「新社会兵庫」 11月8日号
-
- 先月の国連総会だったか、オバマ米大統領の演説。その中に、韓国や李明博大統領に対する言及が数回に及ぶのに対し、日本と野田首相に関しては一言も出てこなかったという新聞記事を読み、これを書いた記者や日本のマスコミはとてもじゃないがまともなジャーナリズムとはいえないと思った▼記事の内容は、FTAを、EUとはすでに発効、目下国内世論を二分しながらアメリカとも来年からの発効をめざしてまい進中の韓国に比べ、TPPでもたもたしている日本政府と首相への尻たたきなのだが、言い方が何ともいやらしい。一言でいうと〝嫉妬〟。どっちがアメリカに気に入られているかというような水準なのだ▼マスコミの尻たたきに応えているのかどうかは知らないが、最近、TPPのこと、沖縄のこと、民主党政府の米政府への従属的態度は度を過ぎている。「国益」などはないと思っているので、これが「売国」だというような非難をするつもりはないが、米政府への追随の陰で切り捨てられていく沖縄の人びとや、TPPで新たな困難を背負い込むことになる農家や庶民の生活に想像力を働かすことができない民主党政権は、ますますかつての保守政権と瓜二つになっていく。
- 逆ブレ著しい野田政権/切望される大衆的な運動
-
10月26日に行われたソウル市長選挙は、野党統一候補の朴元淳(パク・ウォンスン)氏が政権与党ハンナラ党候補を破り当選した。この選挙、韓国で新自由主義に反対し非正規職撤廃などの運動を主導してきた民主労総も「朴元淳の勝利が労働者の究極の勝利ではないかもしれないが、ハンナラ党の勝利が労働者に絶望だとすれば朴元淳の勝利は明らかな希望」と支持を決め、朴候補も「真に先進国になるためには労働する人々が幸せでなければならない。私が非正規職解消を一番重要な政策のひとつにした理由もそれだ」と応え、ともに選挙戦を闘って勝利した。労働者の要求も極めて明快であり、候補者は要求の核心を外さずに応えて選挙を闘う。
ひるがえって日本の政権交代である。民主党政権が誕生して早2年余が経過した。内閣首班はすでに鳩山、菅から3人目、野田佳彦である。鳩山、菅の内閣が政権を交代させた人々の期待に応えられたかというとまったく逆、期待は大きく裏切られたというほかないが、現在の野田内閣はあたかも日本で再び政権交代があったのではないかと錯覚させる。
10月20日、第179臨時国会が召集され、改憲勢力にとっては07年設置以来の懸案であった憲法審査会が衆参両院で委員の選任が行われた。翌21日にはさっそく初会合で委員長も決まり、憲法改悪を発議できる憲法審査会が本格的に始動した。改憲に前のめりだった安倍内閣時に発足したこの審査会が設置されてなお凍結状態だったのは、設置に反対した社民党などとともに、その背後に存在するやはり広範な国民世論にも一定の配慮をせざるを得ない民主党が、委員選任にうんと言わなかったからだ。しかし、昨年の参院選以降の国会運営、なかんずく震災後の補正予算成立などと引き換えにあっさり審査会は発足した。憲法はあまり注目を浴びてはいなかったが、改悪をめぐる動きの中にあっては大いなる状況の変化だといわなければならない。
昨年10月、当時の菅首相が唐突にTPPに言及した。反発もあり、議論はしばらく封じられてきたが、野田内閣になって米政府からの強い要求、11月APECを前に俄然議論が沸騰してきた。推進派の政府閣僚、党主要役員のテンションは上がるのだが、そもそも民主党が政権に就けたのも、先行した政権も推進した新自由主義的グローバリゼーションのもとで国内の所得・資産格差が急速に拡大し、あらゆる年齢層にわたって生活が立ち行かなくなった事実と不満を背景にしていた。その事態をさらに進めようというのがTPPだと認識しているが、民主党が掲げたマニフェストとは矛盾だらけ、いったい政権の交代は何だったのかと多くの人々に思わせているのではないだろうか。
前首相を褒めるつもりはまったくないが、政府も「3・11フクシマ」でひとまず「脱原発」に舵を切ったと思われていたのが、これもうやむやにされそうなのが野田内閣だ。「脱原発依存」などというあいまいな表現で点検中の原発の再稼働、原発輸出の推進。10月末には、ベトナム南部で予定している原発2基の建設について政府間で合意すると伝えられた。なし崩し、元の木阿弥。
沖縄・普天間基地をめぐっては、これが日本の政府かというくらい対米追随、逆にいうと主権者の意思を忖度しないという民主主義の蹂躙が甚だしい。パネッタ米国防長官の来日を前に閣僚は相次いで沖縄を訪問し、結果の見えている要請を県知事や名護市長に伝える。そして環境アセスは、年内提出を米政府に表明した。何が何でも辺野古に米軍基地はつくるという姿勢、さらに前原政調会長などが突出している武器輸出3原則の緩和も含めて、あれもこれも政権交代の約束事(マニフェスト)とは外れてしまった。
