「新社会兵庫」5月21日号
 「教育委員会」といえば最近、学校におけるいじめに関する教委の不適切な対応が批判されるなどの問題を通して、教育委員会のあり方そのものが問われているような状況が醸成されている。戦後に発足したこの制度が権力の教育への介入を排し教育の中立性や公正性を確保するという趣旨から見れば、その役割をきちんと果たしてきたかどうか疑わしい。しかし自治体の首長が「自分は選挙で選ばれて民意を代表している。教育についてもその民意に沿ってスピーディに改革しなければならない」などといって、自分が任命し構成された教育委員会を軽んじる。教育行政もおれがやるといわんばかりの姿勢にはとても疑問が強い。また、その先はたいへん不安でもある。そこに第2次安倍内閣の教育再生実行会議が、第1次内閣の教育基本法改悪同様に教育委員会制度を換骨奪胎する提言を行った。合議制の委員会をやめ、首長の任命する教育長を教育行政の責任者にする。首長(権力)の意向をもっとストレートに教育行政に反映したいというわけである。安倍晋三、ここに来て少し96条改憲先行論にブレーキがかかった格好になっているが、彼の戦後レジームへの挑戦全体にも水を差してやらなければならない。
日本は大きな岐路を迎えている
護憲共同の土壌を生かそう
 安倍自民党政権は、右派・改憲グループの台頭を背景に「反動の嵐」といってもよい壊憲攻撃を強めている。そして、平和的生存権をうたう現憲法の全面改正の意図も隠そうとせず、禁じ手である憲法改正手続き96条を争点に、7月参院選を闘うことを明らかにした。
 私たちの当面する課題は、7月の参院選で改憲派の3分の2確保を阻止することである。余りにも前のめりになった安倍首相の言動に、良識ある人々の反発と危機意識は高まっている。ただ結果は予測できないが、その中心軸である護憲派の現状を直視したとき、厳しい結果も覚悟せねばならぬ。参院選後は、一人勝ちが予想されている自民党を軸に、96条改憲と壊憲をめぐる政党再編成劇を演じながら、攻勢を強めてくることは必至である。
 私たちは〈当面する参院選にどう臨むのか〉だけでなく、参院選「後」も視野においた中期的な構えが求められている。その中身は脱原発、反戦(沖縄闘争)、反貧困を軸にした「命を守る」大衆運動の組織化とそれをつなぐ憲法改悪阻止の共同戦線である。護憲派は、国政選挙毎にその勢力を後退させ、そのたびに大同団結が呼びかけられた。今回の参院選に向けても同様で、私達も小さいながらもその渦中にあった。しかし、弱くなればどうやって組織を温存(強化)するか、主体性論や生き残りを図る議員心理が強まる。政党や議員として当然で、問題はこれを突破する力が弱いことを痛感する。矛盾する言い回しだが、護憲派の退潮とは、それを支える「人」や組織、運動が弱くなっていること、すなわち大同団結を呼びかける力の後退でもある。これは直視されなければならない。特に09年リーマンショックを機に「憲法どころではない」現実の進行がある。
 安倍政権のもくろみは、新自由主義の目指す「小さな政府、強い国家」樹立のための新しい憲法体制作りに他ならない。私流に言えば、〈経済成長あって国民生活はある。現憲法の保障する社会権は邪魔であり、国民は経済成長のためには我慢せよ、協力せよ、たてつくことは許さない〉である。その典型が、原発再稼動・輸出推進と公約違反のTPP交渉参加だ。だが、聖域なき金融緩和は一方で世界的な通貨・貿易戦争となって、中国に負けるな、韓国に負けるなと国民動員を図り、東アジア情勢の緊張を増幅させ、一方では国家財政の危機を招き、消費税アップと社会保障改革という名の国民生活の切捨て、また、TPPは農民の生活基盤を掘りくずし、医療(保険)や労働の規制緩和となって人々を襲ってくる。「わが亡き後に洪水は来たれ」とばかり、まっしぐらに「日本社会崩壊」へと突き進む危険性を持っている。
 私自身の経験から言えば、闘いの中で憲法を身につけてきた。毎日の生活に追われ、考え、議論する時間も場所もない人々が、普段、憲法を問題にすることはない。実生活・労働の体験の中で矛盾に立ち向かうとき憲法が生きてくるのである。生活・労働現場の中に憲法をめぐる攻防がある。それを意識的に護憲共同闘争につなぐのである。
 そして余りにも時代錯誤的な安倍流は、戦後民主主義の中で生きてきた人々の危機意識を強め、右翼的ナショナリズムは同盟先のアメリカさえ危惧を抱く事態である。4・28政府式典に反対する「屈辱の日」沖縄大会に参加した。そこで、中部地区青年団協議会の代表は、次のように挨拶した。「正直に言うと、4・28が「屈辱の日」と呼ばれるようになった話を聴いたとき、政府に対する怒りや悲しみではなく一人の県民としてこの事実を知らなかった自分たちへのショックのほうが大きかった。そう呼ぶきっかけとなった出来事を私たちなりに調べ考え、そしてこの壇上に上がることを決めた。私たちのように4・28を知らなかった若者世代に少しでもこの事実を知ってほしい。」沖縄の歴史を改ざんする安倍流は、沖縄県民の「屈辱」という虎の尾を踏んだだけでなく、戦後を知らない若者に考える場を提供したのだ。憲法への関心が急速に深まっている。ピンチはチャンス、憲法闘争の正念場である。護憲共同の土壌はある。
