」を進めている。改めて、沖縄の「怒り」を日本全土の「怒り」に変えていかなければならない。
(1月21日 記)
森 哲二(平和運動研究会)
テレビに描かれた「幸せ」って
 先日、テレビでセルフネグレクトのお年寄りのことを見ました。セルフネグレクトとは「自身を無視する」という意味の英語。お年寄りが家族を亡くして一人になったり、何かのきっかけで認知症を発症してから、ゴミを捨てない、着替えをしない、食事を取らないなど周囲との関わりもなく廃人のような暮らしをするようになるのです。しかも哀しいことに、こうしたお年寄りが「後を絶たない」とのことでした。番組で紹介されていたケースも、一戸建ての家でありながら中はゴミが散乱し、風呂場は何ヵ月も入った形跡がなくカビで真っ黒、そこで暮らすお年寄りが最近口にしたのは自販機で買える飲み物だけでした。
 確かに、一人になって「生き甲斐」や「張り合い」や「楽しみ」が何も無くなったら、生活は限りなく横着でずぼらになりえると思います。
 番組では、ケアマネージャーさんが訪問を繰り返し、本人を説得して施設に入ったケースも紹介していました。施設なので清潔な格好になり、栄養のある食事も頂けるようになりました。第三者から見れば「良かったなあ」としか思えないこの変化に、それでも担当したケアマネージャーさんは本当に良かったのかとずっと悩んでいました。確かにセルフネグレクトは健康状態も衛生状態も悪く、火事などを起こす危険もあります。そこから連れ出すことは本人の体にとっても隣近所にとっても良い事で間違いないと思います。
 でも……、どんなに劣悪な環境に見えても、本人の心にはそれが良かったのかも知れないのです。ゴミの山に見えるものも本人にとっては思い出の詰まった宝物のこともあるし、誰にも迷惑をかけずに一人で生きている(と本人は思っている)ので放っておいて欲しかったと本人は思っていたかもしれないのです。施設に入ったあと、言葉と表情を失くしてしまったお年寄りを前に、ケアマネージャーさんは「その人の人生を決められないのでは」と悩んでいました。人を救うにはその人の喜びや生き甲斐も用意できなくては不十分なのだと思いました。
 もう一つ、「明日、ママがいない」というドラマの中で、食事の時「いただきます」の前に施設長が子どもたちにいきなり「泣け」と言うんです。「お前らはペットショップのペットと同じだ。ペットの幸せは飼われる家で決まるんだ。いい家にもらわれたいのなら、飼い主の心に訴えるような泣き方を身につけろ」と。そして子どもたちにしばらく泣きまねをさせてから「よし、食え」。
 そんな施設、今どきあるんでしょうか。私は少しですが里親をしていて、日頃から施設の子どもさんや最近頻繁に目にする児童虐待の問題に高い関心をもっています。少なくとも私が多少知っている施設では職員さんたちは心を込めて子どもたちのお世話をし、子どもたちもそれなりに伸び伸びと育っているように見えました。実家に何かしらの問題のある子どもさんたちに真剣に向きあっている職員さんたちには、ずいぶん失礼な描き方だと思いました。
 改めて思うのは「幸せ」についてです。人の幸せは本来とてもシンプルなものだと思います。それなのになんでこんなに実現が難しいのでしょう。
(山平利恵・あけびの会)
パート社員の一時金交渉
 P分会は、12年冬の一時金交渉で「正規社員と同率の支給」を要求した。常日頃、会社は「この会社はパート社員で持っている」と言っているのだから、「それを形に」と要求したのだ。しかし、会社はなかなか案を示さず、ずるずると回答を引き延ばした。
 13年夏の一時金についても、経営状況の厳しさを理由に、12年冬と同じ支給額を回答してきた。正規社員が大幅なダウンの中、パート社員には減額がなかったことはかすかに評価できるものの、組合の要求とは程遠く、納得できるものではないと交渉を進めた。しかし、会社は譲らず、収益が上がれば原資を確保してなんとか要求に応えたいと答えたので、組合としては、13年10月までに組合の要求を真摯に受け止め検討するよう申し入れて、13年夏の一時金交渉は泣く泣く妥結した。
 13年冬の一時金について会社から提案があったのは10月末。しかし、内容もお粗末で組合の要求とはかけ離れたものだった。一時金の原資を増やさず今まで通りの原資をただ割り算しただけもので、大幅な減額になるパート社員もいる提案には呆れてしまった。
 会社は「今の収益では13年夏の水準確保も難しい状態。社員の一時金は13年夏の半額になる予定。その中でも何とかパート社員については、と思っている」と言い訳に終始。組合は、「社員とどれだけの差があると思っているのか。減額などもってのほか。収益が悪いと言うならどう責任を取るのか。工場を支えているパート社員に責任を押し付けないでほしい」と会社に詰め寄った。
 交渉の中で会社は、「今回大幅な人事異動をし、生産部の立て直しを図る。役員も降格、一時金カット。また、社員の大幅な一時金カットを実施し、パート社員の一時金の原資を13年夏並みに何とか確保したい。今後もパート社員の一時金の原資を増やしていけるよう努力したい。会社の現状も理解し、協力してほしい」と言ってきた。
 組合は、「収益が落ちているのは理解できるが、社員との格差は大きい。パート社員の要求を真摯に受け止め、引き続き一時金については組合と協議を」と要望。また、12月31日から1月3日の間の時給は25%増、クリスマスケーキの支給等も昨年と同様に行うことの確認をして終結した。
森口道夫(ユニオンあしや)