「新社会兵庫」7月9日号
 会社解散による不当解雇・組合つぶしを許さないと全港湾神戸支部姫路伊藤分会が3年半を費やして闘ってきた裁判で、神戸地裁姫路支部は原告の地位確認の請求を棄却した。この不当判決で、勝訴を信じていた原告をはじめ支援の傍聴者は大きなショックに襲われた。意味がよくのみ込めないというような空気が傍聴席を覆った。直後の報告集会では、これまで元気に闘ってきた分会員たちがはじめて悔し涙を見せた▼改めて裁判闘争の厳しさを思った。実は予想されていた一番厳しい壁、すなわち資本家の所有権の自由、資本家は会社を自由に解散でき、それに伴う解雇は有効だという法理≠打ち破れなかったことになる。だが、判決は形式上の判断だけで偽装解散を否定している▼思いがつながるところは、安倍政権が再び目指そうとしている労働法制の規制緩和だ。「限定正社員」などの検討をはじめ労働者を自由に解雇できるルールづくり、とにもかくも資本家の利益が最優先される社会づくりが画策される、そんな情勢である。が、これを打ち破るのはやはり労働者のたたかいでしかない。厳しくても、これだけ労働者が押し込まれていても、怒りという火がある限りたたかいは消せない。
共通番号法は何を狙うか 成立後もしっかり監視を
 @国民各人に11桁以上の番号を付けて、行政機関が税金や社会保障関係等の情報を把握、一元管理する共通番号制度法(マイナンバー法)が5月24日、今通常国会で成立した。深い憂慮と抗議を表明したい。
 なお、2018年をめどに、医療情報や民間での活用を含め、利用範囲の拡大を含めた番号法の見直しを行なうことを引き続き検討するとされている。
 しかし、よりによってなぜ今、共通番号法なのか。国民一人ひとりの人権に関わる重要な案件を、政治情勢混迷の今、震災復興も不十分ななか、そんなに簡単に成立させてよいものだろうか。先の住基ネットのときに比べて、マスコミの姿勢も弱い。十分な審議もなく、カード1枚と引き換えに、重要な個人情報を政府に委ねてしまってよいのだろうか。
 このような制度の導入をするための最低限の前提条件は、政府の十分な説明責任と、政府に対する国民の信頼がなければならないはずだが、どうだろうか。制度の前提となる全課題を国民に周知徹底することが急務のはずだが、他人事のように受け止めた人も多いはずだ(2015年後半から全国民に個人番号を通知し、16年1月運用開始)。
 A政府は「国民の利便性の向上と行政の効率化」を金科玉条のように喧伝するが、情報漏えいをはじめ膨大な番号データが一元管理されることの重大さを、もっと深刻に受け止める必要があるのではないか。
 思い起こしてほしい。1999年、小渕内閣の時代、国家国旗法が両院あわせてわずか16日の審議で成立したことを。そもそも、共通番号法など、政府への信頼が不可欠の基盤であるはずだ。利便性と引き換えに私たちが何を失うのか。いくら利便性を強調されても、国民がどれだけ便利になるのか、さっぱり見えてこない。十分な検証もないまま拙速の施行は極力避けるべきである。災害復興、国民の生活安定など、他に急ぐべきことが山積しているはずだ。私たちは操り人形ではない。
 B政府は導入にかかる費用2700億円を「国1100億円、自治体1600億円」と見込む。これでは1自治体あたりの費用は1億円足らずで、とても足りそうもない。
ちなみに、2002年度8月運用開始された住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)は、導入のために約391億円、システム運用に毎年100億円以上かかっている。希望者に渡す「住基カード」は国民の5%程度しか普及していない(兵庫県の普及率は7・31%〔2013年3月末〕。最高は西宮市の17・69%、最低は丹波市の2・74%)。
 なお、この機会に、住基ネットの徹底的検証が必要なことを付言しておきたい。
 共通番号制度の導入に期待しているのは、各省庁と経済界だろう。財務省などが所得や社会保障の記録などをまとめて把握することで、脱税や不正受給などを防ぐのに役立てようとの考えもあったようだが、小企業の所得の把握にどれだけ役立つのか疑問との声も根強い。経済界からは、「民間企業も共通番号を使ったサービスができるように範囲を拡大すべきだ」と求める声も出ている。経済連は「共通番号を使えば、年間3兆円の経済効果が期待できるとはじく」(朝日新聞5月25日付)。
 しかし、事務の効率化など利点の強調と並行して、「リスク」を指摘する声も根強い。膨大な初期投資(システム構築の初期費用だけで2千億円以上)と運用費を投じるだけの効果が見込めのか/3年後をめどに利用範囲の拡大等を検討とされているが、プライバシー侵害等のリスクも拡大/不正アクセス・漏えいによる番号の流失や盗用/成りすまし犯罪の横行/国家による個人監視の強化/特定の監視委員会設置とのことだが、実質的に機能するのかなど、「リスクをはらんだシステムであることは否定できない。見切り発車にならないよう慎重に議論すべきだ」(神戸新聞5月19日付社説)。米国や韓国では、「成りすまし犯罪」が深刻な社会問題になっている。
 Cさて、今後どうするか?法律ができても運用の細目はこれからだ。そもそも、私たちはこの法律について知らなさすぎる。法律成立後、施行されるまでの期間も、しっかり監視していく必要がある。一体だれのための制度なのか。「人間の幸福」につながるものなのか、ここらで考え直してみる必要があるのではないか?  (2013年6月25日記)
