「新社会兵庫」4月9日号
-
先日、大内裕和教授(中京大学)の話を聞く機会があった。今やたいへんな社会問題となった「奨学金問題」だ▼いわゆる団塊世代は公立の高校授業料が月額800円、大学は年間1万2千円。私事をいえば、減免制度でその授業料もまともに払った記憶がない。それに普通奨学金が月額で3千円、もちろん無利子だったが返済はとうに済ませた。授業料や奨学金について今から思えばほんとうにのんびりした時代だった▼だが、大内先生の話はこんな感覚を木っ端みじんに打ち砕く。大学授業料は桁が違うだけでなくべらぼうに高い。高校を出てもまともな仕事がない子どもは、仕方がないから奨学金頼みで大学に行く。その奨学金、今はほとんどが有利子の貸与制。「奨学金」という名前にはぐらかされるけれど、結局は返済能力を問わずに貸し付けたサブプライムローンみたいなもの。数百万円の借金を抱えたまま返済できない人が急増して大問題になっている▼大内先生の提起は、これだけの問題を新社会党がどうして放置できるのですか、若い人のことを考えれば取り組まざるを得ないじゃないですか、ということ。3月末には全国対策会議も発足し、兵庫でも具体化されていくことだろう。

- 生活保護費削減はやめろ 多方面に多大な影響
-
兵庫県小野市で3月27日、「福祉給付制度適正化条例」が成立した。生活保護費の不正や浪費の情報提供を「市民の責務」と明記しており、今後、市民の相互監視で生活保護世帯が不正や浪費をしていないか監視されるようになる。兵庫県弁護士会などは、「人権侵害であり、受給者への差別、偏見を助長し、受給者の生活を委縮させる」と、反対している。それでなくても人気お笑いタレントの事件を契機に、厳しい目が受給者に向けられているというのに、受給者はどれだけ非人間的な生活を強いられることか、想像するに余りある。
生活保護費削減を強行する安倍政権
今、生活保護世帯が急増し、214万人を超えた。無年金・低年金の高齢者のみならず、母子・父子世帯、低賃金・不安定雇用の非正規労働者の増加は、さらにこの傾向に拍車をかける。これらの背景には、生活保護受給に至るまでの労働、福祉、住宅政策等々の不十分さがある。
昨年末に誕生した安倍政権は、総選挙で公約に掲げた生活保護費削減について、いま、これからの3年間で6・5%の引き下げを強行しようとしている。このままだと、受給世帯の96%が生活保護基準額(以下、基準額)が減り、「最後のセーフティネット」の体をなさなくなる。
さらに、基準額は、低所得者層を対象とする38に及ぶ様々な制度の指標となっているため、多方面に多大な影響を与えることになる。ひとつは、最低賃金である。兵庫県の場合は、昨年10円引き上げられ現在749円だが、基準額から考えてもあまりに低い最低賃金だ。ユニオンは、「最低でも時給1千円なければ、普通に働いて普通に暮らしていけない」と主張し続けてきた。しかし、基準額が引き下げられれば、最低賃金の引き上げの根拠がなくなってしまう。また、就学援助も例外ではない。経済的な理由で学用品や給食代などが払えない世帯への支援として、神戸市では子どもの4人に1人(区によっては2人に1人)が就学援助を受けながら学んでいる。基準額が引き下げられれば就学援助の基準も下がり、対象から外れる子どもたちが出てくることになり、子どもたちの「教育を受ける権利」が奪われてしまう。この他にも、住民税非課税世帯への課税、保育料・医療費・障害福祉サービス等の負担増、国民年金保険料等の各種保険料における減額や免除の除外等々、二次的な被害が広がることになる。
このたびの基準額の引き下げは、受給者でない人にとっては、〝対岸の火事〟だと思いがちだが、「最低生活ライン」の大幅な引き下げに連動していることを私たちは知らなければならない。
生活保護世帯の「福祉パス」対象はずし
一方、なぜこの時期にと思うが、神戸市ではいま生活保護世帯を「福祉乗車制度」の対象から除外しようとしている。この制度は、神戸市独自の制度で、生活保護をはじめ、障がい者・母子・原爆被爆者世帯等々を対象に福祉パスを交付している。ところが、「福祉乗車制度のあり方検討会」において、わずか3回の審議で「生活保護費に交通費が含まれている」「別途移送費の支給もある」という〝重複〟を理由に、いとも簡単に生活保護世帯のみが除外されてしまった。このままだと、受給世帯にとって、基準額の引き下げと交通費の出費増のダブルパンチとなり、生存権が危ぶまれる。
生活保護制度は自立のための〝権利〟
ところで、路上販売されている雑誌『ビッグイシュー日本版』をご存じだろうか。定価300円のうちの160円が販売者の収入となる、ホームレス自立応援事業の一環だ。この販売を生きがいにしているAさん夫妻は、精一杯働き、不足分を生活保護費の受給で補てんする日々を送っている。しかし、Aさん夫妻は、ともに高齢で体調が思わしくなく、今後、全面的に受給しなければならなくなる日が必ずやってくる。生活保護制度は、懸命に生きている人たちを応援するものであり、自立のための〝権利〟であることを受給者も、私たちも、忘れてはならない。
小林るみ子(神戸市会議員)
- 命の重みと日本社会の矛盾
-
プロライフという立場はその名のとおり、命を肯定することだ。キリスト教圏の欧米、とくにアメリカでは共和党が提唱し、かなり政治化した問題になっている。プロライフとは端的にいうと、人工妊娠中絶に反対する運動である。胎児として宿ってしまった命を絶ってしまうことはいわば殺人であり、胎児の命は守られなければならない、という立場をとっている。その命はたとえレイプの結果宿ってしまったとしても守らなければいけない。
一方、仏教徒の多い日本なのだが、仏教では殺生が禁じられるわりには中絶に反対する大きな運動はみられない。むしろ、後先のあまりわかっていない中高生が妊娠してしまった時、当事者もまわりの大人も最初に頭にうかぶのは「中絶」という言葉ではないだろうか。人間だけでなく、動物の殺生までも禁じている仏教の国の人間がなぜ簡単に中絶という選択にいたるのか?胎児を殺してしまうことにはそれほど罪悪感はないのだろうか?
