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【2020平和のつどい】
「あぶない教科書」を押し戻す 育鵬社教科書の採択率が激減 I女性会議ひょうごが「平和のつどい」

2020/12/29
元中学校社会科教員の相可文代さんが2020年教科書採択の状況などを報告=11月28日、神戸市中央区

 I(アイ)女性会議ひょうご(共同代表・加納花枝、川辺比呂子)はこの時期恒例の「平和のつどい」を11月28日、神戸市教育会館で開いた。今年のテーマは「あぶない教科書 押し戻してきた 2020教科書採択報告」で、講師は「子どもたちに渡すな! あぶない教科書 大阪の会」で長年活動を続けてきた相可(おうか)文代さん。元中学校社会科教師の相可さんの話は具体的で分かりやすく2時間半があっという間に過ぎた。
 
 新型コロナウイルス感染症が広がっている中での開催で、初めてリモート参加の形式もとり入れた。リモートには九州や長野、横浜からの参加もあった。
 今年、育鵬社の教科書採択率は6%から1%へと激減した。草の根保守が後退したとはいえ、相可さんたちの粘り強い活動がここまで押し戻してきたのだ。その活動の幅は広い。育鵬社の教科書の徹底批判、地域ごとの学習会、教育委員会へ要望書や市民アンケートで育鵬社教科書の問題点を提起、教科書展示会で意見記入、採択会議の傍聴、情報公開要求・住民監査請求、マスコミ取材、議会との連携など、取り組みは多岐にわたる。
 育鵬社の教科書は安倍元首相や日本会議の目指す国づくりのために作られたものである。「歴史」と「道徳」の教科書を両輪に、人づくりはまず教育からと、「美しい国、日本を取り戻す」ための内容になっている。皇国史観に基づく「歴史」では侵略戦争・植民地支配を正当化。「公民」では「基本的人権の制限」や「国民の義務」を強調し、「改憲」に導く内容だ。そして、「長時間労働の勧め」「結婚した女性は家庭を重視する」「自分で判断して行動するのはよくない」「個人より集団を優先」などの価値観をすりこむ「道徳」の教科書。
 これらの教科書で学んだ子どもたちは大人になった時、自分の権利を主張できるだろうか。理不尽な目にあった時、「それはおかしい」と声を上げられるだろうか。うまくいかないのは自分のせいだと社会に目を向けずに諦めてしまうのではないだろうか。それは政府にとって何と都合のいいことか。若者が保守化していることもうなずける。
 教科書問題は学校関係者や子どもだけの問題ではない。今の社会で生きている私たちひとりひとりの問題なのだ。
(佐野みさ子)