明石駅前南地区市街地再開発事業をめぐり、その賛否を問う住民投票条例の制定を求めて、市民らが立ち上げた「市民みんなで決める住民投票を実現する会」(略称=駅前再開発・住民投票の会)が酷暑の中、8月25日から1か月間、地方自治法に基づく住民投票の直接請求署名の取り組みを明石市内で始めた。これまでに、同事業の見直しを求める請願が否決、市民団体からの同事業に関わる20項目にわたる「公開質問書」にも納得できる回答がなかったなどの経過がある。
「大事なことは住民投票で」と自治基本条例で規定
明石市は2010年4月、明石市の「憲法」でもある自治基本条例を施行した。その14条に住民投票についての条文を設け、「将来にわたって明石市に重大な影響を及ぼすと考えられる事項について、住民が市長に対して住民投票の実施を請求したときは、市長は住民投票を実施しなければならない」と定めている。いわゆる「常設型」の住民投票条例だ。
しかし、現在、住民投票の手続きを定める住民投票条例がつくられていないため、私たちは、駅前再開発の見直しについて、地方自治法に基づく「条例制定の直接請求」手続きを行なった。有権者の50分の1(明石市では約4700人)以上の署名を添えて条例の制定を請求すれば、市長は20日以内に議会を招集して提案しなければならない。しかし、再開発推進の立場の議員が多数を占めているため、今回の署名運動では法定の約10倍の3万〜5万人程度の署名を目標にしている。
226億円(事業費の85%)もの税金投入で市財政が危機に!
2005年8月にダイエー明石店が閉店・撤退し、明石駅前の再整備が課題となり、駅前再開発を核事業に盛り込んだ中心市街地活性化基本計画(国の補助金が多い)が、2010年11月、国の認定を受けた。
当初の計画は、6階建の4〜6階部分を市役所が買い取り、窓口部門など市役所機能の3分の1を移し、さらに、高さ100m、34階建て200戸余りの超高層マンションを建設するというものであった 昨年4月の市長選挙で、駅前再開発の見直しを掲げて当選した泉市長は、7月にパブリックコメント形式の市民アンケートを実施し、わずか2カ月で見直し案を作成した。その中身は、計画規模は変えずに、市役所の窓口棟は1フロアーだけ、5階に市立図書館を移設、子育てや医療保健施設を1フロアーに充てるというものだ。図書館等への国の補助金の増加などにより、明石市の負担金は127億円から98億円に減少するが、しかし、再開発事業費266億円のうち85%の226億円が、国や兵庫県の補助金や市の買い取り費用で占める税金丸抱えの「民間事業」である。
たこフェリーの廃航で中心市街地活性化基本計画の見直しを!
明石市は、60ヘクタールの中心市街地活性化基本計画の核事業に、明石駅前南地区市街地再開発事業と明石港再整備(たこフェリーの再開と砂利揚場移転)を据えている。ところが、たこフェリーは、今年5月29日の臨時株主総会で、「会社の解散」を決議した。14年度からの本州四国連絡道路の通行料の一般高速道路並み引き下げにより、再開断念を決断したのである。また、泉市長は「砂利揚場の廃止を」と言っているが、兵庫県や近隣市町へは働きかけていない。明石の南玄関である明石港の再整備のとん挫は、町のにぎわいづくりへの悪影響が大きく、中心市街地活性化事業の抜本的見直しが迫られている。
アスピア明石は30億円の累積赤字。長期不況で再開発
明石で初めての再開発事業(事業費380億円)の「アスピア明石」は、11年前にオープンし、30億円の累積赤字である。保留床が売却できず、三セク会社を作って買い取り、賃貸商業施設に転換し経営してきた。しかし、バブル経済の崩壊後、内需や個人消費の低迷で、業は行き詰り、今年度から借入金の返済も始まって厳しい経営に陥っている。その上、最大の権利者から9億円で床買い取り請求の裁判が起こされている。しかも、昨年度中に結成されるはずであった再開発組合は、10月に設立され認可されるという予定である。しかし、高い床代や共益費のために保留床が売れない可能性が高く、98億円もの市税を投入し、多額の借金をかかえ、市財政は危機的な状況になってしまう。
そのため、駅前再開発事業の抜本的見直しについて、住民投票で市民の意思を問うべきなのである。
永井俊作(明石市会議員)