保守党である自民党は、中絶は好ましくないという立場をとっている。最近の総務会長の野田聖子さんの発言によると、中絶をする人の多くは経済的理由である。だからそういう人たちが中絶という選択をしなくていいように経済援助をするなり、産んでもらってから養子縁組をしやすくすれば中絶は減り、しかも少子化対策につながる。
これが論理の飛躍であることは明瞭だ。少し論理的に考えてみよう。中絶の数を減らすためにはまず望まれない妊娠の数を減らすことが第一でなければならない。そのための適切な政策とは避妊の普及と性教育の充実だろう。避妊さえすれば妊娠する確率も下がり、無駄な命を殺生しなくてもすむ。
しかし、保守党は中絶も回避したいが「避妊」も避けたいらしい。なぜか?保守的な考えでは、人間が子どもをつくる目的以外で性交を行ってほしくない、というより、実際行っていることを認めたくないからだ。低用量経口避妊薬、いわゆるピルは避妊率からいくとかなり高く、欧米ではかなり普及しているが、日本では解禁になって年も浅いし、まだまだ普及もしていないという現実がある。どうやらピルが普及すると国民の性行為が自由になり、保守党は困るらしい。結果、中絶は簡単に行う、つまり殺人にはいとわないが、避妊もきっちりできない、という矛盾を生み出す。実際、日本の人口中絶率は世界4位ときわめて高い。
残念ながら中絶を選択した時に身体的に傷つくのは女性だけである。女性は自分自身の体を守りつつ、もう少し目を開いてどの政党が本当に自分のことを気遣っているのか投票前には少し勉強してほしい。
(高永明)
- 定例学習会を居心地のいい居場所へ
-
ユニオンとして月1回の学習会を始めて、まもなく2年となる。相談・交渉に対応できるスタッフの充実と、若手の活動家づくりが急務となっており開始したものである。最初の1年は『知らないと損する労働組合活用法』を、現在は2冊目として『社会のしくみと労働者』をテキストとして学習会を行っている。これまでもユニオンとして学習会を行ってきたが、これほど継続しているのは初めてである。
2冊目の学習会を始める際に、20代・30代の組合員に呼びかけ、学習会名も「フレッシュセミナー」と変更した。毎回、若手5、6人とオジサン数人のメンバーで行ってきたが、最近は新たな参加者が次々と増え2桁の出席者で行うようになっている。それは、若手が若手に声をかけ、参加を呼びかけているからである。
この学習会の中心メンバーがAさんである。彼女が携帯メールで出席の点検を行い、学習会の後の懇親会の会場も準備してくれる。学習の後の懇親会を若者は「ご褒美会」と呼んでいるが、お酒が入るとまた盛り上がる。そのためか、学習会はいつも金曜日である。同年代の者が集まり、意見交換し、交流することが新鮮なようで、「フレッシュセミナー」の魅力となっているようだ。
学習会はテキストに沿いながら、それぞれの職場の労働条件がどうなっているのかを話し合うようにしている。他の職場の労働実態や労働条件を知ることは刺激的なようで、「当たり前」が当たり前でないことに気付くきっかけとなっているようだ。
このAさんは、あかし地域ユニオン設立時の組合員であり、当時10代で非常勤として働き、ユニオンの学習会にも毎回参加していたメンバーである。学習の成果は十数年後に花咲くこともあるのだと思う次第である。若手の組合員にとって、この学習会と「ご褒美会」が居心地のいい居場所となるよう、これからも一緒に寄り添っていきたい。
西山和宏(あかし地域ユニオン委員長)
|