新社会兵庫ナウ

地域ユニオンあちこちあれこれ(2020年9月8日号)

2020/09/15
人を軽んじる派遣労働の醜さ 
 6月に派遣労働者から相談を受けた。派遣労働の醜さがわかった事案だった。
Aさんは、昨年3月からアパレル関係の会社の販売員として派遣され、今年4月末で解雇された。派遣元では時給と労働時間を聞かされ、事前面談での心得を渡されたが、労働条件明示書は渡されなかった。今年3月、Aさんは派遣先から4月末で雇い止めになることを聞かされた。早速、派遣元に連絡し、5月以降の派遣先を探してもらうよう要請。4月に入り、緊急事態宣言で店舗が休業、派遣先との契約は終了した。その後、派遣元から仕事の紹介がなく、1か月放置され、5月末に1か月さかのぼって解雇された。Aさんは派遣元のいい加減さを認めることができず、ユニオンに加入して交渉し、和解した。
 派遣元の担当者は、Aさんに対し「派遣労働者をたくさん担当しているから、だれがどんな仕事ができるのかわからない」と言った。この発言は、派遣のルールを理解していないことを表している。
以前は、労働者派遣は、派遣元が派遣労働者のスキルをチェックし、派遣労働者に合う仕事を紹介していた。派遣労働者が派遣先での仕事が合わなかったり、スキル不足のことを「ミスマッチ」と言い、派遣元が適切な仕事を紹介できなかったということになった。しかし今は、「ミスマッチ」という言葉さえ“死語”になりつつある。それほど派遣労働者は軽んじられている。
 2017年の派遣法改正で、30日未満の派遣は禁止になったが、今でも常態化している。派遣元は、登録している労働者に派遣先の労働条件等をメールなどで送り、労働者は働けそうな仕事にエントリーする。が、実際には派遣元の担当者は派遣労働者のスキルをチェックすることもなく、労働者を派遣する。派遣元は労働者を「派遣」しているのではない。ただの「中間搾取業者」になっている。
 「労働は商品ではない」―この言葉の意味は重い。だから、今の労働者派遣は廃止すべきだと思う。人を大切にできない働き方を未来に残してはいけないだろう。
 木村文貴子(神戸ワーカーズユニオン書記長)