中田作成(兵庫住基ネット問題等連絡会 共同代表)
少子化は止まらない
 厚生労働省は6月5日に「2012年の合計特殊出生率は1・41微増」と公表した。この微増の要因は、30代になって出産する団塊ジュニア世代の女性が増えているからだそうだ。しかし、人口を維持できる水準からは遠く、今後も減少が続く見通しだと。晩婚・晩産化の傾向も続いている。また、高齢化が進んだ影響で、死亡数が多くなり、2007年以降、人口自然減少ペースが加速しているそうだ。
 「少子高齢化」という言葉を最近よく耳にする。何か高齢化が悪いように聞こえる時もある。社会を支える若者たちが減っているから、あたかも高齢者が多いのは問題だと言わんばかりに。
 だから自民党政府は、大変なことになるから「産めよ、増やせよ」と。しかも不妊治療の支援は39歳以下までにしたい、それ以上の年齢は妊娠する確率が低いからと。言わせておけば、何を勝手なことを言いたい放題言っているのか。まったく許せない。
 戦争中には、兵隊要員のために「産ませて」、命を奪い取っておきながら、今度は、この間「子を産み育てたくなるような」社会づくりをせずして、「このままでは大変なことになる」と。国民は、結婚したくなればするし、子供がほしくなれば産む。誰かに言われてするものではない。まして「国家」に言われてするものではない。自然な気持ちからの行動だ。
 しかし、今の日本はその自然な気持ちを行動に移すための社会的な条件がなさすぎる。
 松田茂樹・中京大教授(家族社会学)は「これまでの子育て支援策で一定の効果は出ているが、少子化の大きな要因は、非正規雇用などで結婚できない若者が増えていること。若い世代の雇用を安定させ、結婚して子供を産み育てやすい環境を整えないと、出生率は改善していかない」と指摘する(朝日新聞より)。その通りだ。
 私には成人した3人の息子がいるが、高校の体育教師(2年前に退職)をしながら産み育てられた大きな要因は、「育児休暇制度」があったからだ。その制度は、労働組合の先輩女性教師たちのお蔭で、私が出産する数年前にできたのだ。私より少し上の方は独身の方が多かった。体育教師や養護教諭(保健室の先生)は、部活動や休日勤務や宿泊活動の引率等で労働条件が厳しかったからだ。
 私の世代からは結婚して子供がいる人が多い。また他の教科の教師も含めて、周りには子育てをしている仲間がたくさんいた。だから厳しくても、子供のことで休みやすかったし、グチも言えた。
 ところが今の学校現場は、私たちの若い頃よりますます労働条件が厳しくなっている。しかも非正規労働者が年々増えている。毎日の仕事をこなすことに日々追われている。当然の結果として、男女とも30代の独身教師が多い。勤めていた頃、よく若い教師が「今やっている仕事を結婚したり、子育てしながらできるなんて考えられない」と言っていた。
 当たり前のことだが、「結婚・出産」は個人の問題であり、自由だ。ただし選択できる条件があってこそ、本当の自由だ。今の職場環境だと当然の結果として、少子化、人口減少は止まらない。 自民党政府が本気でそれらをくい止めたいなら、若者たちがそう思える条件づくりを急いで整えることしかない。とにかく急いで。
(N)
被告会社の負担まで考慮する裁判長
 仮眠時間の賃金不払いで「警備ひゃく」と約3年間争っていた事件は、5月に和解が成立した。
 神戸地裁姫路支部では、仮眠時間は労働時間だと断定し、賃金の支払いはもちろん、付加金も併せて認められたが、基準となる賃金の算定で、所定労働時間が法定労働時間ではなく、会社側の言う法定労働時間を超える労働時間で計算されたために不当な働き方をさせる会社に対して司法の正しい判断が示されるようAさんは控訴した。
 仮眠時間は労働時間ではないという主張が認められなかった会社側ももちろん控訴した。
 裁判の舞台は大阪高等裁判所に移ったが、会社側から出された控訴状や答弁書を見る限りでは、新たな主張もなかったので、すぐに結審するものと思っていた。しかし、第1回期日の冒頭、裁判長の言葉に耳を疑った。
 裁判長は、全く筋違いの東京高裁の判例を持ち出して「原審判決では、仮眠時間中に何もしなくて良かったと言っていたかどうかについて判断していないから、会社側はそのことを立証するように」と言い、また、「原告の請求金額は、被告が姫路市と締結した契約金額を考えると、被告にとって負担になる」とも言うのである。
 原審判決では「仮眠中であっても、労働契約上の役務が義務付けられていると評価され、労働からの解放が保障されているとは言えないから、原告は被告の指揮命令下に置かれているものであって、仮眠時間は労働基準法32条の労働時間にあたる」と明確に判断している。この裁判長、原審の書面や調書をちゃんと読んだのであろうか。また、われわれは法律に基づいて不払い賃金を請求しているのであって、「その金額が被告にとって負担になる」などは、ただただ法律に基づいて黒白を判断すべき裁判長が口にする言葉ではない。
 この裁判長、ネット上の裁判官評価でも「この人が裁判官でいること自体に大きな疑問」とある。
 和解は成立したが、私自身、何かすっきりしない気持ちが残った。
森山容光(姫路ユニオン委員長)