「新社会兵庫」 2月22日号
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- 大相撲の春場所が中止になり大騒ぎしている。個人的には春場所が見られなくてもどうということはないのだが、相撲協会がとった「場所の中止」というやり方に少し引っかかるものを感じている。もちろん八百長事件の当事者が厳正に「処罰」され、協会幹部へのそれなりのけん責は当然だ。ときどき高校や大学の運動部が部員の不祥事を理由に公式戦への出場辞退というようなことがあるが、あれもおかしい▼今回は文科省からの圧力も想像に難くないところだが、その行為に直接にせよ間接にせよ責任を負わなければならないものへの対応と、そのことに関知せず責任の取りようがないものへの処遇とは明確に区別されて、ことの理非を明らかにしなければならないと思う▼もう一つ思うことは、いわば「連帯責任」を負わされるようなかたちで不利益を被る当事者たちは黙っていてはいけないのではないかということだ。かつて日本では戦争をめぐって、権力の不当行為によって不利益を被ったものたちがその責任を追及できなかったのだが、これは国民の間の民主主義の成熟の度合いを示すバロメータではなかったか。正当なことで不利益を被って、そのまま黙っていてはいけないのだ。
- 新高齢者医療制度案は改悪案
高齢者医療は無料にすべきだ
- 現行の後期高齢者医療制度を廃止し、2013年4月から新しい高齢者医療制度をスタートさせるため、09年11月に厚生労働大臣の諮問機関として「高齢者医療改革会議」が設置され、検討が進められてきた。10年8月20日に同会議の「中間とりまとめ」がなされ、10月25日には「医療費等の将来見通しや財政影響試算」などを厚労省が示した。同会議としては年内に新制度案を取りまとめ、厚労省は今年1月からの通常国会に関連法案の上程をめざした。その内容を検討してみる。
後期高齢者医療制度とは
現行の後期高齢者医療制度とは、小泉政権による02年7月に続く2度目の医療制度大改悪として、06年6月に強行成立させた一連の医療制度改革関連法のひとつである「高齢者医療確保法」によって創設された、高齢者だけの健康保険である。
08年4月から、日本国内に住むすべての75歳以上の高齢者と一定程度以上の障がいを持つ65歳以上の高齢者を、一般の健康保険から強制的に切り離して、その人たちだけの健康保険制度が作られた。
そして、すべての高齢者一人ひとりに保険料負担を求め、従前は負担のなかった被扶養者からも徴収することとされ、それを年金から天引きすることとなった。また、その保険料負担は、高齢者の医療費の増大に比例して、増嵩を続ける仕組みが制度化されていた。
さらに、まったくもって許せない制度として、診療報酬体系は一般とは別立てのものとされ、後期高齢者診療料、後期高齢者終末期相談支援料などが新設され、高齢者への差別医療・医療制限が企図されていた。
大筋了承された最終報告案
昨年12月20日、「高齢者医療改革会議」は、12月8日に示されていた新高齢者医療制度についての最終報告案を、全国知事会からは国保の都道府県移管反対や財源問題が不明確などの疑問・不満が出されたが、大筋で了承した。そして、「高齢者のための新たな医療制度等について(最終とりまとめ)」として、厚生労働大臣に提出した。
新制度での新しいものは改悪と負担増
最終報告は、@後期高齢者医療制度を廃止し、75歳以上(約1400万人)の8割は国保に、残る2割の扶養家族や勤務者は被用者保険に移行、A国保に戻る75歳以上の運営を市町村から都道府県に移管、B18年度からは国保の運営をすべて都道府県に委ねる。また、C現役世代から高齢者への支援金に、報酬が高いほど負担も増える「総報酬割り」を全面的に導入する、D70〜74歳の医療費の窓口負担割合を現行の1割から2割にアップ、E75歳以上の低所得者に対する保険料の軽減措置(最大9割)を縮小するという、現役世代、高齢者への負担増も盛り込んだ。
最終報告は厚労省の筋書き通り
国保に戻る75歳以上の高齢者について、一般被保険者とは別立てにし、それを都道府県単位で運営するということは、看板の付け替えにすぎないということになりかねない。また、そのことを梃子に、国保すべてを18年には都道府県単位に一元化する方向も明確に打ち出されている。
後期高齢者医療制度を廃止し、高齢者のための新しい制度を作るという口実で、これを絶好の機会として、厚労省の念願であった国保の都道府県への一元化や、現役世代・高齢者への負担増を持ち込んできたといえる。
こうしたことに、全国知事会、健保連なども反発を強めており、野党の反対はもちろんのこと、与党内部からも法案作成・上程についての危惧まで出されている。
そしたなか、政府は通常国会の開会前から早々と、「実施時期をさらに1年先送りする」との方針を決めたと報道されている。
高齢者医療は無料にという方針を
後期高齢者医療制度廃止というだけではなく、新しい高齢者医療制度の方向は、「高齢者医療は無料に」という方向で運動を強めなければならない。
高齢者のみならず、医療費が無料という国々は、イギリス、カナダ、ニュージーランドや北欧のスエーデン、ノルウエー、デンマークなど、またキューバやブルネイ(無税)など、けっして少なくはない。
