改憲の動きをウオッチング

(2023年3月8日号)

2023/03/08
■憲法審めぐる立憲野党と改憲4党の攻防
 2月16日の今国会で初めて開かれた衆院憲法審の幹事懇談会、立憲の中川正春氏(野党筆頭幹事)は改めてCM規制などの議論を提案。維新の会などは昨年秋の臨時国会で論点整理を行った緊急事態条項などの議論再開を要求し対立。テーマについては引き続き協議することになったが、今国会初となる憲法審を3月2日に開催することで合意した。
  これまで憲法審開催の協議は与野党の合意で進められてきたが、改憲4党は昨年の通常国会では「予算委員会中は開催しない」という慣例があったにもかかわらず強引に開催。予算委員会中の2月8日、維新の会などが憲法審開催の協議を一方的に進めようとしたため、立憲、共産などは抗議し、幹事会懇談会を欠席した。
 これに対し、維新の藤田幹事長は記者会見で「立憲が憲法審査会の審議を拒んだ場合、両党の国会での共闘関係を解消する」(時事)とけん制し、馬場代表も党会合で「(立憲の対応について)また、さぼり癖が出てきている。議論できないとなると、立憲との協調関係に暗雲が垂れてくる」(同)と脅しをかけている。  
国民投票法(改憲手続法)は、議員立法でありながら参院で18項目にわたる付帯決議が採択され、欠陥法といわれてきた(2007年)。その後一部改定されているが、最低投票率設定の検討や公務員の運動規制、有料意見広告は野放しなど、根本的な欠陥を残したままになっている。
  国民投票法は、投票の14日前から投票・棄権を呼びかけるテレビ・ラジオなどの有料広告を禁じているが、それ以外は野放しのままである。
  テレビのCMが世論に与える影響は大きい。「資金力の豊富な改憲勢力の大キャンペーンによって世論がゆがめられ、民意が正確に反映されない恐れがある」ため、立憲はテレビCMやインターネット広告を規制する国民投票法改正案をまとめ、中川氏はCM規制を「改憲の発議の前提」(毎日)だと主張している。
与党と維新は昨年4月、CM、ネット規制に触れていない改定案を衆院に提出、自民党の新藤義孝氏(与党筆頭幹事)は「与党や維新が昨年改正案を提出している法案を優先的に処理するのは憲政の常道だ」(同)と語り、立憲をけん制。緊急事態条項を最優先とする維新の会は「立憲は憲法改正したくないから、国民投票法の議論で改憲論議にブレーキをかけようとしているのではないか」と指摘し、立憲の改正案との「修正協議は考えられない」(同)と明言した。
  改憲4党との攻防の柱となる緊急事態条項創設について、立憲民主党は2月22日の党憲法調査会の「国会のありかた」分科会がまとめた中間報告を了承した。中間報告は「緊急事態条項について『政府への権限集中や特別の人権制限を強調する緊急事態条項という大仰な概念を憲法に持ち込むことは不要だ』と明記。『憲法下でも緊急時の備えは想定されている』として、参院の緊急集会などを挙げている」(時事)(中)