新社会兵庫ナウ

おんなの目(2021年11月17日号)

2021/11/17
夫婦って……
 
 夫がSNSの反ワクチンに染まってしまいました。私がワクチンを打つと言うと「離婚しよう」と言い出しました。本気のようでした。ワクチンによる重篤な副反応の写真を見て、私がそうなる姿を見たくないそうです。
 もともとアナログ人間の夫がSNSに出会ったのは長男から記事や動画が送られてきたからです。好意で送ってくれた講演会の動画を見た夫は、いろいろ合点が行ったようです。すっかり鵜吞みにしてしまいました。同時に次男と娘からは一般的なワクチン推進やコロナの恐ろしさを伝える情報が来ました。一度、次男が電話で4時間も夫に付き合ってくれたことがあります。その後、夫も「おかげでお母さんがワクチン打っても死なない気がしてきた」と言い、「○○(次男)はよく勉強しているなあ」と感心していました。そんなこんなで私は無事ワクチン接種を終えることができました。しかし、夫は今もワクチンを打っていません。
 夫とは半分ボランティアのような気持ちで嫁いだ私ですが、特に不満もなく、子育ても楽しんできました。はた目には仲の良い方だったと思います。でも近年は、想像力に乏しく頑なな面のある夫に不平不満が増え、ときめきなんてほぼ0(ゼロ)です。「離婚」というワードが突然現れた時、「それもいいかな」と思う自分がいました。
 結婚して30数年ずっと誰かのお世話をしてきました。夫、子ども、お年寄り、里子。一人暮らしの気楽さは輝いて見えました。でも離婚すれば、ある程度の社会的信用を無くしたり、不自由・不便な時も多々ありそうです。夫を癌で亡くした友人のことを思うと、「どんなボロでも裸よりは暖かい」と思います。
 夫というのは着慣れた服のようだなと思います。お洒落着ではない、全然ときめかない、でも肌になじんだ着心地は柔らかくて安心感があるような。「本当はこのデザイン、気に入らないのよねー」とか、「実はこの色、私に似合わないのよねー」と思いつつも捨てられないのです。
 私から言うことはあっても、夫から言い出すことは決してないだろうと思っていた「離婚」。それを夫が言い出した2021年。夫が言い出すことは決してないと思っていた私のおごりだったのでしょうか。そんな想いを抱えつつも日常は過ぎて行き、綱渡りの綱の上でぐらつきながらも落ちることなく何年か先には向こう岸にたどり着くと思います……。多分。        (あけびの会Y・T)