冒頭、ソウル市長選に関して朴元淳候補(市長)と民主労総のことに触れた。民主労総の支持がこの選挙のすべてではないが、韓国にはいろんな困難はあっても非正規職撤廃を求める労働者の運動、韓米FTAに反対する農民・労働者・市民のたたかいがある。BSEに反対する子どもたちを含むキャンドルデモもあった。これらはすべて反李明博(イ・ミョンバク)・反ハンナラ党の広い大衆的な運動であった。
野田政権のブレは、日本にこうした大衆的な運動がない、とくに労働者の運動がいまだ育っていないことを反映しているのではないだろうか。
門永秀次(9プラス25改憲阻止市民の会)
- 断つ、捨てる、離れる
-
しかし、大変だった。実家の整理が、である。独り暮らしだった母が逝ってしまったので、人手に渡すことになったからだ。実家は岡山、私は神戸、兄弟も東京方面なので、作業は短期決戦だった。
孫たちを連れて帰省することはあったが、私も兄弟も住んだことのない家なのに、夫婦二人きりにしては物が多かった。結構広い敷地には収納スペースもたくさんあって、40年間溜め込んだ物であふれていた。
遺品のいくつかは私たちにとっても、思い出深いものだった。でも、感傷にふけっている時間はなく、父母の愛用品の数々を右から左へと始末するしかなかった。まだ十分使える物もたくさんあった。駆けつけた兄嫁は、どれも持って帰りたいと嘆いた。お互いに引き取れる物はできるだけ引き取ったが、持ち帰れるものには限りがあった。
それならばと、使えそうな物はサンルームに並べて、世話になった近所の人たちに適宜持って帰ってもらうことにした。
布団は、まあその量たるや半端ではなかった。それというのも、季節を問わず入れ替わり立ち替わりやって来る私たちのために、それぞれ専用のが用意してあったからだ。幸い、近くに住む友人が引き取ってくれることになった。
まだまだ整理は終わらない。
大きな物では、旅の土産とおぼしき様々な人形が所狭しと陳列してあったケース、父が楽しんだカラオケセット、ずいぶん以前から出番がなくなっていた古いベッド。子どもの頃から見慣れた古いタンスにはほとんど物は入っていなかった。細々した物では、父が手慰みに作っていた状差しの数々やその材料、母のものらしい財布やバッグはいったいいくつあっただろう。部屋の至る所にかけてあった装飾品の類も外しきれないくらいだった。
なんとかリサイクルできないかと、業者も呼んだ。しかし、10年以上経った電化製品も、まだ役に立ちそうな衣類も家具も、ほぼゴミ同然で、処分料だけが高くついた。
結果、残ったものは、何往復もゴミ置き場へ運んだ。不慣れなゴミの分別は近所の人の世話になった。
岡山通いも6回目になり、これでお終いと実家は後にしたが、我が家には、始末できなかったアルバムやビデオテープの類が、まだ手つかずで残っている。
私は今、残った人たちに決して迷惑をかけないように「断捨離」を固く心に誓っている。
(長田・KN)
- 東亜外業に県労委が不当労働行為認定
-
あかし地域ユニオン東亜外業分会の解雇問題をめぐって、兵庫県労働委員会は9月29日、東亜外業が希望退職を募る際に、労働組合との団体交渉に応じなかったことについて、労働組合法第7条2号に該当する不当労働行為であると判断し、救済の命令を行った。
現在、東亜外業から指名解雇された23名の組合員の解雇撤回を求める争議を行っているが、発端は今年1月の希望退職の募集である。
今年の1月20日、東播工場(全従業員85名)の社員が集められ、工場長から「3月末で工場を休止する」「65名の希望退職を募る」との提案が行われた。年末に行われた工場長の訓示は、「来年も厳しい状況が続くだろうが、全従業員が一丸となり乗り越えていこう」との内容だっただけに、「寝耳に水」の合理化提案であった。
今年の1月段階で、東播工場におけるユニオンの組合員数は50名を超えていた。工場の全従業員のうち、75%もの人員削減を目的とした合理化を実施するにあたり、会社はユニオンに対して何の相談もなく、ましてや団体交渉をも行わず、一方的に実施したのであった。
労働委員会の命令は、「団体交渉に応じなかった行為は不当労働行為であると兵庫県労働委員会に認定されました。今後、このような行為を繰り返さないことを誓約します」との書面を、会社がユニオンに手交しなければならないとする内容であった。
この命令直後に、裁判所で工場長と遭ったのだが、カバンから封筒を取り出し、いきなり謝罪文を渡そうとするのである。後日、本社への抗議行動の際、組合員と多くの支援者に見守られながら、誓約書を受け取った。書面を読み上げるように求めたが、会社は最後まで固辞し、「手交」だけであった。誓約書の重みを全く感じていないようだ。
労働委員会への救済申立を行ったのは2月14日。結審が7月7日で命令が9月末。この7カ月の間に、28名への解雇が強行された。労働委員会の役割について色々と考えさせられるが、解雇無効を争う訴訟においてこの命令が大きな弾みとなることは間違いない。
西山和宏(あかし地域ユニオン委員長)
|