日本においても、1970年代までは健保本人10割給付で、老人医療は無料であったことを思い出していただきたい。制度廃止というだけでは不十分であり、少なくとも「高齢者医療は無料に」という方針で、これからの運動を強化してゆくべきだと考える。
原 義弘(社会保障制度研究会)
- 「韓国併合100年」を学ぶ
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昨年は韓国併合100年に因んで様々なイベントや報道があった。小学校6年生の社会科教科書では半ページ、日清・日露戦争の後、不平等条約改定の動きの中に書かれている。これだけの記述では、日本が「発展する」歴史は、「帝国主義」「植民地主義」の歴史であり、その過去を今もひきずっていることは、教えにくい。
今の勤務校では、1928年頃の「神戸電鉄」工事と朝鮮労働者を柱に何時間か日韓の関係を考え、広島への修学旅行に行ってきた。今年の6年生は、韓国併合に時間をとり、併合前と併合後の写真を比べて日本の植民地政策のひどさを学習し、立ち上がった朝鮮人や支援しようとした日本人、その後の日中・太平洋戦争の歴史を学習してきた。
私は5年生の子どもたちと尹東柱(ユンドンジュ)の「序詩」という詩から、「韓国併合って何」という学習をした。尹東柱は1945年2月、29歳で福岡刑務所で獄死させられ、死後、詩集「空と風と星と詩」が発表された。その詩は韓国でも愛されている。彼は日本の大学に入っても朝鮮語で詩を書き続けた。何よりも家族や民族への優しい思いが伝わってくる。尹東柱は、民族と国の問題を自分の問題として考え、解決する力を持たないことを恥ずかしいと思う。この純粋な心を持った青年がなぜ日本で捕らえられ獄死したのか、子どもたちは素直に不思議に思ったようだ。
また、在日韓国人の方にチヂミ作りを教わり、いま韓国・朝鮮人が日本でどんな思いで暮らしているか、少し話していただいた。韓国の文化と日本の文化の違いが紹介され、自分の子どもたちにも言葉や韓国の文化を伝えたい、植民地としてひどい事があったが、今も差別されるのはおかしい、しっかり歴史も勉強してください、と宿題を言われた。
神戸市の公立小中学校では、韓国・朝鮮人で本名で、という児童生徒が、96年15・5%から09年27%と増えている。しかし、生徒数は2082名から678名と減った。やはり「日本社会では帰化せざるを得ない」「日本国籍がないと仕事もない」という声も多く聞く。ベトナム人も本名で入学という例が96年91・7%から09年44・8%に減っている。民主党の「高校授業料無償化」も、「朝鮮学校への適用凍結」のままだ。公務員採用の国籍条項もまだ残っている。韓国や朝鮮、中国に関する報道の偏りもひどい。日本の多文化共生が、未だに明治以来の「脱亜入欧」から抜けられないのでは悲しい。日本社会の責任は大きい。
(K)
「序詩」 尹東柱 愛沢革 訳
いのち尽きる日まで天を仰ぎ
一点の恥じることもなきを、
木の葉をふるわす風にもわたしは心いためた。
星をうたう心で
すべての死にゆくものを愛おしまねば
そしてわたしに与えられた道を歩みゆかねば。
今夜も星が風に身をさらす。
- 派遣先も団交応諾義務を
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武庫川ユニオンは、派遣先会社である川崎重工業と日本精工の団体交渉拒否は不当労働行為であると、それぞれ兵庫県労働委員会と滋賀県労働委員会に救済申立を行い、闘いを進めてきた。
川崎重工業は偽装請負状態で労働者の供給を受けてきていた。07年から一旦派遣契約に切り換え、09年6月から請負契約に換えていた。大量解雇が行われたのは09年の年末。川崎重工業から契約を打ち切られた派遣(請負)会社は労働者を直ちに解雇した。解雇された労働者約60人中、13人のブラジル人・ペルー人労働者が武庫川ユニオンに加入、川崎重工業に団体交渉を求めてきた。
日本精工のケースは、日本精工と「ユーイー」という会社が請負契約し、さらに「ユーイー」と「プロテック」という会社が請負契約し、プロテックに雇用されていたブラジル人労働者が解雇された事件であった。滋賀労働局は日本精工とユーイーの関係は実質派遣であるとして是正指導をしていた。いわゆる二重派遣であった。
私たちの主張はこうだ。そもそも派遣先は実質的に労働者の使用者である。また、今回は川崎重工業も日本精工も請負会社との関係は実質的に派遣であり、派遣法上の派遣制限を超えており、派遣先は雇用契約の申込み義務が発生している。少なくとも雇用契約の申込み義務がある以上、派遣先は派遣労働者の雇用契約に関して団体交渉に応じる義務があるということである。会社側は雇用関係にないので団体交渉に応じる義務はないと主張している。
兵庫県労委の川崎重工業不当労働行為事件は今年1月24日に結審し、滋賀県労委の日本精工不当労働行為事件も2月1日に結審した。滋賀県労委は4月14日に、兵庫県労委は5月に命令を出すことが決められた。
現在、労働者派遣法の改正法案が国会に提案されている。法改正を求める運動を強化していくとともに派遣労働者が派遣先会社に闘いを挑んでいる意義は大きい。ぜひ勝利命令を勝ち取りたい。
小西純一郎(武庫川ユニオン書記長)
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