ひょうごミュージアム

ひょうご描き歩き
『室津の賀茂神社 (たつの市御津町)』

2020/03/10
 カキの養殖が盛んな播磨地域。シーズンを迎え、日曜になればどこかで「カキまつり」が開かれ賑わっている。
 室津も、国道から港に下りるとカキ小屋が並び、カキの焼けた旨い香りが漂ってくる。室津は風待ちができる天然の良港として奈良時代から「摂播五泊」の海駅として栄えた。江戸時代の朝鮮通信使の12回の来日のうち11回の瀬戸内海航行は往復路でここに寄港している。また、参勤交代の西国大名もほとんどが船でここに到着し、ここから陸路江戸へ向かったという。
 当時の豪商、嶋屋宅が資料館「室津海駅館」となって当時の面影を伝えている。 港の狭い通りを抜けて岬の先端に出ると、平安時代に京都の上賀茂神社の直系御厨となった賀茂神社がある。本殿を含めて8棟の建造物が国の重要文化財に指定されており、別名を室明神社という。参道に群生しているソテツは野生のものでは日本列島の北限として県指定文化財にもなっている。江戸参府時にシーボルトが訪れ、参籠所から播磨灘の展望を絶賛するなど景勝地としても有名。 岬の東海岸沿いには梅林が広がっているが、梅と言えばここから海岸沿いに東に進んだ綾部山梅林の壮大さは格別。全山がほのかなピンク色に塗りつぶされてはなやぐ。隣接する世界の梅公園にも東アジア各国の梅350品種が咲き香る。 
(嶋谷)
2020年3月10日号