松枝佳宏(新社会党中央本部委員長)
一番好きな事に巡り会った
 英会話教室へ通い出して5年が過ぎようとしています。これまで多くの習い事をしましたが、ようやく自分が一番好きなことに巡り会った気がしています。きっかけは忙しい職場で働く毎日の中、映画を見るのを唯一の楽しみにしていたことからです。 ある時、あまり面白くない洋画を見ていたときのことです。くわしい内容は覚えていませんが、古い時代のイスラム教とキリスト教の、エルサレムを戦地にしたお話だったと思います。最後にキリスト教側の人間が「どうしてここなんだ?」というような質問をしました。イスラム教側の人間が「Nothing(何もない)・・・but,(しかし)all(すべてだ)」と答えました。
 確かに、エルサレムという場所は映像の中でも荒廃していて、何もありません。宗教上の理由がなければ、なぜ多くの血を流す意味のある場所なのか、わからない場所です。でも、「すべてだ」と言わせる場所であることを感じ、さまざまな歴史や宗教の深さを考えずにはいられない言葉でした。
 その映画を見ながら、英語を聞きつつ(?)日本語字幕を読んでいたと思われますが、「わぁ、私でも知ってる簡単な単語がなんて深いことを言ってるんだろう」と心を射抜かれてしまいました。そして、英語を理解する事ができたら、もっといろんなことがわかるのではないかと思いました。それでも英語は私からは縁遠いことだったので、かなり迷って近所の英会話教室を訪ねたのを覚えています。
 最近、きっかけになったこの映画がテレビで放送されていたので、思い出してもう一度見ました。そして、いよいよあのシーンが来ました。「Nothing・・・but,everything」と言っていました。「あれ、思ってた単語と違う・・・」きっとあの頃の私は、日本語字幕を読んで、勝手に頭の中で知ってる単語に変換していたんだろうと思います。いつもながら、勘違いで感動してたなんて自分にあきれましたが、あの頃の私が「all」と頭で変換しなければ、英会話を習っていただろうか?あんなに感動できただろうかと思い、苦笑しかありませんでした。
 でも、習いはじめてから今日まで、いつも刺激をもらい、どうしてこんなにわからないんだろうということの全てが面白く、何もかも忘れて素直に学べるものがあることに幸せを感じています。
 いつか英語の本を辞書なしで読めるように、いつか日本語字幕がなくても洋画を楽しめるように、いつか海外旅行先で英語が話せるように、いつか言葉の持つ真の意味の深さをもっともっと理解できるようにと、ワクワクしながら学んでいます。
(S)
相談者は十人十色 経験重ねてスキルもアップ
 定年退職をして2年が経過し、ユニオン運動と関わる事が多くなっています。平日でも行動できる有利さから、労働相談、抗議行動、裁判の傍聴に率先して参加することになります。
 労働相談では、いろんな相談者と遭遇する事になります。相談者の立場にたち、相手の話をよく聞く事に心がけます。先日も議員秘書をしている人から相談がありました。相談の中身は、退職を強要するための陰湿なパワハラでした。私たちの真摯な対応が伝わったのか、別れ際に名刺を差し出し、自ら身分を明らかにし、何かあれば電話していいですかと相談を終えました。
 昔の相談者ですが、労働審判での争議になっているのに、自宅に電話するも連絡が着かず、困り果て、派遣先の会社に足を運ぶも、就業中の面会は駄目だと拒まれ、勤務時間が終了するまで出入り口で待っていた事があり、借金の取り立て屋みたいに受け止められ、嫌な感じがしました。こんな事が1度や2度ではありませんでした。相談者も高齢者なので簡単に使用できる携帯電話を、相談スタッフ同行で購入してもらいました。相談者に連絡を取る事に大変苦労しましたが、納得できる和解で成立しました。 もう一人の相談者は、ユニオンと会社が交渉中なのに、相談者が社長に早朝メールを送りつける勝手な行動を取り、社長から「こんな事をされては交渉になりません」と、早朝に怒りの電話が入ったりしました。
 労働相談は大変な任務です。相談者の立場にたつことは、悪い事は悪いと言い、相談者が不利になる勝手な行動を慎む事が必要です。
 私たちユニオンは、働く者の生活と権利の向上を目指しています。相談者にもユニオンが請負的に労働相談をやっているのではなく、労働相談を通して、労働者の団結、連帯、支援に結びつく運動を訴えています。
 最後に、労働相談を経験する事でスタッフ自身のスキルも少しですが高くなったと思います。
旭 茂雄(ユニオンあしや 副委員長)