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【コロナ対策】医療・介護現場への優先的な支援を
現場からの発信①② (2021年1月19日 合併号)

2021/01/24
「医療崩壊」の危機が迫る医療機関(写真は記事とは関係ありません)

① 医療現場からの発信
患者数だけでは見えてこない厳しい医療の実態
 
 前回の報告の掲載は昨年の5月26日号。2021年年頭、この7カ月余で医療現場の状況はどう変わったのかを報告したい。
 まず、比べようもなく重症者も軽症者も増加した。重症患者に対応するユニットはほぼ100人の看護師が必要で、一般病棟や救急病床、循環器や脳卒中急性期に対応のベッドを減らすことで看護師をねん出する。私の勤務する脳卒中の急性期病棟でも、夜勤体制が3人から2人となった。2人夜勤になると、休憩中は1人になる。私は経験年数は長いため1年目の看護師との勤務もあり、残される1年目の看護師の不安を思うと重たい気持ちになる。しかし私にも休憩時間が必要で、PHSを持っての休憩になる。閉鎖した一般病棟に入院していた患者は他病棟に分散して治療を継続するわけだが、他病棟の検査や手術は増え、負担が増大する。他府県で、コロナ対応部署に配属された助産師が「この状態が続けば助産師としての経験が積めなくなってしまう」と退職すると聞いた。コロナ対応は全体の負担や医療スタッフのやりがいにも影響し、離職の原因にもなっている。
 重症病棟スタッフの、感染予防のマスクやガウンで患者のケアをする負担は非常にしんどい。暑い中で2時間も業務を続けると、今自分が感染予防の手順を正しく行えているかすら分からなくなってしまうという。私は直接体験してないが、一般病棟でさえガウンで働くだけでも暑くて苦しい。新型コロナ患者対応は系列の他病院でも対応しており、精神科専門の病院などでは、患者の精神的安定を図ることが難しいと報告されている。
 今、病院が最も恐れているのは職員の感染だ。私もPCR検査を受けなければいけない状況を経験した。結果は陰性だったが、陽性でも不思議ではないと思った。今後の患者数の動向は予測できないが、患者数だけでは見えてこない実態があることを知ってほしい。現場を知る労働者として発信する必要性も感じている。
(「感染症指定医療機関」指定の公立病院 看護師A)
 
② 介護現場からの発信
今の職場環境のままでは介護職離れに拍車が

 
 コロナ禍という未曾有の事態に直面し、低賃金・重労働・人員不足という従来からの問題に加え、介護現場ではかつてない状況のもとで、様々な対応を求められ、過去にない問題が起きている。メディアではコロナ対応病院の様子が連日のように報道されているが、介護現場では、クラスター発生施設の罹患者数が報じられる程度。世間ではこのコロナ禍、介護施設でどのような対応を強いられ、どのような問題が起きているのか実に不透明なのだ。その実情の一端を報告したい。
 先ずは、マスクやプラスチックグローブ等の物品不足の問題。C型肝炎などリスクを伴う利用者への対応に、介護職はどれだけ恐怖を感じることか。また、リモートでの面会のため、利用者によっては家族に会えないために不穏になったり、体調を崩したり、認知症が進んだりと、ライフラインが途切れたほどの大きな影響がある。
 職員に関しては、他職種と同様なプライベートでの行動の自粛が求められているが、もし罹患したら、ほとんどの利用者が基礎疾患を持っているため、自分が持ち込んだら利用者の命に関わるとの思いから、みんな細心の注意を払って生活している。
また、ギリギリの人員配置の中、インフルエンザよりはるかに長い出勤停止になるため、複数の職員が罹患すると業務がまわらなくなるのは明らかであり、援助なしでは生きていけない利用者にとって、職員の集団感染イコールライフラインの枯渇を意味する。
 病院と違い、感染対応がソフト・ハード面共に手薄な福祉施設では、一度クラスターが発生すると蔓延を免れない状況への恐怖は、ノロウイルスやインフルエンザと比べものにならない。
 また、ワクチンが出来たことで新たな問題も発生した。厚労省が承認したら、職場でも、半ば強制的に接種ということにならないかということが懸念されており、現段階での治験の結果を考慮すると、半ば実験台のように自らを危険にさらしたくないとの声が多い。
まだまだ続くコロナ禍、今のような職場環境のままでは介護職離れに拍車がかかる予感がする。   (谷 絵美)