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寄稿(2021年1月19日 合併号)
人類史的危機に対応できない菅政権を退陣に追い込もう

2021/01/24

(写真)後手後手のコロナ対策で国民の不安を大きくするばかりか説明責任も果たそうとしない菅首相

大阪労働学校・アソシエ講師 鈴田 渉(憲法・政治学)

 今、日本を含む世界は、新年を寿ぐことも吹き飛ばす未曽有の危機に晒されている。昨年来の新型コロナウイルス感染症は、南極大陸まで感染地域が拡大して全大陸に及び、感染者・感染死亡者の数は波はあるものの確実に増加の一途をたどっている(感染者数8514万人・死者184万人 米国ジョンズ・ホプキンス大学 1月4日集計)。特に米国は世界最悪2千万人超の感染者、死者は35万人弱。世界は新型コロナウイルスと丸1年向き合い、闘ってきたが、昨年末には感染率が従来のものより高いといわれる変異株のウイルスが登場し、英米その他で開発されたワクチンの効果もどれほどのものか憂慮される。当然ながら、治療薬についてはまだまだ先というのが実情だろう。
 それでは日本に目を転じてみると、感染者数25万人弱、死者4千人弱(1月3日現在)、全国で毎日3〜4千人の感染者、とりわけ東京を中心とする首都圏の激増、また各地で過去最多という数が報道され、第1波、第2波とは比較にならない状況が現在の第3波といえよう。病床とそれに伴う医療従事者のひっ迫が日に日に増し、昨年には旭川市や大阪府は自衛隊に対し看護官の派遣を要請し支援を受け当座の医療崩壊を凌いだ。しかし、これからの感染拡大が止まらない状況、また第4波以降が来ることも想定したならば、遅かれ早かれ医療崩壊が各地で生じ、新型コロナ感染症患者はもちろん、救急救命、あるいは通常の疾患の手術や検査などにも大きな影響を及ぼすことになるのではないか。その意味では、私たちは、生命の危機に瀕しているといってもよい。
 以上、新型コロナウイルス感染症をめぐる状況を概観したが、この間、政府は一体何をやってきたのかと指摘しなければならない。昨年春の第1波では、PCR検査や保健所の体制が整っていないと検査を抑制し、結局、新型インフルエンザ特措法に基づく緊急事態宣言を発出して一応抑えこんだが、事業者に対する補償措置や雇用を守る施策の不徹底、生活困窮に対する手厚い策もなかった。持続化給付金や特別定額給付金といった1回だけで焼け石に水的給付のみだ。
 その後も飲食店などの時間短縮営業等の要請でも雀の涙の協力金で、廃業、倒産に追い込まれる状況が現在も続いている(飲食店などは仕入れをはじめとする様々な業者との取引で紐づいているが、これらの業者には協力金も全くなく、ひたすら耐え忍んでいる)。
 人々にはアベノマスク2枚をマスクが流通したころに全戸配布。あまりに人々を小馬鹿にした愚策で、政府が人々の命や暮らしの危機に真剣に向き合っていないことの証左といえよう。
 あわせていえば、政府による医療・福祉関係の事業者やそこで働く人たちに対する冷たさである。コロナ禍で医療機関は莫大な減収を被り、医療機関は経営も危ぶまれ医師・看護師・職員の給与カットやボーナス削減をも余儀なくされている。コロナと闘う最前線の人たち(命をまもる担い手としての高い使命感や倫理観に根ざした人たち)も、どうしてここまでして私たちが頑張らなければならないのかと精神的・肉体的に疲れ、離職する人まで出てきている。このような状況を招いた政府・与党の責任は重大である。
 中世のペスト(死者1億人ともいわれている)、100年前の20世紀初頭のスペイン風邪(数千万人規模の死者)に匹敵するのが、今回の感染症である。政治が試行錯誤することもやむを得ないこともある。しかし、それを割り引いたとしても安倍・菅政権の無為無策ぶりは目を覆いたくなる。政治は結果が全てだ。ちょうど10年前、東日本大震災が発災し、安倍、菅首相をはじめとして自公両党は当時の政権与党・民主党を厳しく批判した。まさにブーメランとしてはね返ってきたといえる。
 こんな自公政権のために私たちの命、暮らしが破壊されてはたまったものではない。コロナという人類史的未曽有の危機に対して、政府は私たちに何をしてしてきのか、同時進行の各国との違いも参考にしながら、本年必ず行われる衆院総選挙で審判を下したい。そのためにも市民と野党共闘を強固なものにし、勝ち切る体制を作らなければならない。このことを強く訴えたい。   (1月4日記)